「もう整形費用は使わせない」美容整形にハマった挙げ句、夫に家計の全てを管理された女性の「エグすぎる行動」
Finasee / 2024年7月19日 17時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
彩花(46歳)は友人に勧められ、ヒアルロン酸注射の施術を受けてみた。しわが目立たなくなり自分でも信じられないくらい若返ったように感じられ、夫も喜んでくれて嬉しかった。
それ以降、リフトアップや二重まぶた切開など次から次へと美容整形に手を出すようになる。やがて、鼻の手術など大がかりなものにも手を出すようになった。
最初はきれいになった妻を見て自分も喜んでいた夫の進(45歳)だが、元の顔が分からなくなるほどに美容整形にのめり込んでいく彩花に我慢がならなくなり「お前の顔が変わったって近所の人たちもうわさしてる。恥ずかしくて表を歩けないよ」と言ったことがきっかけで、夫婦げんかに発展してしまう。
●前編:「夫が喜んでくれたから」プチ整形がきっかけでエスカレート、元の顔に戻れなくなった女性の「痛すぎる代償」
整形を勧めてくれた友人に相談その日のけんかをきっかけに、家のお金は全て夫の進が管理することになった。もちろんこれは、これ以上彩花に美容整形を受けさせないために進が決めたことだ。彩花は進と結婚してからずっと専業主婦で、パートもしたことがない。独身時代の貯金はマイホームを建てるときに使い切ってしまったし、こっそりためていたヘソクリも全て美容整形で使い果たしてしまった。
つまり彩花は、自分で自由に動かせるお金を持っていなかった。毎月、進から最低限の生活費は渡されているものの、今まで持たされていた夫婦共用のクレジットカードも取り上げられてしまった。
(どうしよう……これじゃあ、整形が受けられない)
彩花は鏡で自分の顔を見ながらため息をつく。そろそろヒアルロン酸注射の効果も切れそうだし、目の下のクマも気になってきた。早くクリニックへ行かないといけないのに、彩花には先立つものがない。進に内緒でパートでも始めようと思い立ち、スーパーの面接に行ってみたものの、彩花は不採用だった。面接を担当した店長が、彩花を見て一瞬ギョッとした顔をしたのが忘れられない。
八方ふさがりになった彩花は、最初にヒアルロン酸注射を勧めてくれた舞衣子に相談をすることにした。賢い彼女なら夫を説得するための方法も心得ているかもしれないし、何より整形をしたくてもできない彩花の苦悩を分かってくれると思った。
いつものカフェで待ち合わせをして、先に着いた彩花はカフェオレを頼んで舞衣子の到着を待つ。舞衣子は待ち合わせ時間から数分遅れてやってきた。彩花は入り口付近で店内を見回している舞衣子に向けて手を振った。
「舞衣子、こっち!」
声に反応して彩花のほうを向いた舞衣子は元々大きな目をさらに見開いた。
「ちょっとちょっと……! 彩花、あんた鼻もやったの、いや、え、え?」
さすがは舞衣子だ。ちゃんと気づいてくれる。うれしくなった彩花は顔のどこにどんな施術をしたのかを得意げに話してみせる。しかし彩花が話すたび、舞衣子の顔はぎこちなく引きつっていった。やがて舞衣子がつぶやいたことが決定的となった。
「いや、さすがにやりすぎだよ」
「……うちの人と同じようなこと言うのね」
「旦那さんはさ、元の彩花が好きだから整形を止めたんじゃないかな。最初に勧めちゃった私が言うのもなんだけど、やりすぎはやっぱりよくないよ」
舞衣子の忠告も、整形にとりつかれた彩花の心には響かなかった。むしろ自分の整形を止める舞衣子のことを憎いとさえ思った。きっと私がきれいになっていくことに嫉妬しているに違いない。自分の地位を脅かすんじゃないかと、怯えているに違いない。
とはいえ舞衣子は、相変わらず若々しく美しい。まだ彩花は程遠い。そう思ったら自分の醜さが許せなくなった。嫉妬と羞恥心に耐えられなくなって、舞衣子から逃げるように家に帰った。恐る恐る鏡の中をのぞいてみると、そこに映っていたのは顔に醜いシワやたるみが目立つ中年女の姿がある。
彩花は悲鳴を上げて床にへたり込み、何時間も泣き続けた。
燃え盛るマイホーム自分の顔がとにかく醜く思えて仕方なかった。舞衣子の顔を思い出したり、テレビや雑誌で美しい女優の顔を見たりするたび、彩花は激しい劣等感に襲われた。自分が醜いと思い込み続けた彩花は、やがて自分の姿を徹底的に嫌悪するようになった。
彩花は手始めに携帯に入っていた写真のデータを全て消去して、次に家のなかにあるあらゆる鏡を段ボールでふさいだ。それでも気は済まず、彩花は昔のアルバムを引っ張り出して写真を燃やすことにした。燃やしてしまえばもう何も見なくて済む。醜い自分は、徹底的にこの世から消し去らなければいけなかった。
彩花はアルバムから剝がした写真をコンロの火にくべ、シンクの中の水をはった洗面器へ捨てていく。光沢紙は勢いよく燃え、赫々(かっかく)と盛る炎の向こう側に醜い自分がのみ込まれていく。それは整形する術を失ってしまった彩花が唯一できる自分への慰めだった。
「熱っ――」
ふいに燃え上がった火が彩花の指先をなでた。思わず手を放してしまい、火のついた写真はキッチンに敷かれたマットの上に落ちる。毛足の長いマットの上で火はあっという間に広がり、ようやく彩花はわれに返った。
手近なところにあった布巾を手に取り、火を消そうと試みる。しかし火のついた写真は風で舞い、床に落ち、キッチンからリビングへと流れ、火の手はあっという間に広がっていった。
彩花が選んだカーテンも、進が好きな小説が詰まった本棚も、炎がのみ込むまでに時間はかからなかった。どうして良いか分からず、その場に立ちすくむ彩花。
「何をやってるんだ⁉ 早く逃げるぞ! 彩花!」
気がつくと、いつの間にか帰ってきていたスーツ姿の進が彩花の腕を引いていた。もし進が家にいなければ、彩花は間違いなく逃げ遅れていただろう。彩花は燃え盛るマイホームを見つめながら、ぼんやりとそう思った。
その後、近所の通報でやってきた消防隊によって火は消し止められたが、彩花たち夫婦の家は跡形もなく全焼してしまう。家の焼け跡を見た彩花は、そこで初めて自分がとんでもないことをしてしまったと気付く。
「ごめんなさい、あなた……私、写真を燃やしてて、それで……」
「分かった、分かったよ……」
進は崩れ落ちる彩花の肩を抱いてそう繰り返した。
「だって、あなたが喜んでくれたから。初めてヒアルロン酸を打ったとき、見違えたって言ってくれたから、もっときれいになったら、喜んでくれるかなって思って、それで、うう……うああ……あなたの、あなたのせいよっ! あなたのせいなのよぉ……」
あとは言葉にならなかった。進は半開きの口を動かして何かを言おうとしていたが、なかなか声にはならなくて、ようやくごめんと絞りだして、涙を流していた。
年相応の笑いじわそれから数か月後。彩花は夫の進とともに小さなアパートで暮らし始めていた。たとえ自分の家であっても、過失により建物を燃やした場合は罪に問われることになる。
もちろん彩花の場合も例外ではなかったが、幸い隣家とは距離が離れていたこともあって、近所に火が燃え移ることもなく、ケガ人も出なかった。進が懸命に庇(かば)ってくれたことや義両親が腕の良い弁護士を紹介してくれたかいもあって、彩花は比較的早く日常生活に戻ることができた。
「本当にすまなかった」
アパートに越して、2人でもう一度やり直そうと決めた日、進はそう言って深く頭を下げた。
「安易な気持ちだった。彩花がきれいになって、機嫌もいいし、なんだかうれしくなって、手のひらを返したみたいに接してしまった。そんな、見かけで選んで彩花と結婚したんじゃないのに、俺は、君にひどいことをしてしまった」
彩花は首を横に振った。自分こそどうかしていた。お金を使えば使ったぶんだけ自分の容姿が思い通りになる手軽さに、彩花は酔っていたのだと今だからこそ思う。
もちろん美容整形を否定するつもりはなかった。まぶたが二重になることで、見える世界が変わって勇気づけられる人もいる。長年苦しんだコンプレックスから解放されて、背筋を伸ばして生きられる人がいる。
ただ、彩花には過ぎたものだった。あの火事以降、彩花は整形をしたいとは思わなくなったし、鏡に映る自分の姿も怖くなくなっている。無理な整形を止めてからは、徐々に顔に表情が戻って、以前より柔らかな印象になっているようにすら思えた。
家計を助けるために思い切って応募したパートにも無事に採用され、彩花は前よりもずっと生き生きとした日々を送っている。家事と仕事の両立は大変だし、前の家と比べれば狭いアパートだったが、彩花は今の自分を確かに幸せだと感じられた。
インターホンが鳴る。彩花は夕食を配膳する手を止めて玄関へ向かう。向かうと言っても、玄関は振り返れば居間からもすぐに見える距離にある。それでも彩花は鍵を開け、扉を開ける。
「ただいま」
「おかえりなさい、あなた」
玄関で進を出迎える彩花の穏やかな目元には、年相応の笑いジワが刻まれていた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
梅田 衛基/ライター/編集者
株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。
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