投資信託の中には「分配あり」と「分配金なし」というものがありますが、違いはなんでしょうか?
Finasee / 2024年7月19日 12時0分
Finasee(フィナシー)
投資信託を選ぶ際に迷うポイントの一つが、「分配金あり」と「分配金なし」のどちらにするかです。これを判断するには、分配金がどのような意味を持つのか理解する必要があります。
そこで今回は「そもそも分配金ってなに?」「投資信託の分配金あり・なしは何が違う?」という人のため、投資信託の「分配金あり」と「分配金なし」について解説します。
投資信託の分配金とは?分配金あり・なしの違いは?投資信託の分配金とは、その投資信託が運用で得た収益の一部(または全部)を投資家に払い出すお金です。
投資信託は収益を得ると、再投資して運用資産に組み込みます。運用資産が増えると基準価額(※)が上昇します。投資家が上昇分の利益を得るためには、その投資信託を売却しなければいけません。しかし運用収益が分配金として払い出されるなら、投資家は売却前でも利益を得られます。
※基準価額(きじゅんかがく):投資信託の値段のこと
分配金の額は、原則として決算時に投資信託が決定します。分配金が支払われることもあれば、1円も支払われないこともあります。決算の頻度は、年1回や毎月など、銘柄によって異なります。
そして、できるだけ分配金を支払う方針の投資信託を「分配金あり」、反対にできるだけ分配金を支払わない方針の投資信託を「分配金なし」と呼ぶことがあります。つまり「分配金あり」と「分配金なし」の違いとは、分配方針の違いと整理できます。
分配金を出すと基準価額が必ず下がる(ただし損失ではない)一見すると「分配金あり」の方がお得な気がします。しかし、分配金をもらえる機会が多いからといって利益が増えるわけではありません。投資信託は、分配金を支払うと値下がりするためです。
投資信託の基準価額は「純資産総額(※)÷総口数」の式で算出されます。株価のように、売買の結果がそのまま反映されるものではありません(参考:投資信託協会 投資信託の基礎知識)。
※純資産総額(じゅんしさんそうがく):投資信託の資産のうち、投資家に帰属する部分。その投資信託の大きさを示す。
そして分配金は投資信託の資産から支払われます。したがって、「分配金あり」の投資信託は分配金を支払うたびに純資産総額が減少します。分母の総口数が変わらず、分子の純資産総額が減少するため、分配金を支払うとそのぶん基準価額が下がるのです。これを「分配落ち」と呼びます。
例えば分配金が100円なら、基準価額は100円下落します。基準価額は分配金と同じ金額だけ値下がりします。
なお実際には、分配落ち日に基準価額が上昇することもあります。これは分配落ちに伴う純資産総額の減少より、投資対象資産の値上がりが大きいケースなどで起こります。とはいえ、分配金がなければさらに値上がりしたはずですから、このケースでも基準価額は実質的に下落したといえます。
ただし、分配落ちは損失ではありません。基準価額が減少したのは、投資家が分配金を受け取った結果だからです。例えば100円の分配金を支払った投資信託は100円値下がりしますが、同時に投資家は100円を受け取っています。トータルで損失はありません。
つまり分配金は、直接的には利益でもなければ損失でもないのです。では、分配金はどういうときに利益になるのでしょうか?
分配金が利益になるのはどういう時?結論からお伝えすると、分配金が利益といえるかどうかは、結局は基準価額の値上がりにかかっています。
分配落ち後の基準価額が購入単価(購入時の金額)を上回るなら、その分配金は利益です。元本部分のマイナスがないため、分配金はまるまる利益となります。
一方、分配落ち後の基準価額が購入単価を下回るとき、トータルで損失になっている可能性があります。
「分配金あり」と「分配金なし」はどう選べばいい?結局、私たちは「分配金あり」と「分配金なし」のどちらを選べばよいのでしょうか。端的に言えば、今お金が欲しいなら「分配金あり」を、将来のお金を増やしたいなら「分配金なし」を選ぶようおすすめします。
分配金を支払う投資信託は運用資産が減りやすい傾向にあります。利回りがプラスなら、利益は運用資産に比例して大きくなります。より大きな利益を目指すなら、資産を投資家に払い出さず再投資に回す「分配金なし」の方が向いていると考えられます。
しかし、家計などから今の収入を増やしたい人もいるでしょう。収入は少ないが一定の資産を持つ人は、運用しながら定期的に現金を受け取れる「分配金あり」にニーズを感じるかもしれません。
「分配金あり」と「分配金なし」で迷ったら、自身の家計の状況を考慮して選んでみましょう。
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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