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【NISA】「投資信託の分配金は非課税だから気にしなくていい」という人は知らない…非課税枠に関わる“意外な盲点”

Finasee / 2024年7月10日 11時0分

【NISA】「投資信託の分配金は非課税だから気にしなくていい」という人は知らない…非課税枠に関わる“意外な盲点”

Finasee(フィナシー)

1万口あたり9000円もの分配金を払うファンドも…!

去る6月28日、「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」(野村アセットマネジメント)が決算を迎え、1万口あたり9000円という、過去に例を見ない額の分配金の支払いを実施した。当ファンドは、足元の米国株式市場をけん引する米エヌビディアを全体の約3割組み入れている。その他の組み入れ銘柄も生成AIブームの後押しにより大幅に上昇した結果、基準価額は昨年12月に10万円の大台を突破し、年初来では約80%、過去1年間では実に約2倍と急騰していた。

そもそも分配金とは、投資信託が決算を迎えた後、受益者(投資家)が保有する口数に応じて支払われるお金を指す。決算時に分配をするか否かの判断は、あくまでも運用会社に委ねられている。このため、分配金の支払いの有無や、実際にいくら支払われるかというのは、決算を迎えた後でないと分からない。

今回の「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」のように、利益相当分の分配を気前よく行うケースもあれば、前回の決算から基準価額が上昇していてもあえて分配を行わず、今後の運用のために内部留保するケースもある。つまり、分配金の支払い方も含めてファンドの運用戦略であり、どちらが良い、悪いという話ではない。

さて、ここで「NISAなら分配金が支払われても非課税だから気にする必要はないのでは?」と思った方は少し注意してほしい。

確かに、NISA口座で保有する投資信託の分配金は非課税だが、NISAの非課税枠を賢く使いこなす上では、投資信託の分配金のメカニズムと、その受け取り方(分配金コース)について理解を深めた方が良い。

長期投資では「分配金は再投資」が鉄則だが…

あまり意識したことがないかもしれないが、投資信託を購入したり、積立を設定したりする際には、分配金が支払われたときを想定し、その受け取り方も併せて選択する必要がある。具体的には、「受取型」と「再投資型」の2つから選択する。

「受取型」を選ぶと、文字通り、支払われた分配金を現金として受け取ることができる。対して、「再投資型」は、分配金を現金として受け取らず、自動的に同じ投資信託を購入するという方法である。

分配金を現金として都度受け取ると、その分だけ基準価額は下がり、運用効率も低下する。したがって、中長期の資産形成を目的としている場合は、原則、「再投資」を選択すべきである。

ただし、主に成長投資枠で、年間の非課税上限額(240万円)ギリギリまで積立設定をしていたり、成長投資枠で既に非課税枠を満額利用していたりする場合は少し注意が必要だ。「再投資型」で分配金が支払われ、分配金相当額が買い付けられる際、NISAの非課税枠を利用することになる。つまり、自分の意図しないタイミングで非課税枠が利用「されてしまう」可能性がある。その年の非課税枠を満額利用していた場合、再投資分の買い付けは課税口座で行われる。

「長期投資なら分配金は再投資」が鉄則だが、成長投資枠で非課税枠をすべて利用する積立設定を行っている場合は、意図しない非課税枠の利用を避けるために「受取型」を選択するという方法もある。

分配金の将来予測はできないが、過去の分配実績を見れば、利益が出た時にどの程度分配を行うかの傾向をつかむことができる。成長投資枠で保有する投資信託が分配を行う可能性が高いと思われる場合は、一定程度の再投資が発生しても良いように、あらかじめ成長投資枠に多少の余裕を持たせて利用した方が良い。

NISAでは完全な「無分配」投信は選べない

では、分配金を全く払わない「無分配」の投資信託というのは存在するのか。

完全な「無分配」型の投資信託というのは、事実上、単位型投資信託(運用期間があらかじめ決められていて、設定前の募集期間しか購入ができない投資信託)の一部でしか認められていない。したがって、信託期間が無期限でかつ無分配の投資信託というのは基本的に存在しない。

例えば、積立で人気の「eMAXIS Slim」シリーズ(三菱UFJアセットマネジメント)の目論見書を確認すると、「収益分配」の項目には以下のような記載がある。

年1回の決算時に分配金額を決定します。(分配金額の決定にあたっては、信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針とします。)
販売会社との契約によっては、収益分配金の再投資が可能です。

分配方針について「無分配」を明言せず、あくまでも「分配を抑制する」という表現にとどめているのは、当シリーズが信託期間を無期限としているためである。

つみたて投資枠の対象商品は総じて分配を行うものが少ないが、「日経平均高配当利回り株ファンド」(三菱UFJアセットマネジメント)や、「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」(農林中金全共連アセットマネジメント)のように、年1~2回の決算時に着実に分配を行うファンドもある。なお、両ファンドの信託期間はいずれも無期限である。

繰り返しになるが、分配方針は運用方針の一環であり、分配の有無で投資信託そのものの優劣を語ることはできない。過去の分配実績から見て、今後も分配が支払われる可能性が高いファンドを保有している場合は、受け取り方法を見直したり、余裕を持った積立設定を行ったりするなどの工夫をした方が良いだろう。

篠田 尚子/楽天証券資産づくり研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』『FP&投資信託のプロが教える新NISA完全ガイド』(ともにSBクリエイティブ)。

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