チームも自分も! 職場のウェルビーイングをかなえる「エンゲージメント」の高め方とは?
Finasee / 2024年7月11日 16時0分
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Finasee(フィナシー)
生産性を高める「従業員エンゲージメント」
従業員エンゲージメントは、①仕事へのエンゲージ(ワーク・エンゲージメント)と、②組織へのエンゲージ(組織コミットメント)の2つから成り立っています(図表①)。
図表① 従業員エンゲージメントの要素
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「ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対するポジティブで充実した心理状態のこと。活力(イキイキと働く)、熱意(仕事にやりがいや誇りを感じている)、没頭(仕事に熱心に取り組む)、この3つがそろっているとワーク・エンゲージメントが達成されている状態といえます」と髙宮氏(図表②)。
図表② ワーク・エンゲージメントの要素
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一見すると個人の資質にもよりそうですが、どうなのでしょうか。「ワーク・エンゲージメントを高める要素は、“仕事の資源”と“個人の資源”に大別されます(図表③)。個人の資源とは希望、自己効力感(自信)、レジリエンス(逆境を乗り超える力)、楽観性の4つからなる個人の資質のことですが、いずれもトレーニングなどで高めることができます」(髙宮氏)。
図表③ 仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)
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もう一方の仕事の資源は、良好な人間関係、上司・同僚からの支援、仕事の裁量といったいわゆる職場環境、組織風土にあたります。仕事の資源を高めるにはこれらの整備や改善が求められます。
従業員エンゲージメントを構成するもう一つの要素に組織コミットメントがありますが、こちらも高めることが可能です。「組織が自分のウェルビーイングに配慮してくれているか、自分のことをきちんと考えてくれているかという、組織からのサポートを知覚することで組織コミットメントが上がります」と髙宮氏。
図表④ 組織コミットメントの向上プロセス
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そのためには、上司の支援や手続き公正性といったプロセスが必要です(図表④)。手続き公正性とは、「例えばAさんの評価は40、Bさんは60という結果となった場合に、それぞれがなぜ40なのか、60なのかという理由が公正に判断されたというプロセスが明らかであることをいいます」(髙宮氏)。つまり評価に差があったとしても、その判断理由が明らかにされれば納得感があるということといえます。
上司の支援や手続き公正性が組織コミットメントを上げる半面、組織内政治はマイナスに働きます。例えば上司が有力な派閥の意向に沿うことを重視するあまり、部下の仕事を正当に評価しないといった組織内政治が働くと、部下は不信感を募らせてしまいます。
これらの課題は一度に解決できるものではありません。「取り組みやすいのは上司の支援の項目です。本連載第3回『職場も家庭も! 本音を言えない関係性を打ち破る「心理的安全性」とは?』 で解説した“心理的安全性”の構築と同様に、組織コミットメントの醸成においても上司がキーマンとなります」(髙宮氏)。
こうしたワーク・エンゲージメントや組織コミットメントを高めることによりどんなメリットがあるのでしょうか。「ポジティブな影響としては従業員の幸せの向上、離職率の低下、パフォーマンスの向上に寄与するといった調査結果が出ています」(髙宮氏)。
自己実現、キャリアアップを支援する注目の制度従業員エンゲージメントを高める施策として、社内公募制度や社内FA(フリーエージェント)といった従業員の自己実現やキャリアアップを支援する制度を導入する企業もあります。個人のやる気を引き出すと同時に社内の活性化を図ることが期待され、「こうした支援制度はエンゲージメントにプラスに働きます」と髙宮氏。
同様に注目されるのがピアボーナス制度です。従業員同士で感謝や称賛のメッセージを送り合う制度で、送った感謝をほかのメンバーにも可視化できるツールなどを使えば、同僚の良い取り組みを知ることが可能です。部署間や出社組・テレワーク組などの垣根を超えて感謝や称賛の輪が広がることは組織にとって大きなメリットといえます。「第一生命経済研究所で行ったピアボーナス制度の実証実験では、エンゲージメントの各指標が有意に上昇しました(図表⑤)」(髙宮氏)。
図表⑤ 社内エンゲージメント調査結果(ピアボーナス導入前2021年5月と導入後2021年12月の比較)
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ピアボーナス制度について社内からは、「細かい日常業務について、感謝が共有され、上司・同僚からもリアクションがあるので、モチベーションが上がる」「投稿を話題に今まで関わりが少なかった他部署の人とのコミュニケーションが取れる。コラボレーションの事例も出ている」 などの声が上がっているそうです。
ほかには、相対的なランク付けをしない「ノーレイティング評価」という制度も広がりつつあり、グローバルソフトウェア大手のアドビなどで導入されています。
従来の相対的な評価では、例えばチーム全体が非常に良い成果を出した際に、その高い成果の中でランク付けせざるをえず、全員に高評価をあげたくてもできないという課題があります。
一方で、「ノーレイティング=ランク付けをしない」でどう評価するのかというと、「上司と部下の間できめ細やかな1on1の対話を行い、個人の目標を設定し、フィードバックを行って成果を評価していきます。単なるノーレイティングではうまく機能しないためマネージャーの力量が非常に重要になってくる評価制度といえます」(髙宮氏)。
いずれも上司のリーダーシップが問われるため、リーダーシップ教育が重要となります。そこで注目され始めているのが「サーバント(支援型)リーダーシップ」というあらたなマネジメントスタイルです。
上司が部下を支援する新時代のリーダーシップ図表⑥ 支配型リーダーシップとサーバントリーダーシップとの比較
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サーバントリーダーシップは従来の支配型リーダーシップと比べて部下の裁量が多い点が特徴です。部下を管理するのではなく支援する、自主性を重んじる、恐怖政治で支配するのではなく信頼関係を築くことが大切にされます。説明や指示中心ではなく、部下の話を傾聴する、失敗を罰するのではなく、失敗からともに学ぶというサーバントリーダーシップは新時代のマネジメントスタイルとして期待されます。
「サーバントリーダーシップに関する調査を実際に行ったところ、上司の支援行動が部下のワーク・エンゲージメント、組織コミットメントに優位に影響を及ぼす結果を得ました」と効果的なリーダーシップであることを実感している髙宮氏。
一方で、従来の管理主義、部下の裁量権が過小なマネジメントは逆効果であることも明らかになりつつあります。
上司の支援行動とサーバントリーダーシップを組み合わせることで職場の従業員エンゲージメントはさらに高まります。一定の裁量権を付与しつつ、上司が部下を支援する、前向きな気づきを与えるコーチングを意識した新たなマネージャー像。新時代のマネジメントには柔軟な対応力とともに、信頼して伴走するというウェルビーイングな関係づくりが望まれます。
連載:今と未来のために知っておきたい「お金と幸せ」のウェルビーイングな関係
第1回 「4000万円貯めるのと同じ幸せ」を得るためにできるたった1つの大切なこと
第2回 実は上がっている?「日本の幸福度」―世界幸福度ランキングからひも解く「お金と幸せ」のシンプルな解決策
第3回 今と未来のために知っておきたい「お金と幸せ」のウェルビーイングな関係
Finasee編集部
「インベストメント・チェーンの高度化を促し、Financial Well-Beingの実現に貢献」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAやiDeCo、企業型DCといった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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