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再雇用終了を前に “路頭に迷う危機”を感じた63歳男性…お金の不安を解消して見えた「未来への希望」

Finasee / 2024年7月18日 17時0分

再雇用終了を前に “路頭に迷う危機”を感じた63歳男性…お金の不安を解消して見えた「未来への希望」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

小山内良一さん(仮名)は建築関係の中小企業で働く63歳の会社員です。10歳年下でパートの妻と2人暮らし、お子さんはいません。3年前に定年を迎え、以降は再雇用で働いています。65歳の誕生日に再雇用の期限を迎えますが、老後の生活に不安を抱えていました。

中でも大きな不安要素は、貯蓄は300万円台で、将来受け取る年金は月に12万円程度ということ。加えて賃貸暮らしのため、家賃の負担も気になりました。

そこで「このままではまずい」とファイナンシャルプランナー(FP)の川出さんに相談することにしました。

●前編:【老後資金370万円、将来の年金12万円、賃貸暮らしの“三重苦”…63歳会社員を絶望させる「厳しい現実」】

再雇用終了を前に直面したお金の課題

私は定年後、再雇用で働く会社員です。会社の再雇用制度は65歳までで、2年後には年金生活に突入することになります。

心配なのは、老後の貯えが370万円しかなく、かつ、厚生年金の加入期間が短いため、65歳から受け取れる年金も月額12万円にしかならないことでした。

わが家は賃貸暮らしです。低収入でとてもマイホームを買う余裕がなかったのです。

2LDKで9万円というアパートの家賃は、このご時世、都内では破格に安いと思います。しかし、年金暮らしとなれば話は別です。妻のパート代を合わせても月収は18万円程度。その半分を家賃に持っていかれたら、とても暮らしていけません。

ならばもっと家賃の安いところに引っ越せばいいじゃないかと思うかもしれませんが、60歳を過ぎると貸し渋りが増えると聞いたことがあります。

再雇用が終わるまで2年を切り、にっちもさっちも行かなくなった私たち夫婦がすがった相手が、ファイナンシャルプランナー(FP)の川出さんでした。

川出さんが教えてくれた年金へのアドバイスとは

川出さんはまず、働ける体と働く意欲があれば求人はあることを示し、私たちに希望を与えてくれました。続いて65歳からの年金についても、全く予想もしていなかった、しかし大変有用なアドバイスをくれたのです。

「小山内さんは年金が月額12万円とおっしゃっていましたが、実はもっともらえます。加給年金という年金版の家族手当のようなものがあり、奥さまが満65歳になってご自分の年金を受給するまで約10年間支給されます。金額は年間41万円弱です」

「調べてみたら、小山内さんには旧制度の厚生年金基金から受け取れる年金も年間15万円ほどあるようです」

「ただし、退職するとご自分や奥さまの健康保険や介護保険の保険料を自分で納めなければなりません。奥さまが60歳になるまでは、奥さまの国民年金保険料の支払いも必要です。前者が年間で20万円ほど、後者も20万円ほどになります」

「先ほどの加給年金と厚生年金基金の合計額からこの分を差し引くと、年間で16万円、月額に換算すると1万3333円の上乗せです。奥さまのパート代も合わせれば、退職後も月額20万円弱の収入は確保できます」

川出さんの説明はまさに立て板に水でした。かみ砕いた内容で、年金制度に詳しいとは言えない私や妻にもよく理解できました。

私たちにとってはうれしいサプライズです。そう伝えると、川出さんは「加給年金や厚生年金基金のことは、ねんきん定期便に書いてありませんからね」と笑顔を見せました。

その上で、川出さんはこんな提案をしてくれました。

「小山内さんは厚生年金の加入期間が短いので、年金額の大半は国民年金の基礎年金によるものです。そこで、65歳からは厚生年金だけ受け取って、基礎年金は先送り、つまり繰り下げ受給にすることをお勧めしたいと思っています」

「厚生年金を繰り下げると、先ほどお話しした加給年金が受け取れなくなります。でも、基礎年金だけ繰り下げる分には問題ありません」

「現時点で小山内さんが65歳から受け取る基礎年金は7万円弱。これを70歳から受け取り始めると、金額は10万円近くまでアップします。繰り下げ受給は利回り換算すると8.4%にもなるんです。インフレにも負けませんよ」

繰り下げ受給についてもよく知らなかったので、この指摘には驚きました。さらに、川出さんは、繰り下げ受給を前提に、私の働き方についても具体的なプランを提示してくれたのです。

働き方に助言をもらい、将来への不安が一気に解消される

「小山内さんの現在の世帯収入は約25万円。65歳以降に基礎年金を繰り下げても小山内さんがアルバイトなどで13万円弱稼ぐことができれば、今と変わらない収入がキープできます。東京都の最低時給は現時点で1113円ですから、税金等を考慮しなければ月に114時間弱、週4日7時間程度の勤務が目安になります。13万円を超えて働いた分は貯蓄に回していけば、それが老後の備えにもなります」

川出さんの提案は十分納得のいくものでした。私自身、週休3日なら70歳くらいまで働いていけるように思いました。

「小山内さんは優秀な職人さんとお見受けします。手先の器用さを活かしてものづくりの現場で働くのもいいかもしれませんね。一方で、こうしてお話ししているととても人当たりのいい方なので、接客業も向いているように思います」

川出さんからそんなふうに言われると悪い気はしません。“第二の人生の仕事”を探せば何とかなると思うと、だいぶ心が軽くなりました。

川出さんは、妻にもこんな助言をしてくれました。

「今はご主人の扶養となる年収の範囲内で働いていらっしゃいますが、いずれ、社会保険はアルバイトやパートの方も全員加入になっていきます。奥さまはまだお若いですし、ご負担にならない程度に働く時間を増やして、社会保険に加入された方がいいと思います」

「厚生年金に加入して働けば、将来奥さまが受け取る年金額が増えていきます。それが小山内家の家計の安泰にもつながります。先ほどお話しした5年分の国民年金保険料合計100万円の支払いもなくなりますから、お得ですよ」

川出さんからそう言われ、妻もその気になったようです。川出さんはそんな妻に、女性の働き方と社会保険の関係を解説したサイトを幾つか紹介してくれました。

小山内さんのおかげで、平均貯蓄に関する誤解も解けました。「60歳代の平均貯蓄が2000万円なんて聞くと、うちは一体何してたんだろうと思いますよ」とこぼすと、「お気落としなく。実は貯蓄額は二極化していて、一部の富裕層が平均額を引き上げているだけなんです」とからくりを教えてくれたのです。

「一方で、60代の5世帯に1世帯は貯蓄がゼロです。小山内さんはきちんと家計管理をされ、しっかり貯蓄をしてこられたのですから自信を持ってください」

川出さんの言葉を聞いているうちに、何とかなるかもと思えてきました。経験に裏打ちされた高度な課題解決力と、人を乗せるのが上手なキャラクターのなせる業でしょう。私たちは本当に、いいタイミングでいい専門家に出会えたものだと思います。このご縁は、これからの人生においてもずっと大切にしていくつもりです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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