1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

三菱重工株は2年強で約8倍、NTT株の株価は苦戦中…SNSでよく話題になる2大大型株の差を生んだ“要因”は何か

Finasee / 2024年7月22日 7時30分

三菱重工株は2年強で約8倍、NTT株の株価は苦戦中…SNSでよく話題になる2大大型株の差を生んだ“要因”は何か

Finasee(フィナシー)

2年半ほどで株価が約8倍になった三菱重工業

国内株式市場ではこの1年ほど、大型・バリュー株相場が続いています。

大型株とは時価総額が大きく、かつ株式市場での流動性が高い銘柄のことです。別な言い方をすると、有名な大企業の株式、といったところでしょうか。その大半は、東証プライム市場、ならびにスタンダード市場に上場されています。

大型株のなかでも、いわゆる重厚長大企業といって、鉄鋼や造船、その他重工業関連の企業は、これまで非常にさえない展開が続いていました。今をときめく三菱重工業(以下、三菱重工)の株価も、2021年12月末までは260円台で推移。2022年に入ってから株価の水準が上方修正されたとはいえ、2023年5月近辺までは400円台後半から500円台前半の推移が続きました。

それが一気に動意づいたのが2023年5月半ばからのことで、そこから株価は多少の踊り場を形成しながらも、1年以上にわたって上昇トレンドを維持し、2024年7月5日には2065円の高値をつけています。2021年の水準からすれば、約8倍になりました。

三菱重工といえば、時価総額が6兆4200億円にも達する大型株です。ちなみに東証上場企業のうち、7月19日時点で最も時価総額が小さい企業はラピーヌで、6億5700万円ですから、いかに三菱重工の時価総額が大きいか、お分かりいただけるかと思います。

ちなみに、三菱重工ほどの大型株になると、時価総額と共に発行済み株式数も非常に多いため、ちょっとやそっとの買いが入る程度では、なかなか株価は上昇しません。1年以上の時間をかけたとはいえ、株価が約8倍にもなったケースは、今まで一度もありませんでした。

1980年代バブルの株価を見ると、たとえば1985年1月4日の終値が261円で、日経平均株価がバブル期ピークをつけた1989年12月29日の終値が1150円でしたから、戦後最大のバブルと言われた当時でさえ、三菱重工の株価は4.4倍の上昇に過ぎなかったのです。

株価が伸び悩むNTT

対して、大型株の一角で、期待先行によって買われたものの、今年に入って株価的に苦戦しているのがNTT(日本電信電話)です。

2020年10月2日の85円を直近の底値に、2024年1月23日には192.9円まで値上がりしました。この間の値上がりは2.3倍ですが、2024年6月18日にかけては144円まで値下がりしました。

ちなみにNTTの時価総額は、三菱重工のそれをはるかに上回る約14兆4000億円です。

また、発行済み株式数は905億5031万6400株で、これまた三菱重工の33億7364万7810株をはるかに上回っています。

これだけ発行済み株式数と時価総額が大きな企業の株価ですから、それらがより少ない三菱重工株や、その他の中小型株に比べて、値動きが緩やかになるのは当然でしょう。

長い時間軸でNTTの株価を見ると、前回の高値は1999年11月25日につけた194円でした。そこからITバブルがはじけ、2002年2月7日に37.5円まで値下がりし、アベノミクス相場がスタートした2013年1月までは、32.2円から68円の範囲で推移し続けました。

直近、NTTの株価が上昇トレンドを続けるなか、1999年11月25日の直近高値にあと一歩のところまで迫ったのですが、あいにく高値更新には至らず、調整局面に入ってしまいました。

三菱重工とNTTの差を生んだ要因は何か

大型・バリュー株相場が続くなか、NTTの株価が調整した理由は何だったのでしょうか。

最大の理由は、やはり「ファンダメンタルズ※」でしょう。
※「経済の基礎的条件」のこと。株価で言えば、企業の業績や財務状況のこと。

まず、株価が堅調に推移している三菱重工ですが、営業利益の増益率を見ると、

2022年3月期・・・196.2%増益

2023年3月期・・・20.6%増益

2024年3月期・・・46.1%増益

となっています。加えて四季報予想になりますが、2025年3月期も23.8%増益が見込まれています。詳しくは後述しますが、外国人投資家の売り越しが続いたなか、三菱重工株が堅調に値上がりしたのは、月並みな理由ですが、2025年3月期予想も含めて、業績が評価されたからだと考えられます。

対してNTTはどうでしょうか。同じく営業利益の増益率を見ると、

2022年3月期・・・5.8%増益

2023年3月期・・・3.4%増益

2024年3月期・・・5.1%増益

とりあえず増益ではありますが、2025年3月期の予想が5.4%の減益となっています。

この減益予想が、株価の足を引っ張っています。

NTT株価“くすぶり”の要因は外国人投資家?

では、誰がNTTの株式を買い、もしくは売っているのでしょうか。投資家別の保有比率を見てみましょう。

政府および地方公共団体・・・34.87%(19/3)→32.25%(24/3)

金融機関・・・19.36%(19/3)→17.91%(24/3)

金融商品取引業者・・・1.37%(19/3)→2.32%(24/3)

その他の法人・・・1.27%(19/3)→3.68%(24/3)

外国法人等・・・26.7%(19/3)→18.78%(24/3)

個人その他・・・16.43%(19/3)→25.07%(24/3)

目立つのは、外国法人等の売りに対して、個人の買いです。

NTTの株主数の推移を見ると、2023年3月期の71万2180人に対して、2024年3月は177万9764人に急増しています。なぜ株主が急増したのかというと、2023年7月に実施した株式分割です。

この株式分割では、1株を25株に分割し、その分、1単元あたりの投資金額を少額にしました。分割前は1単元を買うのに約40万円必要だったのが、分割後は1万6000円ほどで単元株投資が可能になりました。

NTTが株式分割で投資金額を引き下げたのは、2024年1月からNISAの制度見直しによって、個人投資家が投資しやすいようにする狙いがあったからです。その狙い通り、株主数が急増するのと共に、個人の保有比率も向上しました。

一方、外国人投資家が売っている理由は何でしょうか。

NTTの株価が直近安値をつけた6月18日にかけて、NTTに限らず全体的に、外国人投資家による日本株売りが続いていました。

東京証券取引所の投資部門別売買状況によると、東証プライム市場における外国人投資家の売買状況は、5月第4週(5月20日~5月24日)から6月第3週(6月17日~6月21日)にかけて、5週連続の売り越しとなりましたが、これはNTTの株価が急落した時期と、ほぼ重なっています。

この点から、6月18日にかけてNTTの株価が急落した背景には、外国人投資家の売りがあったことが推察できます。

理由は、3月決算企業が5月上旬に発表した2025年3月期の業績見通しが、かなり保守的な数字だったからです。1ドル=160円まで進んだ円安も、日本に対する不安感を強める形になり、グローバルポートフォリオから日本のポーションを引き下げる動きが出たとも考えられます。その影響を、業績見通しが悪かったNTTの株価に、色濃く反映された可能性はありそうです。

とはいえ、三菱重工のように業績見通しが明るい企業の株式は買われます。大型株相場にも、二極化の動きが出てきたと言えそうです。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください