【日本株】日経平均株価は再び4万円台に乗せるのか? 「まだ上昇余地はある」といえる“これだけの理由”
Finasee / 2024年6月26日 20時0分
Finasee(フィナシー)
日経平均株価4万円台は割高なのか
日経平均株価が1989年12月につけた最高値、3万8915円を終値ベースで抜いたのは、2024年2月22日のこと。さらに上昇して、同年3月22日には4万0888円の過去最高値を更新しました。
さすがに「4万円」の声を聞くと、マーケット関係者の間にも達成感が広がるようで、4月19日にかけて3万6733円まで調整し、足元では3万9400円前後を高値、3万7600円前後を安値とするボックス相場が続いています(2024年6月25日時点)。最高値更新に沸いた3月から、はや3カ月……株価上昇は期待できないのでしょうか。
今年1月からNISAが一新され、株式や投資信託などの投資商品に対する関心が、高まってきています。個別株投資とまでは言わずとも、投資信託で資産運用を始めた人もいらっしゃると思います。とりわけ、日本株で資産運用を始めた人たちにとって、この調整局面は胃が痛くなる思いをされてきたかもしれません。
では今後、日経平均株価はさらなる上値を取りに行くのでしょうか。
まず、割高か割安かという観点から見て見ましょう。
6月14日時点における東証プライム市場の平均PERは16.09倍で、平均PBRは1.38倍です。現在の東証プライム市場と比較するためのデータとして、かつての東証一部市場を参照すると、株価的にバブルピークだった1989年12月時点の東証一部市場の平均PERは約61倍で、平均PBRは約5.6倍でした。
株価水準は確かに1989年12月のバブルピークを越えて、かつ一時的に4万円の大台乗せも実現しましたが、株価は利益に対しても、また純資産に対しても、「割高」と評するには低いことが分かります。
企業の純利益はバブル期の4倍超に…それでもPERの数値は低い理由では、なぜ今の株価は、バブルピーク時のそれを超えるか、ほぼ同じ水準に達したのにPERやPBRなどの株価指標に照らして割安なのでしょうか。
それは、日本企業の収益力が高まるのと同時に、その収益が内部留保として、しっかり企業内に蓄積されているからと考えられます。
PERは株価を1株利益で割って求められます。つまり、どれだけ株価値上がりしたとしても、企業収益が増えれば、PERは上がりません。実際、東証プライム市場に上場されている企業の純利益は、合計で47兆円を突破し過去最高を更新しています。
ちなみに、みずほ証券リサーチ&コンサルティングが過去に集計した数字によると、株価的にバブルピークだった1989年度の東証一部上場企業の純利益は10.1兆円でした。この34年間で、株価はようやく過去の最高値を更新してきましたが、企業の純利益は実に4倍超にまで増えていたのです。日経平均株価が過去最高値を更新したにもかかわらず、市場平均のPERが大きく下げているのは、このためです。
ちなみにPBRについては、東証一部市場ならびに東証プライム市場に上場されている全企業の純資産合計額のデータが取れなかったので、ここでは割愛しますが、PBRの計算式は、「株価÷1株純資産」なので、特にリーマンショック後、多くの日本企業が内部留保を多く蓄積してきたことを考えると、PBRが低くなるのも自然の流れと言えそうです。
また、PBRは上記計算式以外に、「PBR=ROE×PER」でも求められますが、この計算式から考えると、日本企業の多くは低ROEだったため、この点からもPBRが上がりにくい状況にあったと考えられます。
このように、バブルピークと現在のPERならびにPBRの比較感からすれば、現在の株価は決して「割高」ではありません。
その意味では、まだ上昇余地はありそうです。
中国や欧州の景気減速、地政学リスク…かく乱要因に日本株は耐えられるかとはいえ、現在のPERが割安だとしても、将来の利益が減れば、株価は割高に判断されます。株価は将来性を織り込むものなので、大事なのは将来の業績です。
長期的な業績を予測するのは困難ですが、参考になるのが会社四季報の2期予想です。宣伝するつもりはありませんが、2024年3集(夏号)には、2024年3月期決算企業の本決算がすべて掲載されるのと同時に、2025年3月期決算の予想と、2026年3月期決算の予想まで掲載されているので、これを見ることによって2期先までの企業業績予想を立てられます。
とはいえ、会社四季報に掲載されている企業数は3923社もありますから、これを1社ずつチェックするのは大変です。
そこで活用したいのが、会社四季報の冒頭にある「市場別業績集計表」です。ここには、東証・名証プライム市場、東証スタンダード市場・名証メイン市場、新興市場というように、市場別に売上高、営業利益、経常利益、純利益の前期実績、今期予想、来期予想の伸び率が示されています。
それによると、今期(2025年3月決算)予想は、前期(2024年3月決算)実績に比べて大幅な減益予想になります。
東証・名証プライム市場に上場されている1566社の営業利益は、前期実績が15.0%という大幅な伸びになりましたが、今期予想は7.0%の伸びにとどまります。中国や欧州の景気減速に対する警戒感の高まりや、想定為替レートを円高に設定している企業も多いことから、今期業績見通しについて慎重な見方が強まっているためです。4月から6月にかけて株価が横ばいで推移しているのは、今期決算の減益予想を織り込んでいるからと考えられます。
ただ、来期(2026年3月決算)予想は、営業利益ベースが今期予想の7.0%から8.9%へと増益率が上昇します。それにともない純利益の来期予想は、今期予想の2.6%から6.9%へと大きく上昇する見通しです。
何しろ2026年3月決算の話ですから、どうなるかは何とも言えません。前述したように中国や欧州の景気減速懸念、米国に関して言われているバブル崩壊、地政学リスクの高まりなど、現時点で想定されるマーケットのかく乱要因はさまざまあり、それらが顕在化すれば、株価はある程度の調整を余儀なくされるでしょう。
とはいえ、日本企業の収益性は大きく改善していますし、米国など他の先進国の株価に比べて、日本株が大幅に出遅れているのも事実です。仮に世界株が急落しても、日本株の調整は小幅に止まると見ています。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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