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「財産を渡すべき?」世話になった叔父との“相続トラブル”に悩まされる男性に、行政書士の回答は…

Finasee / 2024年7月23日 11時0分

「財産を渡すべき?」世話になった叔父との“相続トラブル”に悩まされる男性に、行政書士の回答は…

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

吉岡さんは長年父親の崇さんと2人で暮らしてきた。だが、昔から病気がちであった崇さんは入退院を繰り返しており、大小さまざまな病気を抱えていた。

そのため家は貧しく、崇さんの兄、吉岡さんから見ると叔父にあたる遼さんから支援を受けることも多かった。生活費や病院の治療費といった金銭的な支援はもちろん、幼少期は崇さんに代わって面倒を見てもらうことも多かったという。まさに吉岡さんからすれば第2の父親とも言えるような存在だ。

しかし、吉岡さんと叔父の遼さんとの関係は、父である崇さんの死をきっかけに問題が発生する。「俺にも相続財産を得る権利があるはずだ。財産を少しは分けてもらいたい」。遼さんからの突然の要求に吉岡さんは困惑してしまった。

●前編:【「俺は長年お前たちにお金を出してきた」父親を亡くして間もない男性を困惑させた叔父の「無慈悲な発言」】

吉岡さんは相続財産を渡す必要はない

吉岡さんから上記のような相談があったのはちょうど昨年だ。私と吉岡さんは学生時代の友人だ。私が法的部分に多少なりとも詳しいということを彼は知っており、私に相談してきたわけだ。

吉岡さんは重い扉を開くように小一時間かけてゆっくりと言葉を紡ぐ。一通り話をしたところで「叔父さんに相続財産を渡すべきなのか?」と私へ問う。

確かに一連の流れを読み解いていくと吉岡さんの悩みには一定の理解ができる。私は自身の経験を踏まえ遺留分と寄与分についてそれぞれ説明をしたうえで、「法律上相続財産を渡す必要はない」と結論付けて回答した。

「遺留分」とはどのような制度か

まずは遼さんの主張する遺留分というものがどのような内容であるのか確認してみよう。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた最低限の相続分である。言い換えれば、亡くなった人の兄弟姉妹以外の相続人であれば誰でも最低限は相続財産を受け取る権利があるということだ。

遺言書によってすべての相続財産と特定の相続人に相続させようとする例は少なくない。しかし、いくら故人の意思とはいえそれを貫いてしまうと平等を欠くこともある。加えて遺族のその後の生活に影響することもある。そういった諸問題を是正するために存在しているのが遺留分というわけだ。

だが、遺留分を有するのは亡くなった兄弟姉妹の相続人以外だ。叔父たる遼さんは亡くなった父、崇さんの兄である。先に述べたように兄弟姉妹に遺留分は存在しない。つまり、遼さんは遺留分を受け取ることはできないのだ。

なお、似た制度に代襲相続というものがあるが、結論から言ってしまえば遼さんは代襲相続をすることができない。代襲相続とは、本来相続人となるべき方がすでに亡くなっていたり、相続権を失っていたりするような場合に、その者の子や孫が変わって相続するというものだ。

その点、遼さんは本来の相続人である。代襲相続はそもそも無関係だ。

遼さんの支援は寄与分が認められるわけではない

遺留分は受けられないにせよ、遼さんには寄与分によって相続財産を請求するだけの理由があるように思える。寄与分とは亡くなった方の財産の維持増加に努めた相続人に多めに財産を相続させる制度だ。

例えば、長年親の介護をしてきた子とそうでない子が相続人間に存在した場合、介護をしてきた子においては介護をしてこなかった子よりも多めに財産が相続できるというものだ。

遼さんは崇さんに代わって時にはお金を出し、時には身の回りの世話をしてきた。一般的に叔父から甥(おい)に対してここまでするケースは多くないだろう。まさに遼さんの行為は特別な寄与と言えるのかもしれない。

ただ、この寄与分について今回相続人とならない遼さんには認められない。寄与分はあくまでも相続人に認められるべきものであるからだ。

情報化に伴い相続は複雑化している

その後吉岡さんは私からの説明をもとに遼さんと話をしたようだ。結果としては、法律の定め通り、遼さんは遺留分も寄与分も認められないことに納得され、吉岡さんは無事財産を相続することができた。

情報社会であり多くの人がさまざまな情報に触れられることになった昨今、相続問題も複雑化している。少し前なら「ほんとにこんなことあるの?」と思えたような相続問題でも今や身近で起きるようになっている。相続問題においてその原因の一端を担っているのが今回紹介した遺留分や寄与分の存在でもある。

遺留分や寄与分はテレビや新聞、雑誌などのメディアではあたかも親族なら誰でも相続をできる可能性があったり、相続財産が増える可能性があるなどある意味では過大にうたわれていたりすることも珍しくはない。

情報化社会となっている今だからこそ、問題となりやすいだろう相続のルールについては改めて学んでおきたいところだ。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。

柘植 輝/行政書士・FP

行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。

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