魅力ある投資テーマかも? 高層建築の修繕・解体企業に注目
Finasee / 2024年7月22日 13時0分
![魅力ある投資テーマかも? 高層建築の修繕・解体企業に注目](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_13872_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
今回は高層建築の解体・修繕についてです。日本のビル・マンションは手直しの時期を迎えつつあり、サステナビリティという観点でも投資テーマとして私は期待しています。
まずは解体についてです。解体に注目する理由は大きく3つあります。
① 老朽化
② デベロッパーの変化
③ 用地の枯渇
各項目を詳しく見ていきます。
① 老朽化
老朽化が進行しています。
インフラ(https://www.commons30.jp/pdf/fund2020/2020pdf_2023_7.pdf
、p6)と同様に、高度成長期(1955年頃~1973年頃)に建てられた高層建築は全て50年が経過しています。今後竣工50年を迎える建物の床面積を見ても増加基調で、2040年代にピークを迎えます*1。
本来、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)の建築は用途によるものの、おおむね40~50年程度の耐用年数のようですが、1981年6月以前の建物は新耐震基準に準拠していないこと、躯体より内装・設備が先に老朽化すること、新築の方が物件価値が高いことなどから、「メンテナンスに費用をかけるぐらいなら新築する」という傾向があるようです。ちなみに、潮風の当たるエリアの建築は早期に構造劣化に直面するでしょう。
② デベロッパーの変化
新しい高層建築を多く作る動機がデベロッパーに生まれています。東京証券取引所によるPBR1倍割れ(会社の保有資産総額より株式時価総額の方が低い状況)の改善要請などを受けて、不動産開発会社は資本と利益の効率を意識するようになりました。つまり、安定利益を犠牲にして賃貸物件を売りに回すことで、固定資産の圧縮と利益計上を優先するようになったということです。その結果、収益性の悪い賃貸物件を譲渡するだけでなく、新築賃貸の短期売却や利益率の高い分譲マンションへの注力等が進行しています。
③ 用地の枯渇
特に資産価値の高い、東京都心部の一等地の出物はもう希少になってしまったようです。
入札案件があったとしても、激しい争奪戦で利ザヤがなかなかとれないそうで、不動産開発会社の長期的な利益の継続性が危ぶまれます。そこで外部に売却せず、自社や自社組成REIT(不動産投資信託)の中で物件・土地の回転売買サイクルを完結させる動きが強固になってきています。理由②と合わせて、自社グループ物件を壊すことで新築用地と利益を確保していくでしょう。
以上の①~③より、スクラップ&ビルドが加速していると言え、私は解体に関わる企業に期待しています。
次に、修繕についてです。 老朽化でも解体しない場合に需要が伸びるでしょう。
築浅の方が高い賃料を取りやすいとはいえ、解体・建築コストや賃料収入、環境負荷などを総合判断した結果、50年経過しても修繕して使い続ける企業が実際にあります。特に昨今の建築費上昇が主要なファクターで、建て替えの採算が合わなくなったものには、修繕する動機が強く生まれています。実例として、建て替えのためテナントを退去させたものの建築コスト上昇で、リニューアルしてからテナント誘致を再開しているケースが出てきています。 また、近年のスケルトン・インフィル方式(躯体と内装設備の分離)の建築のおかげで、先に老朽化する設備を理由にした解体が減り、修繕にシフトしていくと予想されます。
以上より、高層建築の解体・修繕業界の企業が業績を伸ばすと考えています。このセクターは十分にスポットライトが当たっておらず、建築行為そのものに注目が当たっていると感じており、投資妙味がありそうです。
なお、古いビルの解体と修繕で一定程度トレードオフが発生することが想定されます。将来どちらが主流になるかを関連各企業との対話で確認してみたところ、解体の方が優勢でした。一方で私は、環境負荷や人口減少などの長期的潮流を考慮すると、修繕がより活用されるのではないかと考えています。以上のことから繰り返しにはなりますが、サステナビリティの観点で高層建築が再定義されることに期待します。
【引用】
*1 国土交通省 建築物ストック統計 2018年 「住宅」の非木造>共同住宅、「法人等の非住宅建築物」の非木造>事務所・店舗を10年単位で集計
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001103618&cycle=7&year=20180
奥 翔子/コモンズ投信 ジュニアアナリスト
1997年兵庫県芦屋市生まれ。趣味はモータースポーツ。京都大学卒業後、2021年12月にコモンズ投信に新卒で入社。不動産セクターを主に担当。
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