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「貯金がなくなったら自殺する」お金でしか問題を解決できない両親の自業自得な末路

Finasee / 2024年7月12日 13時0分

「貯金がなくなったら自殺する」お金でしか問題を解決できない両親の自業自得な末路

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

北海道在住の森山吹子さん(仮名・40代)は、ずっと両親に振り回された人生を歩んできた。

祖母と母親は長男ばかりを大切にし、父は男尊女卑。兄のまねをし、母親に抱きつけば、「気持ち悪い」と言われるなど、十分な愛情を受けてこなかった。それにもかかわらず、70代後半になった両親の世話をけなげに続けている。

一方で、親はいくつになっても勝手気まま。認知症の疑いがある母親に耐えきれなくなった父親は1人で入院。森山さんが母親を説得し、高齢者住宅に入れると、すかさず父親は退院し、自宅でひとり暮らしを満喫していた。

●前編:【母さんといることが限界だ」と涙の訴え…定年退職した父が“夫婦別居”を望んだ「切実な理由」】

老後破綻へのカウントダウン

施設に入所しても母親は、森山さんの頭を悩ませ続けていた。なぜなら両親の貯金が、たった250万円になっていたからだ。

「両親の年金額は、ひと月あたり2人で合計22万円。母の施設代や医療費は、全部でひと月16万円程かかります。両親があと何年生きるかわかりませんが、あと2〜3年でどちらかが亡くならなければ、両親は老後破綻すると思います」

父親は役職に就き60歳まで。母親は52歳までバリバリ働き、それぞれ退職金もあったはず。それはどこへ消えたのか。

その答えのヒントは森山さんの1歳上の兄にあった。兄は大学受験に失敗して専門学校に行き、卒業後は父親のコネで就職。しかし続かず、38歳のときに突然「社労士になりたい」と言い出し、親のお金で再び専門学校に行き始め、晴れて社労士になると、上京。4年間は平穏に働いていたが、別の事務所に移った途端、うつ病を発症した。

「詳しくは聞いていませんが、兄は仕事で大きなミスをしたらしく、東京から逃げるように退職して北海道に戻ってから、働いていた事務所に訴えられたみたいです。うつ病なので戦うこともできず、示談金を払ったらしいのですが、それも全額両親が出しています。両親に貯金がないのは、母が定年後も生活レベルを落とせずに散財してきたせいと、兄に使ったせいだと思います」

その後も母親は、兄にはダイソンの最新機種を買い与え、森山さんには使い古した掃除機を売りつけるなど“差”を見せつけ続けた。

施設に入った後も母親は、「食堂で食べるのが嫌だ」とワガママ放題。ひと月あたり8000円を払って、特別に居室に配膳してもらっている。それなのに施設の食事にほとんど手を付けない日も少なくないため、理由を調べたところ、週に1回来るヘルパーさんにお金を渡して、食べたいものを買ってきてもらっているということが発覚。ある月の購入額は約16000円。内容は、お総菜や冷凍食品、パンやカップラーメン、デザートなど。中でもコーヒーゼリーとプリンとヨーグルトは、ひと月に合計71個も購入していた。

「昔から買い物好きな人でしたが、思考の低下による同じ物の大量買い。認知症トラブルの典型です。施設の食事をなしにすれば4万5000円減になりますが、そんな単純な話ではありません。私が両親の介護のキーパーソンなので、請求書は私に届くのですが、正直なところ、目を通したくなくなります……」

俺様な父親

父親は人工透析こそ必要だが、うつ病は寛解し、認知症もなく、十分1人で暮らせていた。とはいえ、父親も問題がないわけではない。

2023年6月の中旬から人工透析になった父親は、少しでも出費を減らそうと、ありとあらゆる助成制度を調べ尽くし、手続きは娘の森山さんに丸投げしてくる。

「これまで、身体障害者手帳の引き取り、障がい者交通費助成、特定疾病療養受療証、自立支援医療制度など、何度も役所に足を運び、手続きさせられました。『手間賃は払うから』と言うけれど、口だけです。健全な親子関係なら親孝行になるのでしょうけれど、何せ男尊女卑の毒父です。手続きすれば父には金銭的な恩恵がありますが、私にとっては精神的苦痛と時間の搾取。イライラしかありません」

現在父親が1人で暮らす実家の隣には、母方の親戚が住んでいる。父親はずうずうしくも、「月に5000円払うから、週3回、透析の送迎をしてほしい」と頼んだのだと言う。

「タクシーだったら、初乗り670円×3回×4週=8040円かかるところを、たった5000円で妻の甥夫妻に頼むなんて、『あなた何様?』とあきれました。それを父に指摘すると、『気持ちだからいいべや!』と言って怒鳴られました……」

森山さんによると、現在両親にかかる費用はひと月22万円の年金では賄いきれず、5万3000円/月のマイナスだという。母親にかかった費用は、父親を介して両親の年金や貯金から出してもらっているが、請求する度に父親は「貯金がなくなったら自殺する」とほのめかしてくる。

毒親の連鎖

森山さんが育った環境については、夫にも子どもたちにも話してあり、理解を示してくれている。長男は「伯父さんがいるのになんで母さんばっかり」と言って憤慨し、次男は放課後デイサービスの先生たちに「うちの母さんは、おじいちゃんおばあちゃんに振り回されて大変なんだ」とエピソード付きで話しているという。

母親の施設へ面会に行くときは、森山さんを守るために、夫か長男か次男の誰かがついてきてくれる。

「本当に、今思えば母にとっての子どもは完全に所有物で、私なんてマネージャーか駒でしたね」

まさに兄は愛玩子、森山さんは搾取子の典型だ。都合の良いように使われてきた森山さんは、社会人になってから、子どもの頃に満たされなかった心を埋めるように、買い物依存や対人依存に走ってしまった。しかし、苦しみながらも自分の人生を生きるために足掻(あが)き続け、夫とぶつかりながらも、居心地の良い家庭を築くに至った。

「私が買い物依存や対人依存に陥り、借金してしまうほどになってしまったのは、母の影響が大きかったと思っています。全てお金で解決させられてきたんです。誕生日やクリスマスのプレゼントはお金でした。中学からは母の代わりに家事をして2万円。高校生の頃はお弁当代に毎日1000円もらっていました。母との行動は全てタクシー移動でしたし、買い物はデパート。振り返ると私自身も、お金で解決する癖や贅沢が染みついていたのだと思います」

誕生日やクリスマスのプレゼントもお弁当もお金ということは、合理的なようで実はとても残酷だ。「お金が1番でしょ」と言って思考停止し、親子の対話がないことを意味している。祖母も贅沢ざんまいな人だったようなので、もしかしたら母親はお金を渡すことしか親としての務めを果たす方法を知らなかったのかもしれない。

祖父も父親も家庭に目もくれず、自分優先で好きなように生きていた。もしかしたら母親も祖母も、本当にやりたかったことを諦めて、たった1人で家事や育児に向き合うつらさや苦悩に耐えきれず、贅沢に走ったのかもしれない。もしそうでなかったとしても、家庭を顧みず、妻を放置していた父親と祖父の罪は重い。特に森山さんの父親は、自分だけさっさと入院して、手に負えない妻を娘に押し付けて逃げたが、親としてそれで良いはずがない。

「実は最悪、父と母を離婚させて母を生活保護にする案も出ています。そうすれば、父親の貯金も、私の家庭も守れます。実家を売って、そのお金で父を施設に入れる話もあります」

夫は、子どもたちが幼い頃や、自分の両親の世話などを森山さん1人に丸投げしてしまっていた頃の罪滅ぼしのため、現在は家事を積極的にやってくれるようになった。

森山さんの問題は森山さんが解決すべきだが、両親の問題は両親が解決すべきだ。森山さんには、自身や現在の家族の幸せだけを追求していってほしい。

旦木 瑞穂/ジャーナリスト・グラフィックデザイナー

愛知県出身。アートディレクターなどを経て2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、終活・介護など、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。著書に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社)がある。

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