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ふくおかFGに半導体の追い風、傘下行で融資が急増 経済効果20兆円

Finasee / 2024年6月27日 11時0分

ふくおかFGに半導体の追い風、傘下行で融資が急増 経済効果20兆円

Finasee(フィナシー)

2024年6月15日、九州に半導体産業の製造園区(パーク)を設置する計画が台湾で浮上していると報道されました。ファウンドリ世界最大手のTSMCが熊本に進出して以来、九州全体で半導体産業の動きが加速しています(出所:時事通信 九州に半導体製造パーク構想 TSMC進出で浮上―台湾 2024年6月15日付)

恩恵が期待される企業の一つがふくおかフィナンシャルグループです。ふくおかFGは九州で強い営業基盤を持っており、グループ銀行で半導体関連の融資が増えています。

【ふくおかFG傘下行の半導体関連取引先の融資残高(2024年3月)】
・福岡銀行:1282億円(+12.2%)
・熊本銀行:143億円(+36.8%)
・十八親和銀行:276億円(+2.3%)
・合計:1701億円(+12.1%)
※()は前年同月比

出所:ふくおかFG 決算説明会資料

今回は九州トップクラスの金融グループ、ふくおかFGに焦点を当ててみましょう。同社の概要と業績、また近年の半導体に対する取り組みを紹介します。

九州の巨大銀行グループ 総資産は地銀最大

ふくおかFGは5つの銀行を持つ金融グループです。地方銀行の福岡銀行と十八親和銀行(長崎)、第二地銀の熊本銀行と福岡中央銀行、またインターネット専業のみんなの銀行を傘下に持っています。福岡銀行と十八親和銀行は、経常収益(売上高に相当)の10%超を占める特定子会社です(出所:ふくおかFG 有価証券報告書)

ふくおかFGが所有する銀行は地方銀行グループで最多です。早くから再編に取り組み、熊本や長崎の銀行を取得してきました。総資産は32兆円に達しており、これも地方銀行グループで最大です。

【地方銀行の持ち株会社の連結総資産上位5社(2024年3月)】

          連結総資産   グループ銀行  ふくおかFG 32兆6497億円  福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行、
 福岡中央銀行、みんなの銀行  コンコルディアFG 24兆3817億円  横浜銀行、東日本銀行、神奈川銀行  めぶきFG 21兆7861億円  足利銀行、常陽銀行  ほくほくFG 16兆3829億円  北海道銀行、北陸銀行  しずおかFG 16兆1416億円  静岡銀行

出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算

株価はどうでしょうか。

ふくおかFG株式はおおむね右肩上がりに上昇しています。株価は5年前のおよそ2倍に値上がりしました(2024年6月18日時点)。金利が上昇したことを受け業績改善の思惑が働いたとみられます。

出所:Yahoo!ファイナンスより著者作成最終利益が倍増 債券損失の改善と「負ののれん」が押し上げ

足元の業績を確認しておきましょう。

ふくおかFGの前期(2024年3月期)の業績は以下の通りです。増収増益となり、業績は大きく拡大しました。特に純利益は96%増と、ほぼ倍増しています。銀行本来の業務による諸利益も大きく改善しています。

【ふくおかFGの業績(2024年3月期)】
・経常収益:4047億円(+22.2%)
・経常利益:569億円(+13.8%)
・純利益:612億円(+96.4%)
※()は前期比
※参考:業務粗利益2290億円(+18.2%)、業務純益687億円(+30.5%)、コア業務純益1004億円(+7.5%)

出所:ふくおかFG 決算短信

最終増益の主な要因は2つあります。債券ロスカット損失のはく落と、負ののれん発生益です。

債券ロスカット損失のはく落は、債券運用の損失が小さくなったことを意味します。2023年3月期は外債の売却損で261億円を計上していました。2024年3月期も円債で損失を出しますが、損失額は134億円に縮小しています。

負ののれん発生益は、福岡中央銀行の統合に伴い生じたものです。負ののれんとは、一般に取得費用が被買収企業の純資産額を下回る(安く買収できた)場合に発生する利益を指します。

福岡中央銀行は2023年10月に連結され、ふくおかFGに215億円の負ののれんが生じました。2024年3月期は信用基準の強化に伴い信用コストが一時的に増加しましたが、負ののれんで相殺され、特殊要因は差し引き5億円のプラスとなっています。

なお、これら一過性の要因を除いても純利益は増加しています。貸出金と有価証券の増加を主因に、主に国内で資金利益が改善したことが利益を押し上げました。ただし国際部門の資金利益は悪化しています。海外の金利上昇で調達コストが増加したことによるものです。

利ざやの改善はまだ道半ばのようです。ふくおかFGは、今後は貸出金の入れ替わりが進むことで資金利益が拡大していくと説明しています(出所:ふくおかFG 決算説明会資料)

出所:ふくおかFG ヒストリカルデータより著者作成

業績の見通しも確認しておきましょう。

ふくおかFGは今期(2025年3月期)も増益を見込んでいます。特に経常利益は大幅な増加となる計画です。これは前期の一時的な損失(円債ロスカット、信用コストの増加)がなくなることが主な原因です。また負ののれん発生益もはく落するため、経常利益と比べると純利益の増益は小幅にとどまる見通しです。

【ふくおかFGの業績見通し(2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:995億円(+74.8%)
・純利益:685億円(+12.0%)
※()は前期比

出所:ふくおかFG 決算短信

九州半導体の経済効果20兆円 専門チーム&地銀連合で需要に備え

冒頭の通り、九州は半導体産業の集積地となる兆しがあります。ふくおかFGによると、九州の半導体に関連する設備投資の経済波及効果は、2021年からの10年間で20.1兆円と推計されています(出所:ふくおかFG 決算説明会資料)。福岡・熊本・長崎を中心に、九州の広い範囲に営業基盤を持つふくおかFG には恩恵が期待されます。

【地域別の貸出金平残(2023年度)】

        福岡県     熊本県     長崎県      福岡銀行 7兆6391億円 1323億円 706億円  熊本銀行 446億円 1兆3215億円 ―  十八親和銀行 3575億円 121億円 2兆2570億円  福岡中央銀行 4012億円 ― ―  合計 8兆4424億円 1兆4659億円 2兆3276億円

※政府等向け貸出金を除く

出所:ふくおかFG 決算ハイライト資料

すでに半導体関連の貸し出しは増加傾向にあります。特に熊本銀行に融資相談が増えているようです。決算説明会資料によると、熊本銀行に寄せられる融資相談の2割は半導体関連となっています。

【熊本銀行への融資相談(累計、2024年5月公表時)】
・件数:760件
・金額:1350億円
・うち半導体関連:22%
※(参考)2023年11月公表時:件数500件、金額1000億円超、うち半導体関連21%

出所:ふくおかFG 決算説明会資料

ふくおかFGは半導体向けの体制を整え需要に備えます。2022年4月に熊本銀行に専門チーム「新地域開発推進チーム」を設置すると、2023年10月にはふくおかFGに「半導体ビジネス推進チーム」を設置しました。

ライバルとも手を取り合います。福岡銀行など九州と沖縄の地方銀行11行は2024年1月、半導体産業を後押しするため「九州・沖縄地銀連携協定」を結びました。同年6月には山口フィナンシャルグループの2行(山口銀行、北九州銀行)も加盟しました。地銀13行が連携し、金融面から半導体産業を支援します。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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