人生を後悔しないために「資産ゼロで死ぬ」。幸せの最大化を目指す、新しい老後の出口戦略とは?
Finasee / 2024年6月27日 8時0分
Finasee(フィナシー)
日本でも話題の世界的なベストセラー書籍『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』。「資産ゼロで死ぬ」ために、お金をどう使い切ればいいのかに焦点を当てています。
いち早く本書に注目し、日本で広めてきたのがマネーコンサルタントの頼藤太希氏です。そして、頼藤氏はより日本に適した資産の取り崩し方を考案しています。お金の心配を減らしつつも、たくさんの思い出を作るのにはどうすればいいのでしょうか? 幸せな人生で終えるための投資術を紹介します。(全2回の1回目)
※本稿は、頼藤太希著『60歳からの新・投資術』(青春出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。
最後は資産を使い切って死にたい?老後のお金を貯めることは大切です。ただ、それよりももっと大切なことがあります。
それは、貯めたお金を上手に使うことです。お金は貯めることが目的ではなく、将来の自分が使うために貯めるものだと言うと、一見当たり前のことに思えるでしょう。しかし、この当たり前ができている人は、意外と少ないようです。
お金は、ないよりはあったほうがいいことは間違いありません。人生が終わりに近づいてきた時にカツカツの生活を送らざるをえない状況では、後悔しながら死んでいくことになるかもしれません。もしもの時に備えて、最低限のお金は貯めておく必要はあります。
しかし、お金を必要以上に貯めこむ必要はありません。「死んだ時が人生で一番お金持ちだった」という人もいますが、そんな人生は幸せとは言えないのではないでしょうか。
全世界でベストセラーになっている『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著)は、タイトルどおり「資産ゼロで死ぬ」をテーマにした本であり、資産形成期に築いた資産を上手に使い切っていくことの重要性を説いています。
「資産を残して亡くなったら、その資産を使うことで得られるはずだった経験を得られなかったことになる。人生で一番大切なのは、思い出を作ることだ」と同書は語ります。
仮にあなたが1000万円の資産を残して亡くなったとしたら、1000万円分の経験ができず、その分の思い出が作れなかったということです。この1000万円を仮に時給1500円で週40時間働いて稼ぐとすれば、ざっと3年4か月も働かなければなりません。
しかし、そうして働いて貯めた1000万円を使わずに死んでしまったら、タダ働きしたと同じことだとも言っています。
そう指摘されれば、資産を計画的に取り崩し、「資産ゼロで死ぬ」を実践したほうがよいと多くの人が思うのではないでしょうか。早いうちから自分のためにお金を使ってさまざまな経験をし、たくさんの思い出を残したほうが、豊かな人生を送れるでしょう。
よく言われることですが、あの世にお金は持ってはいけません。お金を貯めこんだまま最期を迎えるよりも、資産をできるだけ使い切って最期を迎えたほうが、人生の幸福感は高いのです。豊かな人生を送るためには、「資産ゼロで死ぬ」意識でお金を使っていくことが大事であると念頭に置きながら、この後を読んでいただければと思います。
でも、生きているうちに資産がゼロに近づくのは不安「資産ゼロで死ぬ」を実践しようと思っても、実際のところ資産を取り崩していって、最期にゼロにするのはなかなか難しいものがあります。なぜなら、寿命をいつ迎えるかは誰にもわからないからです。寿命を予測して、そこに向けてお金を取り崩していったら、「思ったより長生きしてしまった」ということもあるかもしれません。反対に、資産を取り崩し始めて早々に病に倒れ、そのまま亡くなってしまうこともあるかもしれません。
「資産ゼロで死ぬ」を実践するのに躊躇してしまう一番の要因は、資産が少しずつゼロに近づいていくのを見るのが不安であることです。
たとえば、70 歳時点で貯蓄が2000万円あるとして、月10万円、年120万円ずつ取り崩していくとします。貯蓄が潤沢なはじめのうちはまだいいでしょう。しかし、常に年120万円ずつ定額で貯蓄を取り崩すと、80歳を迎えるころには貯蓄の残りが800万円と、当初の半分以下になってしまいます。
それでも年120万円ずつ取り崩しを続けると、86歳8か月の時点で貯蓄が底をついてしまいます。実際には、貯蓄が底をつく前に取り崩しのペースを緩めるなど、何らかの対策を講じるかもしれませんが、「貯蓄がなくなってしまうかも」と不安に駆られるのも無理はありません。
寿命があらかじめわかっていれば、計画的に資産をゼロにすることができますが、そうでない以上、「資産ゼロで死ぬ」を達成するのはなかなか難しいのです。
「終わりよければすべてよし」という言葉があるとおり、人生の最後が幸せであれば「良い人生だった」と思える可能性が高いでしょう。「資産ゼロで死ぬ」を目指していたら、途中でお金が尽きて人生の最後は貧しく不幸せであれば、「悔いが残る人生だった」となるかもしれません。
そこで、将来の不確実性を考慮しつつ「ほぼDIE WITH ZERO」を目指すために、資産の取り崩し期(70歳前後)に入ったら、
・預貯金 300万~500万円
・キャッシュフローを生む資産 300万~500万円
を確保したうえで、残りの資産を取り崩すことを考えます。
預貯金の300万~500万円は、病気や介護に備えるお金として、取り崩さずに生涯保有を続けます。もしも病気や介護が必要になっても、このお金があれば必要な治療やサービスの利用に困ることはないでしょう。仮に医療費や介護費がかかることなく亡くなったとしても、残った300万~500万円は葬儀代や墓代、あるいは相続などに回せます。
キャッシュフローを生む資産は、基本的には一生涯保有を続けます。そうすることで、定期的に収入を得ることができます。まとまったお金がどうしても必要になった場合には、キャッシュフローを生む資産を売却して使うというオプションもあります。
これらのお金を確保したうえで、残りの資産を取り崩していきます。
資産寿命を延ばしつつ、100歳でゼロを目指す出口戦略資産が早々にゼロになる「資産寿命」を迎えてしまうのは困りものです。それを防ぐために、「運用しながら取り崩す」という観点を取り入れましょう。
前述したとおり、資産は、ただ取り崩すだけでは早々になくなってしまいます。
しかし、資産を運用しながら少しずつ取り崩すことで、資産寿命を延ばすことができますし、売るタイミングも分散できるので、資産価値が下がったタイミングで一度に売ってしまうことも防げます。
資産を取り崩しながら一定の利回りで運用した場合に、毎年いくら受け取れるかを計算する「資本回収係数」という数字があります(下記図表)。
なお、以降の計算は運用益に税金がかからない「新NISA」で行った場合とします。
表の縦の列には資産の取り崩し年数、横の行には運用利回りをとっています。自分の資産額に、この両者の交差するところの係数をかけると、毎年取り崩せる金額が計算できます。
たとえば、70歳時点でたまった資産2000万円のうち、300万円を預貯金、500万円をキャッシュフローを生む資産に替えたとします。そうして残った1200万円の資産を年利4%で運用しながら、30年かけて取り崩すとします。
この時、30年にわたって毎年受け取れる金額は、「1200万円×0・05783=69万3960円」となります。月額に直すと約5・8万円です。年利4%で運用できていれば、仮に70歳から毎月資産を5・8万円ずつ取り崩しても、おおよそ100歳まで資産がもつというわけです。
しかも、この例では100歳時点でも300万円の預貯金と500万円のキャッシュフロー資産を確保しています。もしもの時には預貯金が役立ちますし、500万円のキャッシュフロー資産からは毎月取り崩す5・8万円とは別に定期的な収入が得られます。仮に年4%得られたとすれば年20万円、毎月1・6万円ほどですから、毎月取り崩す5・8万円と合わせて月7・4万円です。年金に加えて、月7・4万円が100歳まで受け取れたら、老後の収入として心強いですよね。
●第2回は【貯蓄や投資の目標設定にも役立つ! 年齢別「死ぬまでにやりたいことリスト」づくりのすすめ】で、具体的な取り崩し戦略について解説します(6月28日に配信予定)。
『60歳からの新・投資術』頼藤太希 著
出版社 青春出版社
定価 1,100円(税込)
頼藤 太希/マネーコンサルタント
マネーコンサルタント(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職へ。Web メディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通してお金の情報を日々発信中。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍90冊、累計160万部超。日本年金学会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。
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