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「転職しても生活は成り立つでしょうか?」“年収大幅ダウン”を覚悟する50代女性にFPの回答は…

Finasee / 2024年7月1日 18時0分

「転職しても生活は成り立つでしょうか?」“年収大幅ダウン”を覚悟する50代女性にFPの回答は…

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

真美さんは52歳の独身女性です。大学卒業後から建設会社で仕事に打ち込んでおり、現在は現場をまとめるリーダーを任されています。仕事は好きですが、2年前に乳がんになったことや今も続くホルモン治療で体力低下が著しく、定年まで働くことが厳しいと感じています。

「家の近くで働けるところを探したいです。ただ、家の近くだと事務の仕事があったとしても年収は250万円程度ですね」。真美さんは転職を検討していますが、現在の年収は1100万円で、転職するとなると年収250万円程になる見込み。現在の年収の約5分の1と大幅ダウンです。

気持ち的には納得できるものの、生活が成り立つかは不安です。そこで、老後の生活設計を2つのステージに分けて考え、転職が可能かどうか検証することにしました。

●前編:【「仕事を続けるのはきついです」50代管理職女性が“年収1100万円”を捨て転職を望む「切実な理由」】

第1ステージは約3200万円の赤字に

分かりやすく考えるために、年金生活が始まる65歳から95歳までを第1ステージ、転職予定の55歳から64歳までを第2ステージに分けます。

まず安心して転職するには第1ステージの生活が成り立たないといけません。そこで第1ステージの収支を計算しました。第1ステージの主な収入は年金です。

50代になれば、ねんきん定期便に年金見込額が記載されていますが、記載された数字は今の収入が60歳まで続いたと仮定した金額です。転職するなら金額は下がるため、転職したと仮定した年金額を計算し、さらに支出額も算出しました。

その結果、第1ステージは約3200万円が不足する計算になりました。

<第1ステージ(65〜95歳の30年とする)の総収入と総支出額>

●収入:年金手取り総額 4680万円

●支出:日常生活費や自動車費用、予備費など総額 7900万円
(住宅ローン残高 1100万円含む)

収入―支出=4680万円-7900万円=▲3220万円

対策として運用資産で住宅ローンを返済することに

第1ステージは約3200万円不足する結果に。しかし、真美さんはすでに投資信託で積み立ててきた運用資産1500万円があり個人年金も総額で1000万円受け取れる予定です。これら資金を不足額にあてれば随分状況は変わりますが、ここで真美さんは「住宅ローンは、今、繰り上げ返済した方が良いですか?」と質問しました。

繰り上げ返済をせず、そのお金を運用した方が増えるのでは? と思うものの、老後に住宅ローンを残したくない気持ちもあります。

そこで仮に運用資金のうち1000万円を今、繰り上げ返済に使った場合の計算をしました。すると利息が約300万円減り65歳で完済する計算になりました。運用との比較で考えるなら、1000万円を投資して65歳になるまで300万円以上の利益が出れば、繰り上げ返済より運用をした方が良いということです。

しかし、運用に100%はありません。真美さんは繰り上げ返済する方向で考え始めました。とすると、老後に住宅ローンはなくなるため、これから準備すべきは個人年金分を除き約1100万円です。

積み立てを継続して運用資産の増加に期待する

さて、住宅ローンの繰り上げ返済に運用資産1000万円を使うなら現在の運用資産1500万円は500万円に減ります。500万円を不足額である1100万円にするには、積み立てが必要です。

現在、真美さんは投資信託に毎月10万円を積み立ています。仮に転職するまでの3年間は毎月10万円の積み立てを続け、その後は積み立てる余裕がなくなるとして、投資信託をそのまま保有、利回り3%で運用できるものとして計算すると、元々の運用資産500万円を含めて65歳時点で1200万円ほどになる計算です。

つまり、転職まで投資信託の積み立てを毎月10万円ずつ続ければ、第1ステージはクリアということになります。

第2ステージは約1600万円の赤字に

次に第2ステージ(55〜64歳)の収支を計算しました。すると、3年後に退職するなら、約1600万円の不足が発生する計算になりました。

<第2ステージ(55〜64歳)の総収入と総支出額>

●収入:年収250万円の手取り総額1800万円
 今の会社の退職金 800万円
 現時点の普通預金 500万円

●支出:日常生活費や自動車費用、予備費など総額4680万円

   収入―支出=(1800万円+800万円+500万円)―4680万円=▲1600万円

さすがに1600万円を3年後の退職までに作るのは不可能です。しかし、現在の年収が1100万円ですから、退職時期を約1年半遅らせれば実現可能かもしれません。一方で退職時期を遅らせずに支出を削減する方法もあります。

自動車と趣味の費用節約で退職時期は変えずに済む

たとえば、支出に占める自動車の費用は10年間で約800万円となりました。

自動車は親を病院に連れて行ったり、旅行に行ったりする用途で保有していますが、親には通院時に高齢者のタクシー割引を利用してもらうなどして代替手段を考えても良いでしょう。旅行については「年収が下がるなら旅行は無理ですね、余裕があれば行く程度にします」と現実は厳しいことを実感した様子です。

また、現在の真美さんの趣味はフラワーアレンジメント教室(月額1.5万円)と医療エステ(月3万円)です。年収が下がるなら、高額な趣味と言えるでしょう。

フラワーアレンジメント教室については「この教室、確かに高いんですよ。もう少し安い教室はたくさんあるので、変更します」ときっぱり。医療エステは、現場仕事が多いためシミ・シワ対策で毎月美容外科に通っているそうですが「今の仕事をやめるなら、もう行きません!」と覚悟を決めたようです。

自動車を手放したとしてもカーシェアなどの利用によって費用をゼロにすることはできないかもしれませんが、自動車費用と趣味節約を実行すれば1年分の年収に相当する金額のため、3年後の転職も可能かもしれません。

むしろ一番大切なのは、収入に合わせた生活をすることです。いくら不足額を準備できたとしても、収支が不釣り合いな生活を送っていると資金がショートする不安が常につきまといます。

真美さんの場合、普段は倹約されていますから、自動車がない生活や趣味ランクをどこまで落とせるかがポイントとなりそうです。今からその生活を試してみてもいいかもしれません。

収入を下げても生活を成り立たせる6つのポイント

「収入を下げても生活できるか」を考える際は、運用や生活水準など不確定要素がたくさんあります。そのため、自分がどこまでその不確定要素に納得できるかがポイントとなります。不確定要素はなるべく保守的に考えますが、将来どうなるかは分かりません。したがって、次の6つがポイントになります。

1.運用利回りは実績よりも低く見積もる

2.退職金など大きなお金を一括投資して増えるとは考えない
(「退職金をアメリカ株などに一括投資すれば2〜3年後に1.5〜2倍くらいになるだろうから、それを生活費にあてられるだろう」などと考えない)

3.運用は長期で考える
(手元の預金をハイスピードで積立運用すれば2〜3年後に増えているはずとは考えない)

4.リスクが大きい資産から取り崩していくことを考える
(株と積立運用中の投信があるなら株から取り崩す計画を立てる。株は長期保有するほど不確定要素が大きくなるものの、今の金額は明確。そのため、持ち続けたい、あるいは必ず上昇すると自信がある場合を除き、最初に取り崩すと計算する)

5.収入に合わせた生活をどこまで実行できるか試してみる

6.自分の年金額を知る

特に運用については、リスクがあることを理解しているものの、ここ数年の株式市場の好調さと自分の希望をかなえたい気持ちから楽観視してしまいがちなので注意が必要です。

***
 

真美さんは、早期退職は不可能ではないことを知り、前向きな気持ちになれたようです。「今の投信積立は退職まで続けますし、旅行や趣味を削減してみて、節約できたお金を早期退職のために貯めたいです。退職時期が近くなったら、再度実行可能か検証をお願いします」と、言っていました。将来を見据えて計画的に行動する真美さんですから、数年後は資産状況が変わり、本当に実現できるようになっているかもしれません。

前田 菜緒/ファイナンシャルプランナー

FP事務所AndAsset代表。ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった自身の経験から、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体制で相談やセミナーを実施。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。

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