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私の確定拠出年金が知らないうちに塩漬けに? 意外と多い企業年金の移し忘れに注意!

Finasee / 2024年7月31日 11時0分

私の確定拠出年金が知らないうちに塩漬けに? 意外と多い企業年金の移し忘れに注意!

Finasee(フィナシー)

3月末で会社を退職し、新たな職場に入られた方も多いのではないでしょうか? 新しい環境にも慣れてきたこの時期に、改めて「企業年金」のことを考えてみましょう。

会社を中途退職された皆さん、手続き忘れはありませんか?

「企業年金」は、確定拠出年金(DC)、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、中小企業退職金共済(中退共)など、基本的には企業の退職給付制度を代替する機能のある制度です(公務員の場合は各種共済制度の退職金等年金給付)。退職給付(=退職金)というと、退職後に会社から支給される(振り込まれる)ものという認識が一般的かもしれませんが、DCと中退共については退職者本人が手続きをする必要があります。

まず、中退共についてみてみます。会社が12カ月以上の掛金拠出をしていた場合は、次の書類を中小企業退職金共済事業本部(中退共本部)に郵送することで退職金の受取が可能です。

・共済手帳3枚目にある「退職金等請求書」
・マイナンバー入り住民票
・身元確認書類(免許証などのコピー)
・受け取りのための金融機関を証明する書類

中退共本部での請求書審査期間は4週間ほどです。手続きを忘れずに行えば、受取手続きはそれほど難しくないといえるでしょう。

それでも、中退共の退職金等一時金支給状況は2023年3月末で28万1,641件。同じ時期の脱退者は37万9,084件のため、10万件近い開きがあります。手続きの時間的なずれもあることから考えると、未請求者が10万人いるわけではありませんが、3年経過後の未請求者数は、2021年度に請求権が発生した人の場合1.83%となっています。請求せずに放置する人が一定数存在すると考えられます。

なお、中退共の給付は5年以上が経過すると受け取り時効となりますので、心当たりのある方は問い合わせしてみましょう(中退共本部コールセンター 03-6907-1234)。

*数値はすべて中小企業退職金共済事業本部公表

企業型DCは中退共よりも手続きが複雑

企業型DCは60歳以上で企業を退職し、その時点で10年以上の通算加入者等期間※1があれば、受け取ることができます。では、60歳未満で退職した場合は、どうすればいいでしょうか? 転職先の企業に企業型DCがあれば企業型DCに移し、なければ個人型DC(iDeCo)に移す手続き(「移換」といいます)が必要です。

移換手続きを一定期間内に行わなかった場合は、国民年金基金連合会への「自動移換」となります。この自動移換は、「塩漬けの企業年金」等の見出しで報道されることのあるものです。その理由は自動移換に多くのデメリットがあるためです。

・自動移換のデメリット
①国民年金基金連合会で現金預かりとなり、運用できない(利息等もつかない)
②自動移換の状態の間は通算加入者等期間に算入されない
③毎月の管理手数料(52円/月)がかかる(自動移換後4カ月目から発生)
④自動移換の際の手数料が4,348円かかる
⑤自動移換の状態から戻す時に1,100円+α(移換先によって異なる)がかかる
 

デメリットを一つずつ確認してみましょう。

①DCは運用益非課税も魅力の一つ。現金預かりのままでは、この税制優遇を生かすことができません。

②60歳までに10年以上の通算加入者等期間がないと、60歳から受給することができません。

たとえば42~47歳までA社の企業型DCの加入者だった人が自動移換になり、その後、57歳でB社の企業型DCの加入者になった場合、B社の企業型DCの加入者期間だけでは64歳までは受け取りができません※2。B社の加入者期間にA社の期間を足しても10年には届かないため、60歳から受け取ることはできないのです。仮に自動移換にならず、47~57歳までの間、iDeCoの運用指図者※3(もしくは加入者)であれば60歳から受け取ることが可能になります。

③自動移換の期間が長くなると、負担する手数料も増えます。また、iDeCoの運用指図者手数料は66円/月のため、自動移換のデメリットを回避するために14円/月の負担をしたほうがよいのではないでしょうか(手数料は野村のiDeCoの場合)。

④⑤自動移換になると必ず発生する手数料です。自動移換となった資産を受け取るためには、必ずiDeCo等に資産を移してからでなければ、受け取り手続きを進めることができないためです。

※1 通算加入者等期間とは60歳までの以下の期間のこと。企業型DCの加入者・運用指図者期間、iDeCoの加入者・運用指図者期間、企業型DCやiDeCoにDB等の資産を移換した場合はその加入者であった期間
※2 通算加入者等期間が60歳時点で10年以上あれば60歳以後に受給できるが、10年に満たない場合は加入年数に応じて受給開始可能時期が先延ばしされる。この場合、B社の企業型DCの加入者期間は57歳から2年以上4年未満となり、64歳から受給開始可能となる
※3 掛金拠出はせず年金資産の運用指図のみを行う者

「自動移換」の3分の1は資産額がゼロ

2023年3月末の自動移換は118万人、その資産額は2818億円を記録しました。この10年間で人数・金額ともに3倍以上に増加しています。企業型DCの加入者数が2023年3月末で805万人ですから、その数の多さがわかります。実は企業型DCの「事業主返還」の存在も自動移換を増加させている要因の一つです。

多くの企業では、勤続期間3年未満で自己都合退職した場合、それまでの事業主掛金を事業主(会社)に返還するという設定があります。勤続3年未満で中途退職し、かつ加入者掛金(マッチング)拠出をしていない場合、企業型DCの資産が僅少もしくはゼロ円になってしまいます。

そうしたゼロ円の自動移換者は44%を占めています。つまり、「移換」しようにも移すべき資産がない人が多いということです。自動移換に対応している国民年金基金連合会では、移換資産がゼロ円の人には、下記のような案内をしています。

◎ 確定拠出年金に加入されていた期間等に関する情報のみ管理しておりますので、移換手続きは不要です。
◎ 今後、企業型確定拠出年金または個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入される場合には、過去の加入期間が通算され、老齢給付金の受給可能時期が早まることがありますので、「以前、企業型確定拠出年金に加入していたが、現在、自動移換の状態にある」旨をお申し出ください。

「自動移換」にならないために

移換すべき資産がある場合の手続きを再度、考えてみましょう。「自動移換」にならないためには、ご自身で忘れずに手続きを行いましょう。その際、目安となる期限が退職後半年以内です。

厳密には、資格喪失日の属する月の翌月から数えて6カ月のため、3月末退職の方は10月末までに手続きされていれば自動移換にはなりません。ただ、手続き方法の選択肢が複数あるため、単純ではない面もあります。

ア)転職先に企業型DCがあれば企業型DCに移換する
イ)iDeCoに移換する(掛金拠出をする=加入者になる)
ウ)iDeCoに移換する(掛金拠出はしない=運用指図者になる)
 

従来、選択に迷って手続きを忘れる方も多かったと思いますが、今後はイ)のiDeCo加入者を選択の基本に考えてみてはどうでしょうか。数度におよぶ法令改正により、イ)を選べない人のほうが少数になっています。

2022年10月までは、ア)転職先の企業型DCが基本の移換先でした。企業型DCがある企業にお勤めの方は、イ)iDeCo加入者になることが選択できなかったためです。

2022年10月以降は、企業型DCでマッチング拠出をしていなければ、イ)iDeCo加入者になる選択が可能になりました。ちなみに、マッチング拠出が定められている規約の加入者数は、403万人と加入者全体(805万人)の約半数です。

そして2024年12月からは、会社員のiDeCo掛金上限額が基本的に2万円になります。その際の制約条件は「企業型DCの事業主掛金+他制度掛金相当額(DB部分)+iDeCo=5.5万円以下」です。

会社員の多くが、イ)iDeCo加入者を選択する契機になりそうです。つまり入社後にイ)iDeCo加入者を選択するのであれば、移換が必要になった時点でiDeCo加入者になっておく、という考え方です。

しかし、判断ポイントが複数あるため、ケースバイケースでの対応となります。イ)iDeCo加入者になれない(もしくは加入者になってもメリットが少ない)のは、下記のような場合です。

・他制度掛金相当額(DB部分)が2.75万円を超えている
・DCの事業主掛金額が5万円を超えている(iDeCo加入者になれない)

・DCの事業主掛金額が3.5万円超5万円未満(マッチング拠出のほうが手間がかからない、DBがある場合はiDeCo加入者になれない可能性もある)

DCを活用して資産形成を続けていくために、身近で相談できる場所(iDeCoのコールセンター等)を確認しておきましょう。
 

津田 弘美/野村證券株式会社 確定拠出年金部

社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。

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