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「長生きに備えたかったのに…」64歳男性が年金の繰下げを断られてしまった「1つの原因」

Finasee / 2024年7月23日 17時0分

「長生きに備えたかったのに…」64歳男性が年金の繰下げを断られてしまった「1つの原因」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

晃彦さん(仮名)は64歳の男性です。大学卒業以来ずっと会社員を続けていました。健康には自信もあり、60歳で定年を迎えてからも勤務を続けています。そんな晃彦さんの最愛の妻・亜矢さんは6年前の56歳の時に病気で亡くなりました。亜矢さんは結婚前までは会社に勤めており、結婚後から亡くなるまでは専業主婦でした。

ある時、晃彦さんはおひとりさまとして過ごす老後に備え、年金のことをもう少し知っておこうと年金事務所へ相談に行くことにします。

そこで職員に繰下げ受給を検討していることを話すと、まさかの事実が発覚。なんと繰下げ受給はできないと言われてしまったのです。突然の話に晃彦さんは耳を疑い、「長生きに備えたかったのに……」と落胆します。

●前編:【「繰下げ受給はできません」年金増額で “安心老後”を夢見たおひとりさま男性が直面した「衝撃の事実」】

繰下げができない原因は亜矢さんが亡くなっていたこと

亜矢さんは、結婚後は専業主婦でも、結婚前は会社員でした。つまり厚生年金加入者だったことになります。

そして、亜矢さんが亡くなった当時、晃彦さんは58歳で、さらに、亜矢さんと同居もしていて、晃彦さん自身の前年の収入も850万円未満でした。そのため、亜矢さんに生計を維持されていたことになり、晃彦さんには遺族厚生年金の受給権が発生します。

妻死亡による夫の遺族厚生年金は死亡した当時夫が55歳以上であれば対象となり、実際の支給は60歳からとなりますが、こちらについて晃彦さんは未請求でした。さかのぼって、遺族厚生年金を請求し、亜矢さんの厚生年金加入記録で計算された年間数万円の遺族厚生年金を受給できることになります。

また、既に晃彦さんには老齢年金の年金請求書が届き、64歳から65歳までの特別支給の老齢厚生年金(特老厚)があり、こちらが未請求でした。この特老厚も既に請求できることになります。

ただし、64歳から65歳までの1年間は、特老厚とそれ以前から発生している遺族厚生年金とどちらか選択となります。晃彦さんの場合、遺族厚生年金より特老厚が圧倒的に高い額となるため、特老厚を選択して受給することになります。従って、さかのぼって60歳から64歳までは遺族厚生年金、64歳からは特老厚を受給することになります。

そして、このまま65歳を迎えると、たとえ64歳以降遺族厚生年金を実際に受給していなくても、遺族厚生年金の受給権があることにより、65歳からの老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰下げができません。

65歳からは65歳開始の老齢基礎年金と老齢厚生年金のみ

遺族厚生年金の受給権がある場合、65歳からは年金の受給のルールが変わります。65歳からは老齢基礎年金と老齢厚生年金、遺族厚生年金をあわせて受給できるルールとなっています。ただし、遺族厚生年金については老齢厚生年金相当額を差し引いた差額分での支給となります。

しかし、亜矢さんは会社員の期間が短かったことから遺族厚生年金も少なく、一方、晃彦さんは会社員として厚生年金の加入がかなり長いので老齢厚生年金も高い額となります。そのため、晃彦さんには、差額支給となる遺族厚生年金はなく、結局、老齢基礎年金と老齢厚生年金のみとなります。そして、これを65歳開始で受給することとなります。

実は「ねんきん定期便」にも遺族年金が受けられると老齢年金の繰下げができないことも記載されていました。しかし、晃彦さんは遺族厚生年金の受給権があるとは知らず、その記載も気に留めていなかったのです。

「自分が遺族厚生年金を受けられるなんて知らなかった。けど繰下げはできないのか……」と複雑な気持ちになりました。「繰下げができない分、長生きへの備えは貯蓄でカバーするか」と引き続き会社に勤務するにあたって、給与収入も見ながら考えることにしたのでした。

***
 

繰下げ受給については「ねんきん定期便」などを通じて知られるようになりましたが、このように繰下げできない人がいるのも事実です。繰下げによる増額率も大事ですが、自身が「繰下げできない人」に該当しないかどうかをまず確認しておきましょう。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

井内 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員。専門分野は公的年金で、3000件を超える年金相談業務を経験。さらに、年金事務担当者・FP向けの教育研修、ウェブメディアや専門誌への記事執筆も行っている。横浜市を中心に首都圏で活動中。

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