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資産形成というときの“資産”とは? 真っ先に“お金だけ”が思い浮かんだ人は知らないお金以外の「重要な要素」

Finasee / 2024年7月29日 12時0分

資産形成というときの“資産”とは? 真っ先に“お金だけ”が思い浮かんだ人は知らないお金以外の「重要な要素」

Finasee(フィナシー)

人生100年時代、多くの人が自身で資産をつくる必要性に気づき、「投資」の存在が一般的になりつつあります。2024年から新NISAが始まり、12月にはiDeCoの拠出限度額一部見直しも予定されるなど、制度や仕組みもそうした機運を後押ししています。

その一方で、「投資にスポットが当たれば当たるほど、“ライフプラン”の実現という本来の目的が見失われるリスクが高まっている」とファイナンシャル・ウェルビーイングの第一人者、井戸照喜氏は指摘します。

そんな井戸氏がマネープラン全体をとらえることから始め、そのうえで多くの人にとって相応しいと想定される「マネープランとしての投資」を解説する、話題の書籍『ファイナンシャル・ライフ・エンジニアリング』より、特別に一部を公開します(全2回)。

第1回では、「資産形成」というときの「資産」をあらためて見つめ直す重要性と、井戸氏自身が“人生の選択肢”が広がったと感じるエピソードをご紹介します。

※本稿は、井戸照喜著『ファイナンシャル・ライフ・エンジニアリング ――したたかに”楽しむ”!洗練された「人生の経営者」を目指して』(金融財政事情研究会)の一部を抜粋・再編集したものです。

「ヒト、モノ、お金」で捉える「資産形成の全体像」

「資産形成」という場合の「資産」として、どのようなものが連想されるでしょうか。預貯金、不動産、貴金属品などさまざまなものがイメージされますが、人が生きるうえで必要な資産は物的資産だけではありません。知識や技能などの無形資産を含めて、資産を「ヒト、モノ、お金」の3つに大別する方法があります。

1つ目がヒト=人的資本です。新たな知識を身に付けたり、学校へ通って新たな仲間と出会ったり、能力の開発に努めたりすることは人的資本を形成しているといえます。

2つ目がモノ=物理的資産です。車や自宅といったかたちのあるもの(有形資産)を所有することはもちろんのこと、近年であれば、情報やデータといったかたちのないものもありますが、これらを所有することがすなわち、物理的資産を形成することです。

3つ目がお金=金融資産です。「資産形成」という場合の資産として、真っ先にこの金融資産をイメージすることが多いのではないかと思われます。

ライフイベントの実現に向けて、この「ヒト(人的資本)・モノ(物理的資産)・お金(金融資産)」をどのように形成していくのかの全体像をイメージすることが重要です。

私たち一人ひとりが自分自身の「人生の経営者」として、ビジネスと同様に「ヒト、モノ、お金」という3つの要素を準備・マネージし、生涯を通じて発生する「金融資産と支出のギャップ」に対応していけるようになれば、「お金の不安」に振り回されることなく、自分自身のキャリアを形成し、人生の選択肢を拡大していけるはずです。

コーヒーブレイク 資格取得で、人生の選択肢が拡大!?

大学では原子力工学を専攻して修士号まで取得しましたが、結局、大学に入る前から好きだった「数学と勝負事」を優先して、1989年に(当時の)住友信託銀行に入社しました。

信託銀行で数学を使う仕事の筆頭が企業年金のアクチュアリー業務でしたが、採用面談のときにどんな話をしていても、今でいう「配属ガチャ」は、そういう言葉もないぐらい当たり前の時代でした。内定時に「配属先がどうなるかは分からないが、内定期間中にアクチュアリー試験を受験して1科目でも合格したら、これまでは例外なく年金数理部署に配属されている」という話を耳にしました。

私にとっての「数学と勝負事」は、信託銀行の業務では「年金数理と資産運用」でしたが、アクチュアリー試験は数学科目の比重が高く30歳を越えればどんどん合格が厳しくなるとも聞いていました。

そこで、最初は「年金数理」だなと思い、修士論文の実験の合間を縫って数学科目に的を絞って受験したところ、何とか内定時に1科目、合格することができました。

そのためかどうか今となっては確認のしようもないですが、年金信託部数理課に配属され、入社後の5年間は業務に加えて、アクチュアリーと証券アナリストの資格取得に励みました。

入社以来、10年近く年金数理関係の仕事に従事し、もう1つの希望(資産運用)の業務に就きたいと考え始めた頃、タイミングよく業界に先駆けて「業務公募制度」が始まっていました。1998年に業務公募に応募しようと考え、そのことを妻に話したときのことを、よく覚えています。

1998年というと日本長期信用銀行との統合話が、連日、報道されている時期でした。妻のコメントは「合併話があるのに部署を変わって大丈夫なの? 年金数理は信託銀行の専門分野だけど、資産運用の部署は先方にもきっとあるよ。人員が余る部署に行ったら、真っ先に余剰人員になるのでは?」という極めて冷静なものでした。

それでも最終的には「金融業界は厳しいし、クビになるかもしれないけれど、アクチュアリーと証券アナリストの資格があると路頭に迷うことはないらしい」というザックリとした理由で応募することとなり、1999年4月に念願がかなって資産運用部署に異動できました。

このように振り返ってみますと、瞬発力が必要なことも稀にありますが、5年・10年先ぐらいを見据えて、無理せず焦らずコツコツと自分自身に「知識や資格」の“積立投資”をしておいたことが、人生の選択肢を広げることにつながったのかなと、今になって感じています。

***

第2回では、「お金を借りる」こと、そして多くの人にとって人生最大の買い物となる「家の購入」を金融資産に変換することという、2つの「人生の選択肢を広げるための手段」を見ていきます(7月30日公開予定)。

ファイナンシャル・ライフ・エンジニアリング―したたかに“楽しむ”!洗練された「人生の経営者」を目指して

井戸照喜 著
発行所:金融財政事情研究会
定価:3,080円(税込)

 

 

 

井戸 照喜/ウェルビーイング学会 ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会 座長/三井住友信託銀行 上席理事

1989年 東京大学大学院 工学系研究科修了。住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入社。企業年金制度の設計・年金ALM、運用商品の開発・選定等に従事後、2008年からラップ口座、投信・保険等の推進担当、トラストバンカシュアランス推進担当役員、2019年三井住友トラスト・ライフパートナーズ取締役社長、2022年資産形成層(職域)横断領域 副統括役員を経て、2023年より現職。「ファイナンシャル・ウェルビーイング」の調査・研究、普及活動などに注力し、2024年度からはウェルビーイング学会 ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会 座長、帝塚山大学法学部 講師(非常勤)も務める。日本アクチュアリー会正会員、年金数理人、日本証券アナリスト協会検定会員。【主な著作】『銀行ならではの“預り資産ビジネス戦略”──現場を動かす理論と実践』(金融財政事情研究会、2018)、『安心ミライへの「金融教育」ガイドブックQ&A』(金融財政事情研究会、2023)(共著)、「ファイナンシャル ライフ エンジニアリング ~したたかに“楽しむ”! 洗練された『人生の経営者』を目指して~」(金融財政事情研究会、2024)

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