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住信SBIはなぜ強い? 上場で株価2.5倍 業界トップクラスの貸出とBaaS事業に強み

Finasee / 2024年6月13日 11時0分

住信SBIはなぜ強い? 上場で株価2.5倍 業界トップクラスの貸出とBaaS事業に強み

Finasee(フィナシー)

住信SBIネット銀行は2023年3月、国内のネット銀行として初めて上場しました。金利が上昇したこともあり、上場後の株価は堅調です。2024年5月末の株価は2991円と、公募価格(1200円)から2.5倍に値上がりしました。

株価は好決算も反映していると考えられます。2024年3月期は大幅な増収増益を果たし、今期(2025年3月期)も最終増益を計画しています。

住信SBIネット銀行が好調な理由はなんでしょうか。事業内容と直近の業績から探ってみましょう。また住信SBIネット銀行が実施した短期プライムレート(短プラ)引き上げの影響も紹介します。

貸し出しは業界首位級…でも銀行業だけじゃない 異なる3つの収益源

住信SBIネット銀行はSBIホールディングスと三井住友信託銀行が共同で設立したインターネット専業の銀行です。両者はいずれも住信SBIネット銀行の株式34.19%ずつ保有しています(2024年3月)。

住信SBIネット銀行の業容は業界でトップクラスです。口座数や預金は楽天銀行に次ぐ水準で、貸出金では競合を圧倒しています。住信SBIネット銀行の貸出金の大半は個人向けであり、特に住宅ローンで高いシェアを持つとみられます。

【主なネット銀行の口座数と預金および貸出金(2024年)】

           口座数   預金      貸出金      住信SBIネット銀行 726万 9兆4631億円 7兆9728億円  楽天銀行 1524万 10兆4424億円 4兆0696億円  ソニー銀行 193万 4兆0797億円 3兆4626億円  auじぶん銀行 600万 3兆8828億円 3兆5419億円  PayPay銀行 79万 1兆7801億円 7294億円

※預金と貸出金は貸借対照表ベース
※住信SBIネット銀行と楽天銀行は連結

出所:各社の決算資料

銀行本来の事業で優位に立つ住信SBIネット銀行ですが、実は伝統的な銀行業以外の収益源も持っています。2020年に開始したBaaS(バンク・アズ・ア・サービス)事業と、2023年に開始したテミクス事業です。

住信SBIネット銀行のBaaS事業は、銀行機能を提携先へ提供するものです。預金や貸し出しといった機能を提供し、その対価として手数料を受け取ります。提携先には日本航空やヤマダ電機、高島屋などがあります。提携企業の数は16社、BaaS口座は158万に上ります(2024年3月)。

テミクス事業は主にカーボンクレジット事業と林業DX事業で構成されます。2023年10月に子会社を設立し報告セグメントとして区分されました。テミクス事業ではJ-クレジット(※)の売買や媒介、またJ-クレジット発行および林業DXに関するコンサルティング担います。

※J-クレジット:国が認証した温室効果ガスの削減量や吸収量のこと。J-クレジットは企業や自治体といった需要者へ売却できる(参考:J-クレジット制度ホームページ J-クレジット制度について)

BaaS事業は収益化が進んでいます。業務粗利益(※)および経常利益の約1割を担っています。一方、テミクス事業は立ち上げ期です。投資が先行していることから、セグメントでは赤字となっています。

※業務粗利益:銀行本来の業務の収支を表す経営指標。資金運用収支、役務取引等収支、その他業務収支の合計(特定取引勘定設置銀行は特定取引収益も含む)。

【セグメント業績(2024年3月期)】

         業務粗利益   経常利益    デジタルバンク 655.2億円 312.8億円  BaaS 88.6億円 36.4億円  テミクス 1.7億円 -0.9億円 (参考)連結 726.8億円 348.5億円

出所:住信SBIネット銀行 決算短信

住宅ローン快走で好決算 関連手数料が利益に貢献

住信SBIネット銀行は2024年5月に決算を発表しました。実績を振り返りきましょう。

前期(2024年3月期)の業績は以下の通りです。経常収益から純利益まで大幅に増加しています。

【住信SBIネット銀行の業績(2024年3月期)】
・経常収益:1186億円(+20.9%)
・経常利益:348億円(+18.6%)
・純利益:248億円(+24.6%)
※()は前期比
※参考:連結業務粗利益727億円(前期比+15.6%)

出所:住信SBIネット銀行 決算短信

業績をけん引したのは住宅ローンです。年間実行額は1兆7386億円に上りました。前期(1兆4852億円)から17%増加した計算です。直近3期では2倍に増えました。

出所:住信SBIネット銀行 決算説明資料より著者作成

ローンが増進したことで関連する手数料が伸びました。Baasアカウント手数料を含む役務取引等利益およびその他業務利益は、前期比で77億円増加しています。営業費用や法人税をこなし、2割以上の最終増益を確保しました。増益は資金利益(前期比+26億円)や特別利益(同+11億円)も貢献しています。

自己資本比率は7.7%となりました。上場時の9%からは低下傾向にあります。リスク資産の増加によるものですが、これは貸し出しの増加が一因だと考えられます。国内基準行である住信SBIネット銀行は、原則4%以上の自己資本比率が求められます(参考:日本銀行 銀行の自己資本に関する国際統一基準(バーゼル合意に基づく基準)と国内基準の違いを教えてください。)

なお、この場合の自己資本比率は、会計上の一般的な自己資本比率ではありません。銀行が取っているリスクの量で算出される異なる指標です(参考:財務省 バーゼル規制入門)

出所:住信SBIネット銀行 ファクトブックより著者作成

通期の配当金は1株あたり16.5円となりました。前期末の予想からは1円増加したことになります。ただし配当総額は24.8億円と、配当性向は10%にとどまります。当面は成長を優先し、還元は配当性向10%を目安に実施する方針です。

短プラ引き上げで業績55億円押し上げ ただしフル寄与は来期から

今期(2025年3月期)の見通しも確認しておきましょう。

住信SBIネット銀行は今期も増益を見込みます。純利益280億円と、前期比12.7%の増益となる計画です。なお、純利益以外の段階利益の予想は開示されていません。1株あたり配当金は通期で18.5円を予想しています。

また、今期は住宅ローン金利の上昇も始まります。

住信SBIネット銀行は2024年5月、短期プライムレート(短プラ)を0.1%引き上げました。マイナス金利が解除されたことを受けての措置です。

変動型の住宅ローン金利は短プラを基準に決められます。住信SBIネット銀行の住宅ローンの変動金利割合は93%と、大半が変動型の貸し出しです。住宅ローン金利の上昇は業績の改善に貢献するとみられます。

住信SBIネット銀行は、短プラの0.1%の引き上げで資金利益が通期で55億円改善すると試算します。

【短プラ0.1%引き上げによる資金利益の試算(通期)】
・資金収益:+92億円
・調達費用:-37億円
・資金利益:+55億円

出所:住信SBIネット銀行 決算説明資料

ただし、今期においては業績の押し上げは限定的です。住宅ローン金利の反映は2025年1月から始まるためです。本格的な寄与は来期(2026年3月期)からと考えられます(参考:住信SBIネット銀行 短期プライムレートに関するよくある質問)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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