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アドバンテスト、前期は50%減益と苦戦も株価6倍・PBR 11倍になった理由

Finasee / 2024年7月16日 11時0分

アドバンテスト、前期は50%減益と苦戦も株価6倍・PBR 11倍になった理由

Finasee(フィナシー)

AIブームから株式市場では半導体関連の銘柄が話題です。製造装置の東京エレクトロンやディスコなどがテーマの代表格ですが、検査装置を手掛けるアドバンテストにも資金が集まっています。アドバンテストの株価は2024年7月5日までの5年間で6倍に上昇しました。

【アドバンテストの業績】

  売上高    純利益     2023年3月期 5602億円 1304億円  2024年3月期 4865億円 623億円  2025年3月期(予想) 5250億円 670億円

※2025年3月期(予想)は2024年3月期時点における同社の予想

出所:アドバンテスト 決算短信

 

出所:Investing.comより著者作成

アドバンテストは資本収益性と市場評価の高さが認められ「JPXプライム150指数」に選ばれています。同指数は「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」をコンセプトに2023年7月から算出が開始されました。

アドバンテストにはどのような魅力があるのでしょうか。同社の事業内容から探ってみましょう。また悪化した前期(2024年3月期)の業績と今期の見通しも紹介します。

半導体向けテスト装置で高シェア 株式市場はPBR 11倍の好評価

アドバンテストは半導体検査装置の大手です。半導体デバイスは製造過程でテストを繰り返しますが、アドバンテストはそのテスト装置を製造・販売しています。

アドバンテストには3つの事業セグメントがあります。中核は「半導体・部品テストシステム事業部門」で、メモリ半導体用テスト装置と非メモリ半導体向けのテスト装置であるSoC半導体用テスト装置で主に構成されています。アドバンテストのシェアは高く、いずれも世界市場の過半を握っているとみられます。

【アドバンテストの世界市場シェア】
・メモリテスタ:56%
・SoCテスタ:59%
※市場規模:メモリテスタ11億ドル、SoCテスタ33億ドル

出所:アドバンテスト 決算説明会資料

「メカトロニクス関連事業」はテスト装置の周辺機器とナノテクノロジー関連製品で構成されます。テスト装置の周辺機器は半導体デバイスの搬送や仕分けなどを担うテスト・ハンドラなど、ナノテクノロジー関連製品には走査型電子顕微鏡を応用した測定装置などがあります。

「サービス他部門」は、上記2事業に関連した総合的なサービスを行う事業です。装置の保守サービスや消耗品の販売、装置リース事業などで構成されています。

【セグメント業績(2024年3月期)】

  売上高    セグメント利益   半導体・部品テストシステム 3315億円 919億円  メカトロニクス 527億円 92億円  サービス他 1023億円 -28億円

※サービス他にはのれんの減損損失90億円および受取和解金等の利益32億円を含む

出所:アドバンテスト 決算短信

アドバンテストは大きく成長してきた企業です。売上高は2024年3月期までの10期で4.3倍に増加しました。これは毎年15.8%ずつ成長したことになります。2023年3月期は売上高、純利益とも過去最高を記録しました。

出所:アドバンテスト 決算短信より著者作成

強く成長したアドバンテストは株式市場で高い評価を集めています。足元でPBRは11倍、PERは73倍に達しています。高いバリュエーションから、投資家は今後も高成長が続くと期待しているようです。

【アドバンテストのPBRとPER(2024年7月5日終値)】
・株価:6631円
・PBR(実績):11.36倍
・PER(予想):73.08倍
※PBRは2024年3月期実績(株主持分ベース:4312億円)、PERは2025年3月期予想(純利益ベース:670億円)
※1株あたりの株主持分および純利益は発行済株式7億6614万1256株から自己株式2772万9600株を控除して算出

出所:アドバンテスト 決算短信

前期は減収で利益半減 半導体市場の縮小が痛手

高い成長率を誇るアドバンテストですが、前期(2024年3月期)は苦戦しました。売上高が大きく減少し、各段階利益は半減しています。

【アドバンテストの業績(2024年3月期)】
・売上高:4865億円(-13.2%)
・営業利益:816億円(-51.3%)
・当期利益:623億円(-52.2%)
・純利益:623億円(-52.2%)

出所:アドバンテスト 決算短信

苦戦の背景には半導体市場の停滞があります。

電子情報技術産業協会によると、2023年の半導体市場は縮小しました。市場の8割を占めるIC(集積回路)も、メモリを中心に大きく規模を減らしています。

【世界のIC 製品別の市場規模(2023年)】
・アナログ:812億ドル(-8.7%)
・マイクロ:763億ドル(-3.5%)
・ロジック:1786億ドル(+1.1%)
・メモリ:923億ドル(-28.9%)
・合計:4284億ドル(-9.7%)
※()は前年比

出所:電子情報技術産業協会 世界半導体市場統計(WSTS) 2024年春季半導体市場予測

半導体市場の停滞は顧客の設備稼働率の低下を招きました。直近3年度は設備投資が旺盛だったことから、顧客に設備の余剰が生じ、テスト装置の需要が低下したようです。このような影響から売り上げが減少し、利益も大きく減ることとなりました。

利益の減少はほかに、米子会社(Essai社。2020年に買収)のキャッシュフロー見通しが低下しのれんの減損損失が生じたこと、主に為替差損益の悪化から金融損益が悪化したことも影響しています。

今期は増収増益 しかし中計の目標には届かず

将来の見通しも確認しておきましょう。

アドバンテストの今期(2025年3月期)は増収増益の計画です。最高業績だった2023年3月期には届きませんが、前期のダメージからは回復を見込みます。

【アドバンテストの業績予想(2025年3月期)】
・売上高:5250億円(+7.9%)
・営業利益:900億円(+10.3%)
・当期利益:670億円(+7.6%)
・純利益:670億円(+7.6%)

出所:アドバンテスト 決算短信

増収増益の計画ですが、中期経営計画の目標から見るとやや保守的です。

アドバンテストは2024年6月、2027年3月期を最終とする新しい中期経営計画を公表しました。今期はその初年度にあたりますが、上述の業績予想は掲げた目標に届いていません。

【中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の主な平均目標】
・売上高:5600億円~7000億円(5250億円)
・営業利益率:22~28%(17.1%)
・当期利益:930億円~1470億円(670億円)
・1株あたり当期利益:127円~202円(90.74円)
※()は2025年3月期の予想(1株あたり当期利益は発行済株式7億6614万1256株から自己株式2772万9600株を控除して算出)

出所:アドバンテスト 中長期経営方針

アドバンテストは今期の半導体テスタ市場の見通しに慎重なようです。

アドバンテストは2024年のメモリテスタ市場規模を14億ドル~17億ドル(2023年実績は11億ドル)、SoCテスタ市場規模を29億ドル~32億ドル(同33億ドル)と想定しています。メモリテスタは強い需要を見込む一方、SoCテスタは弱含む予想です。

SoCテスタでは、自動車や産業機器向けで高水準の設備投資が続いたことから、需要の一服を想定しました。これらから、2024年の半導体テスト市場の拡大は5%程度にとどまると見込んでいるようです。ただし2025年以降は「比較的高い確度で市場規模が拡大する」としました(出所:アドバンテスト 決算説明会資料)

中期経営計画の目標達成は、2025年以降の成長にかかっているといえそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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