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「身内からお金とる気⁉」あり得ない頻度で孫の世話を押し付けてくるモンスター嫁を“撃退”した方法

Finasee / 2024年7月16日 17時0分

「身内からお金とる気⁉」あり得ない頻度で孫の世話を押し付けてくるモンスター嫁を“撃退”した方法

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

保育士だった早月(64歳)は、育休中の嫁の梨奈(32歳)から孫の面倒を任せられることが「ちょっとあり得ない」ほど多い。孫も可愛いし、最初は自分を頼りにしてくれることが嬉しかったが、梨奈は育休の“育”をおざなりにして遊びに行ってばかり。友人とのランチやネイルサロンへ行くため、週に3日以上早月が呼ばれることもあった。

しまいには「お義母(かあ)さんが元保育士でラッキーでしたよ。ベビーシッター代浮くし、助かります」と言う始末。都合よく使われている感がぬぐえなかったが、孫のためだと不満を呑みこんでいた。

そんなある日、梨奈の留守中に、いつも通り面倒を見ていた早月がトイレのため目を離した数分の隙に、祥太がベッドから転落して頭を打ってしまう。慌てて救急車を呼んだ早月だったが……。

●前編:「ベビーシッター代浮くし」義母をこき使うモンスター嫁の“鈍感力”が招いた「起こるべくして起こった事故」

義母にブチ切れるモンスター嫁

幸い祥太は大事には至らなかった。

意識状態も正常で、嘔吐(おうと)などの症状もなく軽傷で済み、後遺症についてもおそらく問題ないだろうということだった。医師から診断結果を聞かされた早月は胸をなでおろしたが、祥太の転落事故はまだこれだけでは終わらなかった。

早月からの連絡を受けた梨奈が病院にかけつけた。息を切らした梨奈は早月から抱きかかえていた祥太を奪うと、鋭い視線を早月へ向けた。

「もう信じられない! 元保育士が聞いてあきれますね! もしも祥太に後遺症が残ったらどうしてくれるんですか⁉ お義母(かあ)さんに責任取れるんですか⁉」

「ごめんなさい。私の注意が足りなかったわ。これでも気を付けていたつもりなんだけど、まさかあの高さの柵を乗り越えるなんて思わなくて……」

責められた早月は、素直に嫁の梨奈に謝罪した。想定外の事故とはいえ、一瞬でも油断して目を離した自分に責任があるのは間違いなかった。

ところが、頭を下げる早月の姿を見ても梨奈の勢いは一向に止まらない。梨奈の怒りがほとばしり、眠っていた祥太が大声で泣き出す。

「気を付けてたつもり……じゃ困るんですよ! 祥太のことを任された以上は、きちんと責任を持って面倒見てもらわないと! 不注意でケガさせました、なんてお話にならないですよ! 本当に分かってるんですか⁉」

梨奈に言われるまでもなく、早月は事の重大さを十分に理解している。ベッドからの転落事故は0歳児が最も多く、なかには命に関わる結果をもたらすこともある。早月は元保育士である前に、息子を育て上げた1人の母親だ。当然、乳幼児がベッドから転落する危険性についてよく知っていた。育児に関する知識があるからこそ、早月は自分の不注意で孫の祥太を危険な目に遭わせたことにショックを受け、深く反省しているのだ。

しかし、目の前にいる梨奈は、早月の思いなどみじんも察することなく感情の赴くまま怒りをまき散らしている。それどころか、かけつけてから1度でも、祥太に心配の言葉をかけてあげたりしただろうか。

自分のことは棚に上げて人のことを責め立て、祥太のことすら見えていない梨奈を眺めているうちに、早月は自分の心が急速に冷めていくのを感じた。このままではいけない、と思った。

母親としての責任

「梨奈さん、ちょっといいかしら? 今回のことは本当にごめんなさい。でも、私に責任がどうのという前に、梨奈さんにだって母親の責任があると思うの」

「は?」

一方的にやりこめられるはずの早月の反撃に、梨奈は言葉を失って固まっていた。早月は梨奈の腕のなかで泣きじゃくる祥太を抱きかかえ、左右に揺らしながらあやす。

「祥太のことがかわいいから、これまで目をつむってきたわ。でも、最近の梨奈さんはちょっと目に余ると思うの。あなたが私のことを単なるベビーシッターとして扱うのなら、私もあなたを依頼主として扱わせてもらうわ。ということではい、これお願い」

そう言うと早月は、携帯のメモ機能を開いて梨奈の目の前に突き付ける。そこに表示されていたのは、これまでの祥太の託児を時給換算した“保育費”だった。

「お義母(かあ)さん、何ですかこれ?」

「ベビーシッターってね、だいたい時給2000円くらいなの。だからもし祥太を預かるのが仕事だったら、いつも昼から夕方まで5時間くらい預かっているから、1日あたり1万円ね。祥太が生まれてから今までの分を計算したら――」

「ちょっとお義母(かあ)さん何言ってんですか⁉」

梨奈の顔は怒りで赤く染まっていった。早月がこんな形で金の話を持ち出すのは予想外だったのだろう。

「お義母(かあ)さん、身内からお金とる気⁉ 孫の世話をしたくらいで、時給なんて発生するわけないでしょ⁉ 何さまのつもりなんですか。息子の嫁から搾取するなんて最低です!」

われを忘れて憤慨している梨奈を見つめて、早月は静かに息を吐く。

「冗談よ。息子夫婦にお金を要求するほど困ってないもの。だけどね、梨奈さん。これだけたくさんの時間、あなたは私に育児を任せてきた。それは紛れもない事実だと思うの」

「……だから、何だって言うんですか⁉」

梨奈は不信感丸出しで早月をにらみ付けてくるが、早月は全くひるまない。

「祥太の母親は梨奈さん……あなたなのよ。自由な時間が欲しい気持ちも分かるけど、毎日のように姑を呼びつけて子供の世話を任せる生活はおかしいと思うわ。会社から育休ももらってるんでしょう? これを機にしっかり祥太と向き合う時間を増やしてみた方がいいと思うわ」

早月はできる限り穏やかに語りかけた。梨奈に少しでも冷静になってもらいたいという思いからだったのだが、梨奈は早月の話が終わるや否や、声を張り上げて言った。

「ああ、そうですか! 分かりましたよ! そんなに言うならもうお義母(かあ)さんを祥太には会わせませんから!」

梨奈は早月にたんかを切ると、祥太を再び早月から取り上げた。祥太はまた泣き出したが、梨奈はあやすことなく踵(きびす)を返し、病院を出て行く。

取り残された早月には、梨奈が心を入れ替えてくれるのを祈ることしかできなかった。

誕生日プレゼント

それから数か月後。

息子の武治が孫の祥太を連れて、2人で実家に遊びに来ていた。祥太は少し見ないうちに、おぼつかない足取りながら歩けるようになっている。本当に子供の成長は早いものだ。

梨奈はというと、今日は友人たちと遊びに出掛けているらしい。相変わらず子供を置いて遊び歩いているのかとあきれる早月だったが、よくよく話を聞くとそうではないということが分かった。

武治の話によると、梨奈は祥太の転落事故があってからというもの、家事に育児に奮闘してくれているという。なんでも早月に諭された件で仲の良い友人グループに愚痴をこぼしたところ、ほぼ全員から梨奈にも非があると責められてしまったそうだ。

当然自分の味方をしてもらえると思っていた梨奈は、大きなショックを受けたが、同時に自らの行いを省みるきっかけにもなったらしい。親しい友人から指摘してもらったことで、ようやく梨奈は今まで自分が早月に頼り過ぎていたということに気付いたのだ。

それからの梨奈は、友人との外食やネイルなどもほどほどに、祥太と過ごすために時間を費やしているそうで、今日はたまたま武治が休みだったため友人と遊びに行っているが、祥太を置いての外出はずいぶん久しぶりだという。

早月は武治の話を聞いて、自然と温かい気持ちになった。梨奈が母親として頑張ってくれているようになったことが、とてもうれしかったのだ。

そこで早月は、息子の武治に伝言を頼むことにした。

「武治。帰ったら梨奈さんに伝えて。困ったときはお互いさまなんだから頼ってねって」

「ありがとう、伝えておくよ」

「それと、あんたもちゃんとするのよ。仕事にかまけて梨奈さんばっかりに頼ったらダメよ。2人の子供なんだから」

「……分かってるよ」

罰悪そうに髪をかいた武治をよそに、早月は今日のために用意していた小包を祥太に渡す。

「祥ちゃん、1歳のお誕生日おめでとう」

「あぁうう」

「よかったなぁ、祥太。パパと一緒に開けてみようか」

武治が手伝いながら包装紙を開けると、なかからはミニカーが出てくる。目を輝かせた祥太の反応を見て、早月はあらかじめ最近の祥太の様子を聞いておいてよかったとほっとする。

祥太はさっそくプレゼントの車を床の上で走らせている。早月は、思わず笑みをこぼして息子と孫に向かってポツリとつぶやいた。

「次は親子3人で遊びに来てね」

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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