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横浜銀行のコンコルディアFG、PBRが0.3倍から0.8倍に改善 カギとなる「RORA」とは

Finasee / 2024年7月11日 11時0分

横浜銀行のコンコルディアFG、PBRが0.3倍から0.8倍に改善 カギとなる「RORA」とは

Finasee(フィナシー)

日本に「金利ある世界」が到来しています。10年国債利回りは2024年5月に1%に達しました。1%台は2013年5月以来およそ11年ぶりです。

金利の上昇は一般に企業の利益を圧迫します。しかし銀行にとってはプラス要因です。金利が上昇すると利ざやの拡大が見込まれるためです。銀行株は近年、業績改善の期待から買われる展開が続いています。

出所:Investing.comより著者作成

ひときわ高い利ざやを持つのが、横浜銀行など3つの銀行を擁するコンコルディア・フィナンシャルグループです。3行合算の国内預貸金利ざやは0.9%を超え、地銀の平均を大きく上回っています。

【国内預貸金利ざや】
・コンコルディアFG:0.958%(3行合算、2023年度下期)
・地銀平均:0.24%(62行単体、2023年度)
※3行合算:横浜銀行、東日本銀行、神奈川銀行

出所:コンコルディアFG 決算説明会資料
出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算

今回はコンコルディアFGに焦点を当ててみましょう。同社の概要と業績を紹介します。またコンコルディアFGが取り組むPBRの改善策も解説します。

神奈川・東京の地方銀行 恵まれた地域ポテンシャルが強み

コンコルディアFGは神奈川と東京を地盤に持つ金融グループです。横浜銀行を中核に、第二地銀の東日本銀行(東京都)と神奈川銀行を子会社に持ちます。社名のコンコルディアとは、調和や協調を意味するラテン語です。

コンコルディアFGの強みはマーケットの大きさです。地盤である神奈川・東京は人口と企業が集中しており、経済規模は主要国に匹敵します。例えば両者の合計GDP(県内総生産)はメキシコを上回り、スペインに次ぐ水準です。

【主要国と神奈川・東京のGDP(県内総生産)の比較】
・オーストラリア:1兆6578億ドル
・スペイン:1兆4666億ドル
・東京+神奈川:1兆3258億ドル
・メキシコ:1兆3131億ドル
・インドネシア:1兆1865億ドル
※IMF “World Economic Outlook Database”, April 2024 神奈川県「県民経済計算」(2021年度)、東京都「都民経済計算」(2021年度)。

出所:コンコルディアFG 決算説明会資料

肥沃なマーケットを持つコンコルディアFGはトップクラスの規模を持ちます。特にグループ中核の横浜銀行は貸出金、預金で地銀首位です(単体、2024年3月期)。

【横浜銀行のバランスシート(単体、2024年3月期)】
・総資産:21兆8052億円(地銀2位)
・貸出金:14兆6130億円(同1位)
・預金:17兆9717億円(同1位)
・純資産:1兆0509億円(同3位)

出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算

株価も順調です。多くの銀行株と同様、コンコルディアFGの株式も右肩上がりに上昇しています。

出所:Investing.comより著者作成本業好調も前期は債券の損失で減益 今期は大幅な増益を計画

足元の業績を確認しておきましょう。

コンコルディアFGは前期(2024年3月期)に収益が伸びた一方、経常利益は減少しています。ただし特別利益として負ののれん発生益156億円が生じたことから、純利益ベースでは大きな増益となりました。負ののれんは神奈川銀行の完全子会社化(2023年6月)に伴い生じたものです。

【コンコルディアFGの業績(2024年3月期)】
・経常収益:3583億円(+14.4%)
・経常利益:770億円(-3.5%)
・純利益:669億円(+19.1%)
※()は前期比
※参考(3行合算):業務粗利益2052億円(-1.5%)、実質業務純益798億円(-6.4%)、業務純益823億円(-1.3%)

出所:コンコルディアFG 決算短信

経常利益の減少は債券の損失が影響しています。

銀行本来の業務の収支を示す業務粗利益(3行合算)は減少しました。外債などの損切りが響き、市場部門損益が90億円減少し77億円の赤字になったことが主な原因です。貸出金の増進などから資金利益は52億円増加しましたが、債券の損失で打ち消されています。

なお、債券の売却損益などで構成される「その他業務利益」を除いたコア業務純益(投信解約損益を除く)は9.2%増加しました。債券のロスカットという一時的な要因を除けば、本業はおおむね好調だったといえるでしょう。

今期(2025年3月期)は経常利益、純利益のいずれも増益の計画です。前期に77億円の赤字だった市場部門損益(3行合算)は、196億円の黒字と大幅な改善を見込んでいます。なお負ののれん発生益がはく落するため、経常利益と比べると純利益の増加は小さくなっています。

【コンコルディアFGの業績見通し(2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:1090億円(+41.5%)
・純利益:750億円(+12.0%) 
※()は前期比
※参考(3行合算):業務粗利益2384億円(+16.2%)、実質業務純益1112億円(+39.3%)

出所:コンコルディアFG 決算短信

PBR改善へ取り組みを開始 カギとなる「RORA」とは?

コンコルディアFGは2023年5月、決算説明会でPBRの改善を打ち出しました。その対策の一つとして挙げられたのがRORAの改善です。

RORAとはリターン・オン・リスクアセットの略語で、貸出金といったリスク資産に対する利益率を表します。コンコルディアFGは、より高い利回りが期待できる融資を増やすことで利益率を改善し、PBRの改善を目指しています。

コンコルディアFGの投資家説明会向け資料によると、横浜銀行の資産別RORAは住宅ローンに次いでLBO(※)ローンが高いようです。LBOローンはストラクチャードファイナンス(※)の代表的な資産であり、コンコルディアFGは着実にその残高を増やしてきました。

※LBO(レバレッジド・バイアウト):負債(借入金など)を利用した買収。融資は一般に、買収企業の信用力ではなく被買収企業の価値に基づいて行われる。

※ストラクチャードファイナンス:借り手企業の信用力ではなく、借入金の使途となる事業や資産の価値などに基づいて行われる融資の総称。仕組み金融とも呼ばれる。

 

出所:コンコルディアFG 決算説明会資料

コンコルディアFGの1株あたり純資産は1098.4円です(2024年3月期)。2024年7月3日終値(957.1円)で計算したPBRは0.87倍となります。2019年度末は0.35倍程度だったことから、確かにPBRは改善が進んでいるようです。

コンコルディアFGは今期(2025年3月期)の計画を達成すると、株主資本利益率が同社の認識する株主資本コスト6%~9%に達します。株主が期待する利益を達成できれば、PBRの改善はさらに進むかもしれません。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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