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バブル崩壊の岐路に立つ株式市場 今後もS&P500に投資し続けて大丈夫なのか?

Finasee / 2024年7月25日 13時0分

バブル崩壊の岐路に立つ株式市場 今後もS&P500に投資し続けて大丈夫なのか?

Finasee(フィナシー)

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今週の市場環境について、タイトルをつけるとすれば「天国と地獄」で、どちらにも転びうる状況です。株式市場の状況について、7月11日からのアメリカの5つの主要な株式指数の動きを見てみましょう。

7月11日は、中小型株だけが大きく上昇し、半導体株、ナスダック、S&P500は下落しました。7月12日と15日は、ほぼ同じような動きでした。16日はやや異常な動きとなり、中小型株が大きく上昇しました。17日は半導体株が大きく下落し、ナスダックとS&P500も下落しました。

 

この異常な動きの背景には、11日に発表された消費者物価指数(CPI)があります。CPIは予想よりも良好で、3.1%程度と予想されていたのが3.0%だったため、金融引き締めの時代が終わり、緩和が始まるのではないかという期待が高まりました。しかし、通常なら株価が上昇するはずの状況で、逆に下落してしまいました。

特に半導体株やナスダック、S&P500などは金利低下の恩恵を最も受けやすいはずなのに、下落し、中小型株だけが独歩高となりました。これが今回お話しする「天国と地獄」ストーリーの始まりです。

中小型株の上昇は11日から16日まで続きました。16日には小売統計の発表もありましたが、よく見ると無店舗(オンライン)販売だけが好調で、アメリカ経済を支えるはずの自動車販売などは非常に悪かったのです。

17日には半導体をめぐる不安が一気に噴出し、ダウ平均株価だけがプラスとなり、他の指数は全て下落しました。通常、これらの主要5指数は同じような方向性を示すものですが、この5営業日でこれほど大きな乖離が出るのは極めて珍しいことです。

7月に入ってからの動きを見ると、S&P500は若干のプラスを維持し、ダウ平均の方がパフォーマンスが良く、ナスダックはS&P500よりも低迷しています。一方、中小型株は9%以上のリターンを上げ、半導体株はマイナスとなっています。

 

ここで注目すべきは、中小型株とS&P500の差です。中小型株がS&P500を7%もアウトパフォームしているという事態が、問題の核心なのです。これが天国になるか地獄になるのか、大きな岐路に立っています。

月間のパフォーマンスで中小型株がS&P500を大きくアウトパフォームした事例を上位6つ選びました。今回の2024年7月は第7位にランクされていますが、これはまだ17日までのデータです。7%ものアウトパフォームが問題となっています。

 

過去の事例を見ると、18%、8%、7.9%などのアウトパフォームがありましたが、特に注目すべきは上位2つです。2000年2月と12月のケースで、これはITバブル崩壊の時期です。ITバブルが崩壊していく時も、このように中小型株に大量の資金が流入しました。

ITバブルは突然崩壊したわけではなく、その前に賢明な投資家たちが資金を移動させていました。同様に、1997年8月のアジア通貨危機、2023年12月の利上げピークアウト、2016年11月の利上げ途中、2020年11月のコロナワクチン開発など、それぞれに意味深い出来事がありました。

しかし、バブル崩壊した2000年がトップ2に並んでいることが、潜在的な「地獄」のシナリオを示唆しています。今後、中小型株が圧倒的にアウトパフォームし続け、大型株を圧倒するような状況になれば、市場関係者はバブルの始まりを懸念し始めるでしょう。

 

一方、「天国」のシナリオは、これが一時的な現象に過ぎず、大きな地殻変動が起きていないケースです。その場合、これまでのトレンドが続くことになります。

1ヶ月後に大きな乖離が見られれば、私はこれを何らかのバブルの崩壊の兆候と判断するでしょう。

この現象の本質を理解するために、2021年10月以降の大型株と中小型株の動きを見てみましょう。中小型株は最近大きく上昇していますが、まだ過去のピークには達していません。一方、S&P500は2022年10月に底を打ち、それ以降上昇トレンドが続いています。

 

一見すると、現在起きている現象は、出遅れていた中小型株が単純にS&P500に追いつこうとしているだけのように見えます。しかし、本当にそうなのでしょうか。

大型株/中小型株レシオ(S&P500の株価をラッセル2000で割った値)を計算してみると、過去2〜3年間は大型株が優位だったことがわかります。

しかし、より長期的な視点で見ると、大型株と中小型株のどちらが優位かは、景気循環とは必ずしも関係がないようです。

  

例えば、1990年代前半は景気が良くなる局面で大型株が優位でしたが、後半はそうではありませんでした。2000年代に入ると金融危機まで景気は良かったものの、中小型株の方が好調でした。つまり、景気循環と大型株・中小型株の優位性には明確な関連性は見られません。

金融政策との関連性も、残念ながら明確ではありません。利上げ期や利下げ期に応じた明確なパターンは見られませんでした。

 

実は、この現象の本質は大型株にあります。つまり、中小型株が良いか悪いかではなく、大型株が良ければ大型株に資金が流れ、大型株がダメなら中小型株に流れるという単純な構図なのです。

これを裏付けるのが、S&P500の実績ベースのPER(株価収益率)と大型株/中小型株のレシオの関係です。S&P500のPERが上昇する時期は、一般的にS&P500が強くなります。PERは投資家の期待値を表すもので、特に大型株には独自の期待値があります。

 

現在の「マグニフィセント7」と呼ばれる大型テクノロジー株は、AIなどのイノベーションへの期待から高いPERを維持しています。しかし、もしこれらの株のPERが下がり始めれば、つまり期待値が下がれば、資金は中小型株に流れる可能性があります。 

株式市場の本質を考えると、大きな企業がさらに大きくなる夢を見るよりも、小さな企業が大きくなる夢を見る方が、より自然な期待と言えます。しかし、現在の市場では、かつてのITバブル時代のように、大企業が無限に成長し続けるような夢が描かれ、大型株のPERが上昇し続けてきました。その影響で、中小型株は相対的に下落していたのです。

今、資金が一気に中小型株に戻っているのは、大型株に描いていた夢が幻想だったと投資家が気づき始めた可能性があります。もしこの傾向が今月いっぱい続き、中小型株へのさらなる資金流入が続けば、大型株との乖離がさらに拡大し、「地獄」のシナリオが現実化する可能性があります。

株式市場は結局のところ、投資家という群衆の期待値の集合体です。これまで大型株に集中していた資金が、突如として方向転換すれば、バブルの崩壊につながる可能性があります。そして、多くの場合、バブルの崩壊は事後的にしか認識されません。

一方で、適切なバランスを保つことができれば、健全な市場が続く可能性もあります。月末までの動向に注目する必要があります。今後も注視が必要でしょう。

 

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公式チャンネルと7月20日 放送分はこちらから

岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。

マーケット・アナライズ編集部

「マーケット・アナライズ Connect」全国無料放送のBS12 トゥエルビで隔週土曜あさ6時~放送中金融ストラテジストの岡崎良介と、証券アナリストの鈴木一之が、毎週、株式市場や金融トピックスに精通したゲストを迎えて、投資未経験者から上級者まで、投資情報を必要としたあらゆる人たちを対象にマーケット情報をお送りします。

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