七十七銀行は「新札発行」銘柄? 渋沢栄一との深いゆかり 新ビジネスは婚活、マチアプにも参入?
Finasee / 2024年7月4日 11時0分
Finasee(フィナシー)
いよいよ新紙幣の発行が始まりました。新1万円札の肖像画に採用される渋沢栄一は「近代日本経済の父」と呼ばれ、第一国立銀行(旧・第一勧業銀行、現・みずほ銀行)など多くの銀行の設立に尽力しました。
七十七(しちじゅうしち)銀行は、渋沢栄一とのかかわりが特に深い銀行です。設立時に支援を受けたほか、第一国立銀行から人材の派遣や宮城県における事業の譲受を受けています。また渋沢栄一が相談役を務めたこともありました(参考①:渋沢栄一記念財団 七十七銀行、参考②:七十七銀行 七十七銀行と渋沢栄一の縁)。
そんな七十七銀行ですが、足元は好調なようです。純利益は3期連続で過去最高を更新したほか、株価も順調に値上がりしています。銀行株は全体的に上昇傾向ですが、その中でも七十七銀行の値上がりは顕著です。
出所:Investing.comより著者作成
今回は渋沢栄一ゆかりの銀行、七十七銀行に焦点を当ててみましょう。概要と業績、また新しい株主還元方針を紹介します。
東北最大の地方銀行 婚活サービス事業にも参入七十七銀行は宮城県を地盤に持つ地方銀行です。東北最大の都市である仙台市に本店を持ち、宮城県を中心に140以上の拠点を持っています。グループ会社を通じリースや証券、クレジットカードなどの金融サービスを提供しています。社名は国立銀行(※)として77番目に設立されたことに由来します。
※国立銀行条例に基づく銀行のこと。国営ではなく民営。国立銀行条例に基づき153行が設立された(参考:日本銀行 第一銀行、七十七銀行など、数字の付いた銀行名の由来は何ですか?)。
七十七銀行の規模は東北の地方銀行でトップクラスです。総資産は10兆円を超えていますが、これは東北地方で首位、全国では13番目に位置します(2024年3月期)。
【東北地方の地方銀行 総資産ランキング(単体、2024年3月期)】
1.七十七銀行(宮城):10兆4712億円
2.東邦銀行(福島):6兆7382億円
3.岩手銀行:3兆9251億円
4.青森銀行:3兆6421億円
5.秋田銀行:3兆5671億円
6.山形銀行:3兆1320億円
7.みちのく銀行(青森):2兆3210億円
8.北都銀行(秋田):1兆5589億円
9.荘内銀行(山形):1兆5067億円
10.東北銀行(岩手):1兆0098億円
出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算
七十七銀行は婚活サービス事業に参入したことでも話題です。完全子会社の七十七ヒューマンデザインを通じ、2024年4月に結婚相談所「77結び(ななむすび)」を開業しました。取引ネットワークを通じた相手探しや、家計の視点を含めた婚活支援など、銀行グループの強みを生かしサービスを提供します。七十七銀行によると、七十七ヒューマンデザインはマッチングアプリの参入も検討しているようです(出所:七十七銀行 結婚相談所の開業のリリース(2024年4月1日))。
純利益は3期連続で過去最高 今期も増益の計画足元の業績を確認しておきましょう。
七十七銀行の前期(2024年3月期)は利益が大きく増進しました。経常利益と純利益はいずれも2ケタの増益です。
【七十七銀行の業績(連結、2024年3月期)】
・経常収益:1506億円(+23.3%)
・経常利益:442億円(+23.6%)
・純利益:298億円(+18.9%)
※()は前期比
※参考:連結粗利益853億円(+1.9%)、株式等関係損益143.83%(+161.5%)
※参考(単体):業務粗利益801億円(+1.5%)、実質業務純益311億円(+2.5%)、業務純益272億円(-18.3%)
出所:七十七銀行 決算説明会資料
業績をけん引したのは株式の売却益です。銀行本来の業務の利益を示す連結粗利益は、資金利益が伸びたものの、債券や外国為替の損失があり、前期比で微増にとどまっています。一方、株式等関連損益が大きく増加したことから、経常利益以降の段階利益を押し上げました。
資金利益は貸出金要因と有価証券要因のいずれも増加しました。貸出金は残高の積み増しと利回りの向上が増益につながっています。有価証券は残高を減らしたものの、利回りが大きく改善したことで利益を伸ばしました。
出所:七十七銀行 決算説明会資料より著者作成
今期(2025年3月期)の見通しは以下の通りです。資金利益の増加が続くこと、その他業務利益(債券や外国為替の損益などから構成)の改善が見込まれることから、経常利益と純利益は増益の計画です。
【七十七銀行の業績見通し(連結、2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:4485億円(+9.6%)
・純利益:330億円(+10.7%)
※()は前期比
※参考(単体):業務粗利益902億円(+12.6%)、実質業務純益416億円(+33.7%)、業務純益421億円(+54.8%)
出所:七十七銀行 決算説明会資料
計画通りなら、七十七銀行の純利益は4期連続で過去最高を更新することとなります。
出所:七十七銀行 有価証券報告書より著者作成還元方針を強化 「累進配当」と「自社株買い」を明記、配当性向35%へ
七十七銀行は2023年11月、株主還元方針を見直しました。変更内容を確認しておきましょう。
七十七銀行の還元方針は、変更前は「安定的な配当を継続」することを基本方針とし、配当性向は30%を目標としていました。変更後は「累進的配当」と「機動的な自己株式(自社株買い)」が明記されたほか、配当性向の目標は35%以上に引き上げられています(出所:七十七銀行 株主還元方針の見直しおよび ROE 目標の設定等に関するお知らせ)。
七十七銀行は前期(2024年3月期)までに3期連続で増配し、配当性向は30.4%に達しました。配当性向が従来の目標に達したことから、還元方針の見直しを実施したようです。
今期(2025年3月期)の1株あたり配当金は140円を計画しています。配当性向は31.4%に上昇する見込みです。2024年6月25日終値(4315円)で計算した配当利回りは3.24%となります。なお自社株買いの計画は公表されていません(2024年6月25日時点)。
出所:七十七銀行 決算短信より著者作成文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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