同僚の非情な仕打ちでドン底に陥った“子持ち様”を救った意外な人物とは!?
Finasee / 2024年7月16日 12時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
副島愛美(37歳)は、共働きで2人の子供を育てている。長男の優斗が病弱で、よく発熱することでたびたび会社を休まなければならなかった。そのため、愛美は社内で「子持ち様」と言われ、徐々に立場を失くしていく。
会社の重要な日に休まざるを得なくなり、いよいよ追い詰められた愛美は、とうとう会社のルールを破ってしまい、いよいよ会社に居づらくなってしまった。これ以上、仕事を続けられないと思った愛美は……。
●前編:「無断欠勤とは何事か!」円満両立めざす“子持ち様”が同僚の策略で陥った、まさかの“地獄”
もう限界…ついに辞職を決断した時、想定外の提案が!?愛美は、その日、隆弘に会社を辞めることになるかもしれないと相談した。優斗の状態がすぐに変わることはないだろうから、いったんは退職し、その後、優斗の身体がしっかりしてから、改めて仕事を始めるようにしたいと話した。それまでは、在宅でできる仕事を探してみようと思っていた。収入は減るが、その分はNISAに積み立てている資金を一時的にストップすることにした。隆弘も愛美との日々の話から、毎月のように欠勤しなければならないことが愛美に相当のプレッシャーになっていることがわかっていたので、愛美の判断を受け入れた。
週明けの始業前に工場長の稲山と会議室に入った時まで、愛美は会社を辞めることを考えていた。ところが、稲山は愛美と向き合ったとたんに「これは、相談なのだけど、今の部署を一時的に移って、新人の研修担当をしてもらえないだろうか?」と言い出した。戸惑う愛美に、「今度、第2工場を作ることになっているのだが、そこで20人を新規に採用する。その新人に、ミシンの使い方を1から教えてほしい。これは、信頼のおける人でないと頼めない。副島さんにぜひ担当してほしい」と真剣な表情で続けた。
愛美が「無断欠勤のため、何らかのペナルティを受けるのでは?」と問うと、稲山は、「お子さんのことは良く理解しているつもりだ。研修担当の部署であれば突然の休みということになっても困るようなことは少ない。もっとも、この仕事はずっと長くやってもらう仕事ではないが、とりあえず、向こう1年間、新人が十分に独り立ちできるまで研修から業務スタート後のサポートまでを引き受けてほしいんだ。1年たって、お子さんの状態が変わらないようであれば、その時点で改めて相談しよう」と言う。
“子持ち様”の本当の理解者は…稲山が、そのような態度になった理由について、愛美が聞き出したところによると、愛美の欠勤について、サブ・リーダーの吉田美代やグループのメンバーに話を聞いたところ、グループで愛美のことを悪く言う人間は一人もいなかったという。むしろ、吉田は毎日丁寧に作業手順についてノートをつけてくれていて頭が下がるというし、グループのメンバーも愛美からサポートしてもらっていて助かっているという。ただ、愛美が休むと愛美と同僚の沙知が先輩面をしていろいろと指図することが嫌で仕方がないという。沙知が絡んでくると、作業の指示はいい加減で、サポート作業も雑で業務が遅れるのだそうだ。
さらに、愛美が子供のことで欠勤することを沙知は「子供を使ったズル休み」、「子持ち様」等と言い敵視するような態度をとっていて、美代たちは沙知に不快感を持っていた。「子供を持つ母親になっても自分の技術を活かして働きたいと思っている彼女らにとっては、副島さんがロールモデルになっているようだ。副島さんが働きやすい職場にしてほしいといわれたよ」と稲山は言った。
人事総務部としても、女性に働きやすい職場づくりというのは大きなテーマになっていて、愛美に提示した処遇は、そもそも第2工場建設が決まった時から用意されていたポストだった。そこにちょうど愛美がはまったということらしい。
投資を中断することなく続けられ、精神的にも安定愛美は、働き続けることになった。自分が頼りにされ、メンバーから必要とされていることを知って、愛美の職場に対する感じ方が大きく変わった。研修担当にもやりがいを感じていた。しかも、第2工場は愛美の自宅に近く、通勤時間が30分ほど短くなった。行き帰りの30分の短縮は、今まで時間に追われるように生活していた愛美の日常を劇的に変えた。
その新しい仕事についてから、不思議と優斗が発熱することがなくなっていった。いったい、あの追い詰められたような日々は何だったんだろうと、愛美は当時を振り返ってみたが、何が自分を追い詰めていたのかよくわからなかった。NISAの積み立て投資は継続することができたが、株価がグングン上がって目に見えて資産が積みあがっていった。積み立てを中断しなくてよかったと思った。そして、元気に保育園に通う優斗を見ているだけで身体の奥底から喜びが吹き上げてくるようだった。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
風間 浩/ライター/記者
かつて、兜倶楽部等の金融記者クラブに所属し、日本のバブルとバブルの崩壊、銀行窓販の開始(日本版金融ビッグバン)など金融市場と金融機関を取材してきた一介の記者。1980年代から現在に至るまで約40年にわたって金融市場の変化とともに国内金融機関や金融サービスの変化を取材し続けている。
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