「受け取っていない年金がありました」父亡きあと発覚した“もらい忘れ”。宙に浮いた年金の行方は…
Finasee / 2024年7月30日 11時0分
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Finasee(フィナシー)
老齢年金は自分自身の加入記録を基礎に計算されることになります。掛けた期間が多ければその分受け取れる額も多くなることでしょう。しかし、年金に加入していたのにそれが金額に含まれていなかったり、全ての加入記録で計算された額で受け取っていなかったりする場合もあります。中には、そのまま亡くなってしまうケースも。もらい忘れていた年金はどのようになるのでしょうか。
年金暮らしだった父親が亡くなる健太さん(現在53歳)には同居する父・宏隆さんがいましたが、宏隆さんは持病の悪化により、ある年の7月2日に82歳で亡くなりました。
宏隆さんは長年会社員を続け、退職してからは年金生活をしていました。健太さんは「家族に対しては優しかったけど、曲がったことが嫌いな性格だったな」と亡き父との思い出を回想していました。そのためか、若い頃はよく会社と喧嘩して辞めて転職をしていました。
健太さんの母は既に他界していて、兄弟姉妹もいません。なんとか1人で宏隆さんの葬儀を済ませ、続いて死亡したことによる年金の手続きをすることになりました。
遺族として未支給年金を受け取れることに健太さんはすぐに年金事務所へ行きました。すると、窓口では「宏隆さんが亡くなったことで未支給年金が健太さんに支給されることになります」と説明を受けました。「え、父の年金を自分が受け取れるってどういう仕組みだろう?」と健太さんは驚きます。未支給年金とはどういった年金でしょうか。
そもそも、年金は後払い制を採っています。2月分・3月分は4月振込、4月分・5月分は6月振込、6月分・7月分は8月振込、8月分・9月分は10月振込、10月分・11月分は12月振込、12月分・1月分は2月振込となります。具体的な振込日については、それぞれの偶数月の15日が原則です。
そして、年金は亡くなった月の分まで支給されることになっています。
宏隆さんは7月2日に亡くなったので、宏隆さんの年金は7月分まで支給されることになります。しかし、本来6月分と7月分は宏隆さんに8月15日に振り込まれる予定だったところ、8月15日時点では亡くなっていることから、宏隆さん自身は受け取れません。そのため、6月分・7月分の2カ月分の年金が遺族に支給されることになるのです。
今回のケースでは、宏隆さんにとっての配偶者(健太さんの母)は既に亡く、配偶者の次に優先順位が高い遺族は子であるため、子の健太さんが未支給年金を受け取ることになります。
健太さんは職員からの説明を受けて、「へぇ、そういう仕組みなのか。将来自分も年金を受け取ることになるし、勉強になったな」と納得しました。
さらに「もらい忘れの年金」が発覚するそんな2カ月分の未支給年金を請求するにあたって、健太さんは年金事務所の職員から尋ねられます。「ところで、お父さまは39歳の頃、どこか4カ月ほど会社にお勤めされていませんでしたか?」と。
突然の質問に健太さんは何の話だろうと思いました。健太さんは「その時って、自分もまだ小さい頃だし……随分昔だなぁ」と記憶を振り返ります。
当時健太さん自身が幼いながらも、宏隆さんの勤務先について、住んでいたエリアの地名が社名に入っていたことと、業種が運送業だったことを覚えていました。そこから会社名を思い出し、健太さんは「確か『○×運送』でした」と職員に伝えます。
すると、職員から「お父さまには受け取っていない年金がありました。未支給年金はお父さまが亡くなる頃までに受け取っていた年金についての6月分・7月分だけでなく、さらに多く受け取れます」との説明がありました。
質問に答えただけで受け取れる未支給年金が増える――一体どういうことでしょうか?
●過去の父親の勤務先を答えたことで年金を受け取れることになった健太さん。そのカラクリは、後編【年金事務所で「たった1つの質問」に答えただけで…父親の“もらい忘れた年金”を息子が受け取れたワケ】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
井内 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員。専門分野は公的年金で、3000件を超える年金相談業務を経験。さらに、年金事務担当者・FP向けの教育研修、ウェブメディアや専門誌への記事執筆も行っている。横浜市を中心に首都圏で活動中。
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