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「まさに仲人」シニア社員を大活躍に導いた40代男性が、波乱万丈な仕事人生で感じた「最大のやりがい」

Finasee / 2024年6月17日 12時0分

「まさに仲人」シニア社員を大活躍に導いた40代男性が、波乱万丈な仕事人生で感じた「最大のやりがい」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

自動車メーカーで長年活躍してきたNさんは、地元九州の大手自動車メーカーに入社後、同じ会社で働き続けています。生産管理や原価管理を担当しながら、リーマンショックや災害支援なども経験し、波乱万丈の仕事人生を歩んできました。

25年目に転機が訪れ、本社の経営陣に自社の経営上の数字や課題を提案する役割を担いました。それがきっかけとなり、人事部門に異動。その後はシニア社員の活性化を改善するという一大プロジェクトを任されました。

Nさんは悩みながらも、斬新な兼業制度を考案。シニア社員が週2日程度外部の会社で働くことで、給与水準を保ちつつ専門性を発揮できる環境を作りました 。

●前編:【会社に突然「シニア社員のモチベーション革命」を託された40代男性。悩んだ末に導き出した「斬新な解決策」は…】

兼業先が求めていた「シンプルなこと」

ここでNさんは大切なことに気付きます。兼業先の方々が求めているものは、募集要項に書かれていることではなく、案外シンプルなところにあったのです。

例えば「生産性向上」と言っても、まずは物の配置の仕方から始める必要があるとか、トラブルは人材育成が上手くいっていないことが原因で起こっている、ということなど……。そこが分かると今度はどこに誰が適任か分かってきます。

最初、シニア社員は兼業制度をハードルが高いものと感じており、利用する人は少数でした。しかし、兼業先で求められていることが「自分にもできる」と分かると、申込者が一気に増えていきました。

「実は効果を1番実感しているのは、何を隠そう私なんです」と、Nさんは言います。兼業先の候補の企業に訪問して課題を聞くうちに、自分自身が過去にさまざまな仕事をする中で取り組んだ経験、課題を乗り越えて身につけたノウハウなどが活かせる場面が見えたのです。過去の仕事が無駄でなく、違った環境の会社では役立つことがあるのだと実感できました。

自ら兼業を実践したからこその気付きも

この制度を推進する中で、兼業先の候補の企業からは、「Nさんご自身が私どもの会社に来てもらえば助かるのですが」との言葉をかけてもらい、大変うれしかったそうです。実は兼業を推進するにはまずは自ら実践しなくてはと、Nさんも2社で兼業を実践中です。

そこで分かったことがあります。

まず中小企業では多くの課題を抱えているので、改善した後の喜びが大きいこと。本業で99点のものを100点にするより、兼業先の中小企業で10~30点を50点にする方が、やりがいがあります。うまくいくと褒められ、感謝もされます。本業ではあまり経験できないことでした。

「最初は大変かもしれませんが、それを乗り越えた後の喜びは大きいですね」とNさん。考えてみれば、若い頃はそのような体験をたくさんしてきたのです。同じことが体験できると思うとやりがいにもつながります。

「相手側が求めていることが分かっても、自分には解決できないことが分かると会社に持ち帰ります。そして専門部署の方に連絡し教えてもらう。それから相手に分かるようにまとめます。まさにこれが本当の『リスキリング』ですね」とNさんから笑みがこぼれました。

キャリアを振り返って思うこと

Nさんに今の仕事の満足度を聞いてみると、次のように答えてくれました。

「8割は大変満足しています。残りの2割は、基本は自分1人でやっているので、若い人と働くことで刺激を受け、学びたいとの気持ちです」

かつては順調に内部昇格をすることをイメージしていましたが、49歳で想像と違うキャリアを踏むことになり、落ち込むこともあったようです。しかし今はそのおかげで、社外のさまざまな方と出会う貴重な経験ができています。それに会社が直面している大きな課題に立ち向かい、現実的に解決の糸口を見つけ出しているという自負もあります。

また、以前在籍していた部署からは、「戻ってこないか」との声もかかります。しかしNさんは断っているそうです。後戻りはしたくないという気持ちと、やはり今の仕事が面白く大きなやりがいを感じているからです。今は自治体の若い人たちと会社の若手との学び合いの場を企画し動き出しているそうです。

Nさんのような人材は貴重だと思います。自社の社員が活躍できる外の会社を探し出す営業マンとしての役割。中小企業の社長や責任者から課題を掘り起こす役割。自社のシニア社員から強みを聞き出す役割。そして中小企業のニーズをシニア社員の強みとマッチングさせるための橋渡しの役割。

まさに昔風に言うと結婚の仲人。今風に言うとマッチングアプリのような役割と言えるかもしれません。

「兼業を進めると本業がおろそかになるのでは?」という疑問にこう答えてもらいました。「兼業を通じて自分の強みに気付き、さらに発揮しようという気持ちになります。なにより貢献することで前向きな気持ちになり、むしろ本業にも力を入れるようになるのです」

兼業の仕事に着任した時に副社長から「シニア社員をリスペクトしなさい」と言われた言葉が今では身に染みます。人は認められることでその力を発揮し、人のために働こうとする。その大切な役割をNさんは担っておられます。Nさんの今後のご活躍を楽しみにしています。

<Nさんの事例から学ぶこと>

①事をなすにはまずは自らが率先垂範して行動で示す
②相手にとって必要なことを引き出すために傾聴する
③分からないことは知っている人に聞き学ぶ

髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰

1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

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