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滋賀銀行、日立と共同環境事業を開始 銀行で新ビジネス参入が相次ぐ理由とは

Finasee / 2024年7月25日 11時0分

滋賀銀行、日立と共同環境事業を開始 銀行で新ビジネス参入が相次ぐ理由とは

Finasee(フィナシー)

金利の上昇を受け、多くの銀行株が上昇しています。しかし、中には出遅れ感のある銘柄もあります。例えば滋賀銀行は2024年7月12日までの5年間で株価は約70%上昇していますが、銀行株ETFの上昇率は同じ期間で約150%(2.5倍)に達しています。

滋賀銀行の出遅れが一時的な要因によるものなら、解消されれば株価上昇のきっかけになるかもしれません。

相対的に低い滋賀銀行の株価はチャンスといえるのでしょうか。業績から探ってみましょう。

関西の有力銀行の1つ 強みは産業集積地の滋賀県での高シェア

まずは滋賀銀行の概要を紹介します。

滋賀銀行は滋賀県を地盤に持つ地方銀行です。1933年に百卅三(ひゃくさんじゅうさん)銀行と八幡銀行が合併し設立されました。2010年に第二地方銀行のびわこ銀行が関西アーバン銀行(現・関西みらい銀行)と合併してからは、滋賀銀行は滋賀県内に本店を持つ唯一の銀行となっています。

滋賀県におけるシェアは圧倒的です。預金と貸出金のシェアはそれぞれ46%と49%に達しています(2022年9月末。ゆうちょ銀行・商工中金・日本政策金融公庫を除く 出所:滋賀銀行 会社概要また帝国データバンクによると、滋賀県内の企業の58%が滋賀銀行をメインバンクと認識しているようです(出所:帝国データバンク 滋賀県内企業メインバンク調査(2023年))

滋賀県は製造業が盛んな地域です。多くのメーカーが生産拠点を置くほか、フジテックや日本電気硝子など滋賀県に本社を構える大企業も少なくありません。これらから、滋賀県は県内総生産に占める製造業の割合が全国首位となっています(出所:滋賀銀行 決算説明会資料)

強固な地盤で盤石なシェアを持つ滋賀銀行は関西の有力行に数えられます。総資産は関西の地方銀行で京都銀行、関西みらい銀行に次いで3位です。

【関西地盤の地銀の総資産(単体、2024年3月期)】
・京都銀行:11兆5498億円
・関西みらい銀行(大阪):9兆0068億円
・滋賀銀行:7兆9442億円
・南都銀行(奈良):6兆7638億円
・池田泉州銀行(大阪):6兆3926億円
・紀陽銀行(和歌山):5兆8197億円
・但馬銀行(兵庫):1兆3378億円

出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算

出遅れは業績が原因か 債券の売却損は縮小もシステム費用は懸念

冒頭の通り、滋賀銀行の株価は出遅れ感がみられます。背景には業績の悪化が比較的大きかったことがあると考えられます。

銀行本来の業務の利益を示す業務純益で比較すると、滋賀銀行は2021年度と2022年度に大きく落ち込んでいることがわかります。2021年度はシステム投資から経費が増加したこと、2022年度は計上した外国証券の売却損が大きめだったことが影響しました。

出所:滋賀銀行 決算短信、全国地方銀行協会 地方銀行の決算より著者作成

システム費用の増加と外国証券の売却損は今後も続くのでしょうか。どちらもその可能性はありますが、より注意したいのはシステム費用だといえます。

外国証券の売却損は今後も懸念されます。滋賀銀行は2024年3月期に有価証券の運用残高を3400億円分増加させました。うち2100億円を国債が、400億円を外国証券が占めています。金利上昇が続けばこれらの評価額が下落し、損失が生じる可能性があります

ただし滋賀銀行は外国証券ポートフォリオを変動債中心へ組み替えています。固定債の割合は直近2期で57%から13%にまで縮小しました。金利リスクは依然より小さくなったと考えられます(出所:滋賀銀行 決算説明会資料)

次にシステム費用です。滋賀銀行は2020年9月、基幹システムを日立製作所が提供するシステムへ刷新すると公表しました。しかし現在、この開発が遅れています。

当初は2024年1月の利用開始を目指していました。しかし2023年2月に「2025年1月以降」に延期され、2024年4月にはさらなる先送りが表明されました。新しい利用開始時期は公表されていません。日経クロステックによると、同じシステムを採用する銀行では稼働の延期が相次いでいるようです(出所:日経クロステック 2024年4月25日付)

システム開発は滋賀銀行の経費を増加させています。2024年3月期には基幹システムの開発に関連し68億円の営業経費を計上しました。足元のOHR(※)は80%台と高く、システム投資などの特殊要因を除いたOHRからのかい離が続いています。

※OHR(Over Head Ratio):粗利益に対する経費の割合

出所:滋賀銀行 決算説明会資料より著者作成

今期(2025年3月期)も経費の増加を見込んでいます。与信コストは横ばいながら、システム費用を含む物件費の増加などから経常利益は減益、純利益は微増の計画です。当面は基幹システム開発の進捗が業績に影響を与える状況が続きそうです。

【滋賀銀行の業績予想(2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:220億円(-4.9%)
・純利益:160億円(+0.3%)
※()は前期比
※参考:業務粗利益649億円(+5.0%)、実質業務純益104億円(-1.9%)

出所:滋賀銀行 決算短信

日立と共同で環境事業を開始 法改正で新ビジネスに参入しやすく

最後に滋賀銀行の新ビジネスにも触れておきましょう。滋賀銀行は近年、日立製作所と共同で環境事業を進めています。

滋賀銀行は2022年、カーボンニュートラルを目指し日立製作所と協業を開始しました。2023年1月にはCO2排出量の管理ツールを共同で開発し、取引企業の脱炭素を支援するサービスを提供しています。

2024年1月には、日立製作所と共同で風力発電の実証実験を開始しました。小型の風力発電設備を本店の屋上に設置するもので、将来の事業化を目指しています。さらに2024年4月、太陽光発電設備を活用し企業や行政のGX(グリーン・トランスフォーメーション)を支援する「しがぎんエナジー」を設立しました。

実は地方銀行が再生可能エネルギー子会社を持つケースは増えています。2022年7月にめぶきフィナンシャルグループが「常陽グリーンエナジー」を、2023年4月には千葉銀行が「ひまわりグリーンエナジー」を設立しています。

背景には事業範囲規制の緩和があります。

銀行は法令で銀行業以外の事業が制限されています。しかし2016年に銀行法が改正され、銀行業の高度化に役立つことを条件に出資制限が緩和されました。緩和の対象は2021年の改正でさらに拡大したことから、銀行はより幅広い事業を営むことが可能となりました(出所:内閣府国家戦略特区ワーキングループ 「一定の銀行業高度化等会社」の業務へのGX業務の追加(2024年4月24日))

銀行で再生可能エネルギー子会社の設立が増えているのは、この業務範囲規制の緩和が一因だと考えられます。

再生可能エネルギー以外の子会社を設立する例も増えています。業種別では投資会社やシステム会社、コンサルティング会社などがよく見られます。

銀行の業績は金利に左右される傾向にあります。しかしこれら新ビジネスが成長すれば、銀行の金利依存は低下するかもしれません。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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