京都FG、6期ぶり最高益が視野に 利益膨らむ政策保有株は売却するか?
Finasee / 2024年6月24日 11時0分
Finasee(フィナシー)
京都には多くのエレクトロニクス企業があります。その大株主の常連となっているのが京都フィナンシャルグループです。中核子会社の京都銀行を通じ、京都にゆかりのある大企業の株式を多数所有しています。
【京都銀行が大株主となっている主な上場企業と所有割合(2023年3月末)】
・任天堂:4.19%
・村田製作所:2.5%
・ローム:2.65%
・オムロン:3.58%
・京セラ:4.02%
・ニデック:4.31%
・島津製作所:1.67%
・スクリーンHD:2.83%
・ニチコン:5.0%
・GSユアサ:1.92%
出所:各社の有価証券報告書
生成AIが話題を集めており、そのサービスを支えるハードウェアにも需要が見込まれます。多くのエレクトロニクス企業の株式を所有する京都FGにも注目が集まりそうです。
今回は京都FGを探ってみましょう。同社の概要と業績を紹介します。また批判されることも多い政策保有株の現状も押さえましょう。
京都の総合金融グループ 地元企業の3割がメインバンクに京都FGは京都銀行を中核とする金融グループです。2023年10月に京都銀行が持ち株会社化し発足しました。子会社には証券会社やクレジットカード会社、コンサルティング会社などを持ちます。また子会社の烏丸商事はモール型ECサイト『ことよりモール』を運営しています。
2024年6月には積水リースの株式を90%取得し、同社を子会社化しました。また持分法適用会社には投信会社のスカイオーシャン・アセットマネジメントを持ちます。
もっとも、収益の大半は京都銀行が占めます。2024年3月期は純利益316億円のうち94%(297億円)を京都銀行が単体で稼ぎました(出所:京都FG 決算短信)。
京都銀行は京都を地盤に持つ地方銀行です。帝国データバンクによると、京都府内の企業の3割超が京都銀行をメインバンクと認識しているようです(出所:帝国データバンク 京都府内企業のメインバンク実態調査(2023年))。また大阪府や滋賀県など周辺の地域へも展開しています。
京都銀行の規模は地銀トップクラスです。業務純益(※)および純利益は地銀7位、貸出金は地銀9位に位置します。特に有価証券の保有額が大きく、地銀では八十二銀行に次いで2位となっています(いずれも単体、2024年3月)。
※業務純益:銀行本来の業務の利益。一般に業務粗利益(銀行本来の業務にかかる収支)から経費および貸倒引当金を控除したもの。
【京都銀行の概要(単体、2024年3月)】
・業務純益:3兆6662億円(地銀7位)
・純利益:2兆9691億円(同7位)
・貸出金:6兆7263億円(同9位)
・有価証券:3兆3351億円(同2位)
・預金:8兆8490億円(同8位)
出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算
株価は順調に値上がりしています。2024年6月14日までの5年間で約2.5倍に上昇しました。銀行株は金利上昇を受け好調に推移しており、京都FGも同じように買われているようです。
出所:Yahoo!ファイナンスより著者作成業績好調、手数料収入がけん引 今期計画は6期ぶり最高益
京都FGの前期(2024年3月期)業績は以下の通りです。持ち株会社に移行する直前の決算と比べ大幅な増収増益となりました。中期経営計画(2023年3月期~2026年3月期)で目指した純利益300億円を前倒しで達成する好決算となっています。
【京都FGの業績(2024年3月期)】
・経常収益:1377億円(+10.7%)
・経常利益:436億円(+14.1%)
・純利益:316億円(+16.0%)
※()は前期比(前期は京都銀行の2023年3月期連結)
※(参考)業務粗利益973億円(+3.9%)、実質業務純益392億円(+4.8%)
出所:京都FG 決算短信
銀行本来の業務の収支を示す業務粗利益は3.9%増加しました。業務粗利益は特に役務取引等利益がけん引しました。役務取引等利益はサービスの手数料などから構成されます。
京都銀行単体で、役務取引等利益は12.7%増加(+15億円)しました。一方、貸出金や有価証券の利子収入などの資金利益は1.6%の増加(+13億円)にとどまっています。引き続き企業向けのサービスや金融商品の販売が好調だったようです。役務取引等利益は4期連続で過去最高を更新しました。
出所:京都FG 決算説明会資料より著者作成今期(2025年3月期)の業績見通しは以下の通りです。増収増益の計画で、純利益は330億円を見込んでいます。達成すると純利益は6期ぶりに過去最高を更新することになります。
【京都FGの業績見通し(2025年3月期)】
・経常収益:1524億円(+10.6%)
・経常利益:462億円(+6.0%)
・純利益:330億円(+4.5%)
※()は前期比
出所:京都FG 決算短信
出所:京都FG 決算短信より著者作成1兆円の政策保有株を所有 追加の削減はあるか冒頭の通り、京都FGは多くの京都企業の大株主となっています。これに関連し、よく話題に上るのが政策保有株です。京都FGは政策保有株を多く所有する企業として知られています。
【京都FGの政策保有株の状況(2024年3月)】
・簿価:1466億円
・時価:1兆1164億円
※簿価は売却合意済みで未売却の43億円控除後
出所:京都FG 決算説明会資料
政策保有株とは、純粋な投資目的ではなく、経営上の戦略から所有する株式を指します。資金が拘束されることから資産の効率性が下がり、ROE(※)が低下するとの批判があります。
※ROE(自己資本利益率):自己資本に対する当期利益の割合。ROEは収益性×資産の効率性×財政状態に分解できる(デュポン公式)。
京都銀行は2022年5月、政策保有株の削減を公表しました。3年間で簿価160億円分を減らす計画です。2024年3月までに125億円を売却(売却合意済みで未売却の43億円を含む)しました。しかし簿価160億円は公表当時の10%程度であり、削減は小規模なものにとどまっています。
今期(2025年3月期)は削減計画の最終年度です。追加の削減計画が出されるか、市場の注目が集まります。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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