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夫を亡くしたシンママを救った投資信託、「生活に困らない程度の分配金」を受け取るために大切なこと

Finasee / 2024年6月17日 17時0分

夫を亡くしたシンママを救った投資信託、「生活に困らない程度の分配金」を受け取るために大切なこと

Finasee(フィナシー)

上田沙織(43歳)は、スマホから目をあげて深く息をついた。その動画を見るのは既に10回を超えていた。沙織は経験上、投資をするには、情報を得て、それを整理し、自分なりに納得した投資を実行することが大事だと思っていた。息子の優人(14歳)を女手一つで育ててきたものの、学費等の心配がいらない状態になったのは、投資信託を購入する決断をしたことのタマモノだった。沙織は、これから始める新NISAは、自分の将来の安心を確かなものにするためだと考えていた。それだけに、何に投資するのかということについて慎重に検討していた。ニュースサイトやSNSなど、さまざまな媒体から情報を求めて、今後の投資方針を決めようとしていた。

夫の事故死で生活が一変、いちるの望みは…

優人がまだ1歳になったばかりの時、沙織は夫の忠弘(享年32歳)を交通事故で亡くした。親兄弟は地方に暮らしていたため、忠弘の事故死を聞いた時には、文字通り沙織は目の前が真っ暗になって、その場に崩れ落ちてしまった。不幸中の幸いは、優人の妊娠を知った時に、思い切ってマンションを購入していたため、団体信用保険の適用を受けて住宅ローンの支払いが不要になったことだった。このため、当面の生活に困るということはなかったが、ようやく歩き始めたばかりの子供を抱えて、これからどうやって暮らしていこうかとぼうぜんとしてしまった。

そんな時、当時の同僚から「『財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型』を使えば、投資金額の10%くらいの分配金が毎月出るから、まとまった資金を投資すれば生活がグンと楽になる」という話を聞いた。当時、沙織は冷静な判断ができなくなっていたのだろう。銀行で「財産3分法ファンド」の話を聞いて、質問したのは、「毎月20万円の分配金が受け取れるようにするには、いくら購入すればよいのですか?」ということだけだった。保険金等で3000万円を超える資金が手元に残っていたので、沙織は、その手元資金から2500万円で「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型」を購入した。 

その結果、毎月20万円を超える資金が分配金として定期的に手に入るようになった。それによって、優人を保育園に預けてパートタイマーとして働きに出て得られる収入と合わせれば生活に困るようなことはないだろうという見通しが立った。沙織にとって、投資信託は初めての経験だったが、毎月決まった金額を受け取るようになって、どういった仕組みで分配金が支払われるのか、詳しい仕組みを知りたくなった。

投資した後でも情報を集める

「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型」は、株式と不動産に25%ずつ、そして、債券に50%を投資して株式や不動産から得られる配当や値上がり益、そして、債券から得られる利息収入などを原資として、毎月の分配金を支払っている。沙織が購入した時の投資信託の基準価格は6150円程度で、分配金は1万口あたり毎月70円だった。毎月70円の分配金が継続するのであれば(年間840円)、単純計算で分配金利回りは年13.65%になった。沙織は、その利回りの高さにびっくりした。ファンドの仕組みや運用の内容について説明をしてくれた銀行の定期預金の金利は年0.06%だった。銀行に預けていてもお金が増えない時代だったのに、年13%もの利回りがあるというのが信じられなかった。

 

それから、沙織は、「投資信託」や「財産3分法ファンド」などをキーワードにして、さまざまな情報を集めるようになった。そうすると、やはり、分配金利回りが高過ぎるという批判めいた情報も少なくなかった。その批判は、「タコ足分配※」の懸念にあった。実際に、1万円でスタートした基準価額が6000円台になっているというのは、元本を取り崩す「タコ足分配」を疑われてもしかたがないと思った。

その後、分配金は1万口当たり50円に引き下げられ、基準価額も5000円の大台を割るということも経験したが、沙織はあらかじめさまざまな懸念や予測についての情報を集めていた関係で、その変化に右往左往することはなかった。むしろ、株式や不動産(REIT)への投資、あるいは、外国債券への投資が、魅力的なリターンにつながることを学んでいた。そこへ「アベノミクス」による意図的な低金利・量的金融緩和政策が始まった(2012年12月~)。国内の株価が上昇し始めたため、分配金を受け取って使ってしまうのではなく、再投資して資産を増やすことを考えた方が良いと考えるようになった。

分配金を再投資すると決意した時、投資信託の基準価額は4800円程度になっていて、資産評価額は2000万円程度に減額していた。これまでに分配金として600万円ほどを受け取っていたため、収支としてはトントンといえた。そして、分配金を再投資するようになると、資産価値はグングンと増えていった。

もちろん、毎月の分配金を受け取らないで生活していくことは厳しいところがあった。ただ、それまでも分配金の一部は貯蓄していたし、優人も保育園の年中さんになり、仕事も落ち着いてきていたので日々の生活に困るというようなことにはならなかった。そして、結果的にこの決断が優人の学費などを心配しなくても済むような十分な資産につながっていった。

※タコが自分の足を食べるのに似て、元本を取り崩してまで過大な分配金を払い出す行為

投資の成功体験から始める新NISA

2024年を迎えた今、投資信託の評価額は4000万円を超えていた。既に600万円ほどの分配金を受け取っていることを考え合わせれば、素晴らしい投資結果といえた。この状況になれたのは、情報を集め、先々の見通しを持って運用を継続してきたためだと思った。これで息子の学費について心配する必要がなくなったため、沙織は自分自身の将来について考え始めるようになった。情報を集めて新NISAを使って自分のための資産を作っていこうと考えたのだ。ところが、いざ投資をスタートしてみると……。

●投資信託の分配金で生活をやりくりしてきたシングルマザーの沙織。新NISAで自分の人生ための資産形成を考えた時、ある違和感を感じた。それは……? 後編「全世界株式」一択に違和感を感じたシンママが息子の大学進学費用を投資信託で準備できた理由にて、詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

風間 浩/ライター/記者

かつて、兜倶楽部等の金融記者クラブに所属し、日本のバブルとバブルの崩壊、銀行窓販の開始(日本版金融ビッグバン)など金融市場と金融機関を取材してきた一介の記者。1980年代から現在に至るまで約40年にわたって金融市場の変化とともに国内金融機関や金融サービスの変化を取材し続けている。

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