インフレに強い資産。株式・金・不動産のなかで、まずは株式を検討するべき理由
Finasee / 2024年6月24日 17時0分
Finasee(フィナシー)
インフレによる物価高騰のなか、現金の資産価値は目減りします。預貯金以外で何かしらの資産運用をしないと損をする状態ですが、その投資先は吟味する必要があります。
インフレに強い投資先はどこでしょうか?
投資の最前線で30年以上のキャリアを持つ、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は高配当株への投資を提案しています。なぜ今、高配当株なのか、そして配当金だけでなく値上がり益も見込んだ両取りの運用方法を紹介します。(全3回の1回目)
※本稿は、広木隆著『利回り5%配当生活』(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
資産は「置き場所」で増減するデフレ経済の下では物価が下がるので、超低金利の預金にお金を置いたままでも、お金の価値は目減りしません。それは全く金利が付かない現金で持っていても同じです。デフレは物価との見合いで、相対的にお金の価値を高める作用があるので、資産運用のことを考えなくても大きな支障はないと言えます。
ところがインフレの下では話が大きく変わってきます。物価は上がっていきますから、保有している現金を、物価上昇率を上回るリターンを生み出す資産にしないと、現金のままではその価値が目減りしてしまいます。
これまで「資産運用なんて、ちょっとお金を持っている人がやるべきことだろう」、あるいは「資産運用をしてみたいけど、もう少しお金が貯まってからにしよう」などと思っていた人は、大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
インフレが定着する可能性が高まっているでも、そんな悠長なことを言っている時間は、もうありません。今すぐにでも重い腰を上げて、資産運用を始めるべきです。一番の理由は、インフレが定着する可能性が高まっているにもかかわらず、低金利が続きそうだからです。かつて物価が大きく上昇しているときは、それ相応に預貯金の利率は高めに設定されていました。
しかし、これからの時代は、金利が上昇しない中で物価が上がっていく可能性が高まっています。だからこそ、お金をどこに置いておくかが、とても重要になってくるのです。
タンス預金などもっての外ですし、銀行預金ではお金の価値の目減りを抑えることはできないでしょう。だからこそ、インフレに強いと言われている資産に注目する必要があります。
では、インフレに強い資産とは何でしょうか。
一般的には株式、不動産、金などのコモディティが、インフレに強い資産と言われています。とはいえ、これらのうち何を選んでも良い、というわけではありません。それぞれにリスクやリターンの質が異なりますし、少額資金で投資しやすいかどうかなど、さまざまな違いがあります。それらの点を見極めたうえで、自分のライフスタイルなどに合った資産を選ばなければなりません。
金(ゴールド)、不動産投資はリスクヘッジになる?では、インフレに強い資産は何かを考えてみましょう。
まず金(ゴールド)です。地金型金貨や金地金(延べ棒)などさまざまな形態の金があり、簡単に買うことができます。金がインフレに強いとされるのは、それ自体がモノだからです。インフレはモノの値段が上がることですから、モノである、金の値段も上昇しやすくなります。
加えて国内金価格は円建てですが、その値動きには為替変動が加味されるので、昨今のように円安がインフレの一要因であるときには、国内金価格も円安につれて値上がりします。これらの理由から、金はインフレリスクのヘッジに有効と考えられています。
ただ、金は利息を生みません。あくまでも金という「物質」なので、株式の配当や債券の利金のような「インカムゲイン」は全く発生しないのです。利益を得るためには、あくまでも価格変動によるしかありませんが、金価格が今後、値上がりするのか、それとも値下がりするのかは、誰にも分かりません。場合によっては、価格が半額になることもあります。正直、長期的な資産形成の対象としては、いささか不確実性が高すぎる感があります。
地方都市では地価が値下がりするリスクも不動産は、物価が上昇すると土地の値段が上がり、それゆえにインフレリスクをヘッジできるなどと言われてきましたが、正直、どの土地でもそれが当てはまるとは限りません。昨今のように、地方から大都市圏への人の移動が活発化しているなかでは、確かに大都市圏の一等地では地価上昇が実際に起っていますが、地方都市の小さい町になると、むしろ地価は値下がりする一方ということもあります。
最近はワンルームマンション投資なども流行っていますが、たとえワンルームマンションといえども、最低投資金額は1000万円超になるのが普通です。不動産という単一の資産クラスだけで、自分の保有資産ポートフォリオの大部分を占めてしまうのは、リスク管理の観点からも、あまり望ましい分散の仕方とは言えないでしょう。
もし不動産を自分のポートフォリオに組み入れたいのであれば、ワンルームマンション投資やアパート経営のような現物不動産に投資するのではなく、不動産投資信託(J‐REIT)に投資することをお勧めします。
株がインフレに強いわけ最後は株式です。株式もインフレに強い資産のひとつと言われています。株価には企業価値が反映されます。企業価値とは、さまざまな見方はあるものの、端的に言えば業績が向上し、利益が積み上がることです。
売上や利益は名目上の数字です。たとえば1個1000円の商品が1億個売れると、売上は1000億円になります。利益率が10%だとしたら、利益は100億円です。
ところが、物価が上昇して商品1個あたりの値段が1200円になったとします。すると、売れる個数が同じ1億個だとしたら、売上は1200億円になります。全く同じ商品が同じ個数売れたとしても、インフレでモノの値段が上昇すれば、それだけで売上が大きく伸びるのです。同時に利益も増えます。
株式がインフレに強いと言われる理由がこれです。企業価値が売上や利益を反映したものだとしたら、インフレは企業価値を上げる要因のひとつになります。そして、株価は企業価値を反映するため、インフレは株価を押し上げる要因のひとつになると考えられるのです。
また、株式には他の資産にはないメリットがあります。
まず少額資金で購入できることです。銘柄によって株価は千差万別ですから一概に言えませんが、最低取引株数は100株単位なので、仮に株価が1000円だとしたら、最低投資金額は10万円で済みます。そのうえ、最近は端株といって、1株単位での取引を実現している証券会社もあるので、仮に1株の株価が1万円くらいする値嵩株でも、1株単位で売買できれば、金額は1万円です。
手前みそで恐縮ですが、マネックス証券が扱っている「ワン株」は、その代表的なサービスのひとつ。1株単位で売買でき、特に30代以下の世代で高い人気があります。買付手数料が無料という点も、大きな魅力です。
確実性の高い配当金の魅力次にインカムゲインが得られる点も株の魅力のひとつといえるでしょう。株式投資というと、株価の値上がり益を狙うものと思っている人も多いでしょうが、配当というインカムゲインも得られます。
配当は、その会社が得た利益から法人税を支払って残った税引後利益のうち、一定割合を株主に還元するというものです。この税引後利益のうち何%を配当するかを示すのが「配当性向」です。仮に税引後利益が50億円で、配当性向が40 %であれば、20億円が配当に回されます。
そして、1株あたりの配当を株価で割って求められる数字が「配当利回り」になります。もし株価が1000円で、配当金額が50円だとしたら、この株式の配当利回りは5%になります。
株式投資で得られるリターンは、株価の値上がり益と、この配当の2つになるのですが、株価はさまざまな要素によって決まるので、値上がり益のほうは不確実性が高くなります。これに対して配当は、通常であれば急激に増えたり減ったりしないので、確実性の高いリターンになります。
金や不動産なども、確かにインフレリスクをヘッジすることは可能ですが、最も手軽に、誰もが利用できるのが株式投資。自分が持っている資産をインフレから守るためには、まず株式投資を軸にして考えることが大事なのです。
●第2回は【高配当時代の到来⁉ なぜこれまで日本では「株主軽視」が続き、最近変わりつつあるのか】で、増配する企業が増えている背景を解説します(6月26日に配信予定)。
利回り5%配当生活広木隆 著
出版社 かんき出版
定価 1,760円(税込)
広木 隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒。神戸大学大学院・経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。社会構想大学院大学教授。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経プラス9」などのレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数
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