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「パパに似なくて良かったね~」幼い娘への“疑惑”…妻に内緒でDNA鑑定をした男性を襲った「まさかの展開」

Finasee / 2024年7月5日 17時0分

「パパに似なくて良かったね~」幼い娘への“疑惑”…妻に内緒でDNA鑑定をした男性を襲った「まさかの展開」

Finasee(フィナシー)

電車に揺られながら、佳則は仕事から帰っていた。最寄り駅のアナウンスが、空気のよどむ車内に響く。その瞬間、年がいもなく、佳則の心は躍った。もちろん41歳という年齢なので、顔に出さない。しかし子供の時だったら飛び跳ねて電車から降りていたに違いない。

駅前の駐輪場に止めていた自転車を全速力でこいで、佳則は帰宅する。

「ただいま」

息を弾ませながら、玄関を上がると、妻の奈々子が笑顔で迎えてくれた。

「おかえり。ご飯、準備するね」

「うん、お願い」

奈々子とは2年前に知人の紹介で知り合った。

一目ぼれだった。出会って2回目のデートで交際を申し込んだ。当時すでに39歳という結婚にはかなり出遅れた年齢だったが、奈々子はそんな年齢を気にせず佳則を受け入れてくれた。

付き合い初めてから3カ月でプロポーズ。もちろん2人の年齢を考えると早いほうがいいだろうという気持ちもあったが、それ以上に佳則は奈々子と家族になりたいという、生まれて初めて抱く強い衝動に突き動かされたのだ。

佳則はできるだけ小さい声で奈々子に声をかける。

「美波は?」

奈々子は笑ってリビングを指した。

はやる気持ちを抑え、佳則は洗面台で手を洗い、部屋着に着替えてリビングへと向かった。リビングのマットの上で美波はおもちゃを持って遊んでいる。ふわふわと柔らかそうな小さい背中を見るだけで、佳則の頰は思わず緩んだ。

「美波ちゃ~ん、パパですよ~」

佳則は猫なで声で声を掛けながら、美波に歩み寄っていく。気付いた美波は佳則を見て、満面の笑みを浮かべた。この笑顔を見るだけで、本当に一日の疲れが吹っ飛んだ。

そこから佳則はとにかく美波に声をかける。まだ簡単な単語しか話せないのだが、美波が何となく反応を示してくれるのがうれしかった。

「ほら、ご飯できたよ。私が美波を見てる間に食べちゃって」

美波はだいたい21時前には寝てしまう。今が20時なので、一緒にいられる時間は1時間もない。そう思うと、食事をしている時間すらもったいなく思えてくる。急いでご飯をかきこんでいると、あきれたように苦笑いを浮かべる奈々子が向かいの席に腰を下ろす。

「そんな焦らなくても、美波はどこにも行かないわよ」

「いや、あとちょっとしか一緒にいられないからさ」

「明日も一緒に遊べるって」

佳則は首を横に振る。

「いやいや、そんなことを言ってたら、いつの間にか大きくなっちゃうから。それこそ、明日には立って歩くようになるかも」

「まだ大丈夫よ。つかまり立ちだって、できないんだから」

佳則はおもちゃで遊ぶ美波を見つめる。

「美波が立って歩くところは絶対にこの目で見たいんだよね」

「それじゃ、毎日、目をこらして美波を見逃さないようにしないとだね」

ほほ笑んだ奈々子の隣りで、佳則は温かな家庭の幸せをいつも実感するのだった。

母の何気ない一言が…

佳則たちは大型連休を利用し、美波を連れて実家に帰省をしていた。久しぶりに母に美波に会えた母は、佳則にも負けない溺愛ぶりで、奈々子はその様子をうれしそうに見守っている。

「かわいいわね~、将来はアイドルかな、女優さんかな? どっちがいいですか~」

そう聞かれてもとくに美波は反応しない。ただうれしそうに笑っている。

「母さん、気が早いよ」

佳則がそう言うと、隣の奈々子が吹きだした。

「え、何?」

「いや、あなたも同じこと言ってたから」

「え、うそ。俺、そんなこと言ってた?」

奈々子は人さし指で涙を拭く。

「言ってた言ってた、ほんとにそっくりな親子ですね」

そう言われて母はまんざらでもない顔をしながら、美波に顔を近づける。

「でも、美波ちゃんはパパと顔が似なくて良かったね~。ほんとお目々ぱっちりで良かったわね~」

母の言葉に佳則は笑う。

「おいおい、わが親がそんなこと言うかね? 俺にだって似てるよな、奈々――」

佳則はそこで奈々子に笑いかけて、しかし言葉を飲んだ。いつも柔らかい奈々子の表情が、どことなくぎこちなく引きつっているように見えたからだ。

「奈々子……?」

奈々子はわれに返り、またいつものように笑って佳則を見る。

「え、な、何?」

「いや、大丈夫か?」

「ああ、ごめんね。ちょっと最近、寝不足だったから……」

奈々子の言葉が佳則にはどうしても、何かをごまかしているように聞こえていた。前からうすうす思っていたことだが、美波は佳則に似ても似つかない。女の子は父親似になると言われていたりもするが、美人な奈々子に似たほうが美波も幸せだと思うから、それはいい。

気になるのは、目元がどちらにも似ていないことだった。もちろん佳則や奈々子の両親とも違う。そんなことを考えるたび、良からぬ考えが頭をもたげる。それをあり得ないと否定する。その繰り返しだった。

「ねえ、話聞いてる?」

「え?」

気付くと、リビングで奈々子が洗濯物を畳んでいた。

「さっきから私の話、全然聞いてなかったでしょ?」

「あ、ああ、ごめん。ちょっとボーッとしてた」

佳則が正直にそう答えると、奈々子は笑って立ち上がり、佳則の背後へ回る。

「疲れてるんじゃない? ほら、肩やばいよ」

奈々子の指が佳則の肩の筋肉を押した。凝り固まった筋肉はほぐれていくのに、佳則はそのぬくもりに身をゆだね切ることができない。

全ては疑惑のせいだ。

このままではダメだと思った佳則は血縁関係を調べる方法を検索した。よく刑事ドラマなんかで見かけるDNA鑑定が、3万円程度で個人でも利用できることを知った。小遣い制のサラリーマンにとって、決して安い額ではなかったが、奈々子への疑念をなくし、この幸せを続けていくためなら安いものだった。

申し込んだ検査キットを郵便局留めで受け取った。説明書に従い、佳則はこっそりと美波の毛髪を入手して、祈るような気持ちでDNA鑑定に出した。

衝撃の鑑定結果

鑑定結果をまた郵便局留めで受け取ったのは、それから10日後のことだった。

さすがに家で封筒を開けるわけにはいかず、いや、そもそも封を開ける決心すらつかず、日が暮れるまで街を徘徊(はいかい)し続けた佳則は、けっきょくマンションの駐輪場に隠れて結果を確認することにした。

きっと最愛の家族を疑った自分を恥じることになるだろう。佳則はそんな恥ずかしく罪深い、けれど望ましい未来を思い描いて封筒を開けた。

薄っぺらい1枚の紙は、美波が佳則の娘であることを否定する文章が、冷たく完結に記されていた。

理解ができず、何度も読んだ。しかし書かれた文字は変わらない。

暑くもないのに全身が汗にぬれていた。照明で明るいはずの駐輪場は急激に彩度を失い、視界の端から暗闇にむしばまれていった。

手をついて突っ伏した視線の先に、アリの群がった蛾の死骸が落ちていた。

●衝撃の「事実」を知ってしまった佳則。奈々子と、そして美波との関係はどうなっていくのか……? 後編「あれ、誰の子だよ?」娘と血がつながっていない事を知った男性がとった「驚きの行動」にて、詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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