PayPay銀行のキーパーソンに聞いた! 「金融サービスを空気のように身近に」を実現するために“不可欠なもの”は…
Finasee / 2024年7月25日 17時0分
Finasee(フィナシー)
PayPay銀行は、2000年10月、国内初のインターネット専業銀行として開業(当時ジャパンネット銀行)。以降、フロントランナーとして、銀行サービスのデジタル化に取り組み、2024年4月には、日本経済新聞社「NIKKEI Financial 銀行ランキング」で、堂々総合第1位に選出されるなど存在感を放っている。同社の強みとは何か? キーパーソンに聞いた。
銀行ランキング1位という評価の受け止めと24年間の歩みの振り返り――今回のランキングは、いわゆるネット銀行だけではなく、メガバンクや地銀を含めているという点で非常に価値があると思います。
案野哲也氏(以下、案野) 1位というのは、正直、驚きました。今では、ネット専業銀行も増えていますし、メガバンクもデジタル化に注力しています。インターネットバンキングが普及、定着していく中で、特に奇をてらったことをしているわけでもありません。これまでやってきたのは、「UI(ユーザーインターフェイス)」を徹底的に磨き、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」の向上に努めた、ということに集約されます。それが評価された結果だと受け止めています。
企画本部 本部長付 部長 案野 哲也氏――24年間の歩みの中で、大きな出来事といえば何でしょうか。
木幡 寛氏(以下、木幡) まず、2021年4月に「ジャパンネット銀行」から「PayPay銀行」に社名を変更したことが挙げられます。開業してから20年以上経過しており、すでにジャパンネット銀行という名前も浸透していましたから、商号変更は社内でもかなり議論しました。しかし、より多くのお客さまにとって親しみやすくなるのは、間違いなくPayPay銀行であるというのは分かっていました。実際、社名変更後のわずか3年間で約300万口座増加し、2024年5月時点での口座数は800万口座を突破しています。
執行役員(個人事業部担当) 木幡 寛氏 ※オンラインにて取材――具体的なサービス面ではどうですか。
木幡 2022年8月にリリースした、PayPayのミニアプリである「PayPay銀行」のサービスです。このミニアプリによって、PayPayアプリからPayPay銀行にアクセスが可能になり、簡単に明細確認や振り込みができるようになりました。また、PayPayで本人確認済みのお客さまであれば、PayPayの本人確認情報と連携することにより、最短1分で口座開設申込が可能になるサービスもリリースしています。当社内では、サービスの改善について、よく「摩擦をなくす」という言葉を使っています。これは、お客さまが当社のサービスを利用する際の負担やストレスを“摩擦”と表現しているのですが、ミニアプリや、PayPayとの本人確認情報連携サービスの導入によって摩擦がかなり減ったのではないでしょうか。
銀行サービスを“組み込む”のではなく“溶け込ませる”――メガバンク、地銀、そしてネット銀行……多様なプレーヤーがひしめくなかで、改めてPayPay銀行の強みとは何でしょうか。
案野 私たちはミッションとして、「金融サービスを空気のように身近に」を掲げています。これは単なるお題目ではなく、成長戦略そのものとなっています。個人から法人まで幅広く、当社のサービスを摩擦なく使っていただくために、冒頭でも申し上げたようにUI・UXを磨き続けていく、それが強みになっていると思います。
木幡 当然、他社もUI・UXについて注力していると思いますが、当社では、一部のスタッフが改善を担当するのではなく、一人ひとりの社員から社長まで、それぞれの視点で「どうすれば摩擦を減らせるか」に取り組んでいます。おそらく、ここまで徹底しているところは少ないのではないでしょうか。
――御社の考える、理想的なUI・UXのイメージはどのようなものでしょうか。
案野 お客さまがやりたいことに、最短距離で、途中で迷わずにまっすぐいける、ということだと考えています。
木幡 銀行サービスでは、「エンベデッドファイナンス(埋め込み型金融)」や「BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)」が増えていますが、PayPayにおけるPayPay銀行は、あえてそうした言い方をしていません。PayPayの中に組み入れるという感覚ではなく、銀行サービスが“溶け込んでいる”という姿を目指しているためです。いつの間にか銀行にいる、というのがお客さまにとって理想的ではないでしょうか。さきほど、PayPayの本人確認情報と連携することで、最短1分で口座開設申込が可能といいましたが、銀行口座を作るという目的でPayPayのアプリに入ってくるのではなく、PayPayをスムーズに使うために結果的に銀行口座を作ることになった、という状態です。また、そういう状態を作り上げるのが、プラットフォーマーの役目だと捉えています。
案野 重要な点は、UI・UXの改善は、お客さまにとっては利便性の向上に資するものですが、私たち銀行にも大きなメリットがあるということです。事務手続きが合理化されれば、銀行の生産性も上がっていきます。UI・UXの改善を通じて、お客さまと銀行が“ウィンウィン”の関係を築くことができるのです。
「金利のある世界」でもスピードを重視してサービスを提供――日銀は「マイナス金利解除」に動き、金融市場の金利が復活しました。この「金利のある世界」にはどんな対応を考えていますか。
案野 3月19日の金融政策決定会合で、日銀がマイナス金利解除を決定しましたが、当社では、その日に緊急会議を開いて、預金金利の引き上げを決め、プレスリリースを発表しました。銀行の中でも早い対応で、まさにネット銀行としての矜持だと思っています。
木幡 普通預金金利を0.03%に引き上げたのですが、これは、現在でも普通預金金利としてはかなり高い水準です。さらに、7月からは円定期預金6カ月もので0.50%というキャンペーンを開始しています。「金利のある世界」を多くのお客さまに実感していただきたいと考えています。
――この先、銀行サービスはどのように変化していくのでしょうか。
案野 街中の銀行の店舗・ATMは減っていますが、それは銀行機能の必要性が減少しているわけではなく、むしろ高まっていると考えられます。銀行サービスは、安全性の確保や高い利便性というのは当たり前に、その上で、生活に溶け込み、摩擦が無いものになっていくのではないでしょうか。
木幡 銀行の店舗に出向いて手続きをするとか、ATMに並んで入出金をするといったことは、ほとんどなくなり、より日常生活の中に溶け込んだ銀行サービスを使うようになる。スマホにパスワードを入力しなくても、指紋とか生体認証によって、摩擦なく、かつはるかに安全にさまざまな手続きや入出金、クレジットカードなどが使える、という方向に向かっていくと思います。
――ありがとうございました。かつては、「自宅の近くに店舗がある」などが選ぶ基準になりがちで、“銀行のサービス”に着目していなかった人も多かったと思われますが、これだけネット銀行がスタンダードになると、生活者はよりシビアに「自分に合っていて、使い勝手がよく、有利」な銀行を吟味していると思います。今後も、PayPay銀行の取組みに注目していきます。
Finasee編集部
「インベストメント・チェーンの高度化を促し、Financial Well-Beingの実現に貢献」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAやiDeCo、企業型DCといった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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