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固定金利と変動金利に流行はある?

Finasee / 2024年7月24日 11時30分

固定金利と変動金利に流行はある?

Finasee(フィナシー)

2024年3月にマイナス金利政策の解除が日本銀行から発表され、長く続いた低金利時代の転換点に立っています。特に家計の面では、住宅ローン金利の上昇は大きな影響を及ぼす可能性もあり、非常にその動向が注目されています。

ミライ研では2024年1月に実施したアンケート調査をもとに、長く続いた低金利時代で住宅ローンの利用形態がどのように変遷してきたかについて3回のコラムでお伝えします。今回は、金利形態についてです。

金利形態は、固定金利から変動金利へ大きくシフト

1993年以前の借入れの金利形態を確認すると、変動金利が18.2%、固定金利が69.5%、変動金利と固定金利の組み合わせが12.3%と、固定金利での借入れが圧倒的主流でした【図表1】。その後、徐々に変動金利の割合が増加し、2004年〜2013年の借入れでは、変動金利の割合と固定金利の割合がほぼ同等、直近10年である2014年〜2023年の借入れに目を向けると、変動金利が58.5%、固定金利が34.1%、変動金利と固定金利の組み合わせが7.4%と変動金利が主流となっていることがわかりました。

【図表1】住宅ローンの金利形態

*回答者:住宅ローン利用経験者
*金利形態選択肢「その他」「わからない」は除く
(出所)特に出所を示していない場合、三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)をもとにミライ研が作成

実際に、住宅ローン金利の変遷を確認すると【図表2】となっています。1990年前後をみると、変動金利の基準金利である短期プライムレートは8.0%を超える水準まで上昇しており、住宅金融支援機構基準金利(=長期固定金利の貸出金利)を大きく上回っていることがわかります。そのため、固定金利を選択される方が多く、”固定金利優位時代”だったといえます。その後、短期プライムレートは急速に下落し、1993年に住宅金融支援機構基準金利を下回っていることから、徐々に固定金利から変更金利での借入れへシフトしていったものと思われます。

またその後、日本銀行がマイナス金利を導入した2016年以降は、固定金利も下落していますが、実勢としては変動金利の方が低かったこともあり※、変動金利での借入れが主流として定着したものと思われます。

※変動金利の貸出金利は、短期プライムレートから、各金融機関が定める一定の優遇幅を差し引いたものであるケースが一般的なため、変動金利の貸出金利は図表2の短期プライムレートよりも低いことが想定されます。実際、2016年2月の主要行の10年固定金利の平均金利は1.093%、変動金利の平均金利は0.592%との調査(出所:「WhatzMoney 住宅ローンレポート (2016/3)」より)もあります。

【図表2】短期プライムレート・住宅金融支援機構基準金利・フラット35借入金利(最低・最高)の推移

※出所、注についてはコラム後段部分をご確認ください

では今後、マイナス金利政策が解除され「金利ある世界」になった場合、どちらの金利形態を選択すればよいでしょうか。「金利ある世界」への転換点から、それぞれのメリット・デメリットを改めて確認しましょう。

変動金利
メリット:現時点では、最も低い貸出金利で借りられる場合が多い
デメリット:半年に1度、貸出金利の見直しがあるため、今後、金利が上昇した場合には、想定以上に高い金利での借入になっていく可能性がある

固定金利
メリット:歴史的にみると非常に低利の水準であることは間違いなく、今後、長期で借りる前提であれば、比較的低利で金利を固定できたとなる可能性がある
デメリット:借入期間中の金利上昇がそれほど大きくなかった場合、結果的には高い金利で借入れたという可能性が生じうる

いずれにしても、金利の動向を完全に予測することは不可能ですので、それぞれのメリット・デメリットやご自身の借入状況(残高・残期間など)に応じて判断する必要があります。また、変動金利か固定金利かといずれかを狙い撃ちにするのではなく、【図表1】では少数派であったものの「一部は変動金利で、一部は固定金利で」といった柔軟なプランの検討も必要になってくるものと思われます。

次回は、頭金の割合について取り上げます。

「金利ない世界」の住宅ローンの変遷は?より②  へ続く

【図表2短期プライムレート・住宅金融支援機構基準金利・フラット35借入金利(最低・最高)の推移】について
○短期プライムレート○
(出所)日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移1989年~2000年」「長・短期プライムレート(主要行)の推移2001年以降」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
※1989年以降、都市銀行が短期プライムレートとして自主的に決定した金利のうち、最も多くの数の銀行が採用した金利および最高、最低の金利。1989年1月23日以降、金利決定方式を総合的な調達コスト等をベースとした方式に変更。
○住宅金融支援機構基準金利○
(出所)住宅金融支援機構「昭和50年~平成10年の旧公庫融資基準金利の推移」「平成11年~平成20年の旧公庫融資基準金利の推移」「平成21年~平成26年の旧公庫融資基準金利の推移」「平成27年~令和2年2月の旧公庫融資基準金利の推移」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
■   「昭和50年~平成10年の旧公庫融資基準金利の推移」について
※昭和57年10月1日から段階金利制度開始※昭和60年11月25日より、特別加算制度開始※平成9年4月1日より、特別加算についても段階金利制度開始
■   「平成11年~平成20年の旧公庫融資基準金利の推移」について
※175㎡超の住宅の11年目以降の金利は3.40%※175㎡超の住宅の11年目以降の金利は3.35%※当初10年間と11年目以降の融資金利は同一
■  「平成21年~平成26年の旧公庫融資基準金利の推移」について
※当初10年間と11年目以降の融資金利は同一
■  「平成27年~令和2年2月の旧公庫融資基準金利の推移」
※当初10年間と11年目以降の融資金利は同一※令和2年2月末をもって終了
○フラット35借入金利(最低・最高)○
(出所)住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
※平成19年10月から平成22年3月まで:返済期間が21年以上35年以下の場合
※平成22年4月から平成29年9月まで:返済期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下の場合
※平成29年10月から令和3年3月まで:返済期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下、新機構団信付きの場合
※令和3年4月から:返済期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下、新機構団信付きの場合
※いずれの期間も「最低」の借入金利を採用

◯住宅ローン借入時期の算出について◯
・自身もしくは配偶者・子どもが居住・利用している持ち家保有者(戸建て・集合住宅を問わない)に対して、現在の住まい(複数の住宅を居住・利用している場合は、年間で最も滞在日数の長い住宅)の購入時年齢※を確認
・同様の対象者に、住宅ローンの利用有無を確認し、利用者(完済者含む)については、現在の住まい購入時年齢=住宅ローン借入年齢と推定
・現在の年齢と住宅ローン借入年齢より、住宅ローン借入時期を推計

    ※現在の住まいの購入時年齢については、「29歳以下の時に購入」、「30~34歳の時に購入」(以降64歳まで5歳刻み)、「65歳以上の時に購入」、「相続・譲渡などで保有したので、購入はしていない」の、計10個の選択肢にて確認
    ※「相続・譲渡などで保有したので、購入はしていない」選択者については、分析より除外
    ※「29歳以下の時に購入」選択者は一律「27歳」、「30~34歳の時に購入(以降64歳まで5歳刻み)]選択者は「中央年齢」、「65歳以上の時に購入」選択者は「67歳」として推計

三井住友トラスト・資産のミライ研究所

人生100年時代において、一人ひとりが将来を安心して過ごすための資産形成・資産活用のあり方を中立的な立場で調査・研究し発信することを目的として、2019年 三井住友信託銀行に設置された組織。

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