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「一体、いくらあるの?」ストレスで買い物依存になった美容部員が家族への“借金バレ”に安堵したワケ

Finasee / 2024年8月14日 11時0分

「一体、いくらあるの?」ストレスで買い物依存になった美容部員が家族への“借金バレ”に安堵したワケ

Finasee(フィナシー)

自分優先な親たち

北海道在住の森山吹子さん(仮名・40代・既婚)の両親は、高校卒業後、大手建設コンサル会社で出会い、交際。母親のプロポーズで結婚し、母親が27歳のときに兄が、28歳のときに森山さんが生まれた。

結婚を機に母親は専業主婦になったが、森山さんが幼稚園に入園すると、結婚前まで勤めていた会社の仕事を在宅で再開し、森山さんが中学生になると会社勤務に戻った。

「父は口数が少なく家族に関心がなく、現役時代はゴルフばかり行ってました。母は社交的でプライドも高くハッキリとした性格で、家庭より自分優先な人でした」

子どもの頃は、母方の祖父母と同居していた。

「母方の祖父は口数が少なく温厚な人で、町内のためにいろいろな活動をしていました。祖母は母そっくりで、見栄っ張りでプライドが高い人でした」

祖母と母はそっくりと言うが、口数が少なく、“家庭より外優先”という点で祖父と父親もよく似ている。

森山さんは物心つくと、祖母も母親も兄ばかり大事にしていることに気付いた。洋服は、兄は着たいものを買ってもらえていたが、森山さんは兄のお古ばかり。森山さんが「◯◯に行きたい」と言えば頭ごなしに反対されるが、兄には「お金は出してあげるから行っておいで」という具合だった。

「父からは、『女の子はお嫁に行くから学歴は必要ない』『良い相手と結婚するのが幸せ』と言われていました。私は幼い頃から両親や祖母の扱い方が兄と違うことは感じていましたが、中でも強烈だったのは、幼稚園の頃、兄の真似をして母に甘えたら、私だけ『気持ち悪い』と言われたことです」

森山さんは母親に抱きしめてもらった記憶もなければ、遊んでもらったこともないという。

「母は家事が嫌いで、中学生になってからは、私が家事をしていました。『外でアルバイトしたいと言われたら家事をしてもらえなくなるから』と、バイト代として毎月2万円くれました。父は定時帰りがほとんどでしたが、母はよく飲み歩いていたし、繁忙期は徹夜で帰宅しない日もありました。まるで父親が2人いるみたいでした……」

虚飾の世界からの転落

森山さんは高校卒業後、大手化粧品メーカーに入社し、美容部員として働き始める。「1人暮らしをしたい」と言ったが、「するなら2度と敷居を跨(また)がせない」と父親から脅され、渋々実家から仕事に通っていた。

「職業柄、美意識が高い集団に属し、最先端のメイクやファッションに身を包んだ先輩たちはかっこ良くて、若かった私はすぐに影響を受けました。お給料が出れば洋服や靴を爆買いし、ボーナスが出るとハイブランドのバッグを入手。当時はノルマもあり、売上額に達しない日は自ら高級シリーズを購入し、数字を作っていました。今思えば、先輩たちも借金していたのだと思います」

森山さんはカードのキャッシングや消費者金融を利用するようになった。

当時の森山さんには高校の時から交際していた同級生の彼がおり、スーツや下着、食べ物などを買い与えるだけでなく、彼に会いに行く旅費もホテル代も食事代も全て森山さん持ちだった。

やがて森山さんは、借金やノルマによるストレスでメンタルをやられ、22歳で退職。さらに、森山さんを金づる扱いしていた交際中の彼には振られてしまう。
心も体もボロボロになった森山さんには、

・消費者金融2件
・信販会社1社
・カードのキャッシング満額
・カードも満額
・矯正下着のローン

合計230万円の借金だけが残り、過食や大量のアルコール摂取を繰り返すようになった。

父親の会社での出会い

森山さんは、心療内科で「不安障害との診断を受け、精神安定剤を処方される。母親に伝えると、「気持ちが弱いだけだ」と冷たくあしらわれた。仕事をせず休養している森山さんのことが気に入らない母親は、日が経つほどイライラし始める。

そんな不機嫌な母親にうんざりしていた父親は、森山さんに自分が勤めている建築コンサル会社でのアルバイトを勧める。父親同様、母親が怖かった森山さんは、二つ返事で受け入れた。

そんなある日、仕事から帰宅すると母親が言った。

「一体、いくらあるの?」

怒ったような、呆れたような口調だった。森山さんは、「あー、バレた」と思うと同時に「これで苦しみも終わる」と思った。

母親は勝手に森山さんの部屋へ入り、森山さんの借金返済関係の書類を見つけたらしい。

薬物依存症で逮捕された俳優が、逮捕される瞬間、「ありがとうございます」と言ったというが、「これで苦しみも終わる」という言葉から、森山さんも買い物依存症だったことがわかる。

借金は、全額両親が肩代わりしてくれることになった。

その翌年、森山さんは道内の地域開発に関わる会社に転職し、建築コンサル会社で知り合った3歳上の男性と交際がスタート。

男性は教員になる夢をかなえるために会社を辞職し、教員採用試験の勉強をしていた。そして2年後、見事合格すると、森山さん26歳、男性29歳で結婚した。

地獄への兆し

森山さんは結婚後、夫の転勤のため退職し、29歳のときに長男を出産。33歳のときに、夫の地方勤務終了を見越して夫の実家を2世帯住宅へ建て替える。だが、地方勤務が延長になったため、完成後は義両親だけ入居した。

「夫は親孝行のつもりで、まだ住んでもいない2世帯住宅の固定資産税や光熱費だけでなく、義両親にお小遣いをあげたうえ、義両親の家電が壊れる度に買ってあげていました。『1人っ子で、大切に育ててもらったから恩返ししたい』と言われたら、専業主婦の私は何も言えませんでした」

しかし、自分たちが住んでいる賃貸の家賃や生活費、2世帯住宅のローンなど、想像以上に出費が膨らむ。夫のボーナスも1/3は住宅ローンの返済に消え、夫の趣味のクラッシックカーの維持費が重くのしかかる。

そこへ追い打ちをかけるように、想定外の第2子の妊娠が発覚し、34歳で次男を出産。
長男が小学校に上がるタイミングでようやく地元に戻れることとなる。

36歳の森山さん、39歳の夫、6歳の長男、1歳の次男の4人と、先に住んでいた80歳の義父と68歳の義母との2世帯住宅での同居が始まった。

●結婚をきっかけに、ようやく森山さんに穏やかな日々が訪れそうに思えましたが、高齢の義両親との同居生活は新たな地獄の始まりでした。義父からの度重なる人格否定に、森山さんは家族に隠れてまた借金を積み重ねてしまいます……。後編【「お母さんもADHD」義両親に土下座、依存症の借金で学資保険を解約、息子は不登校…それでも手にした幸せな家庭】

旦木 瑞穂/ジャーナリスト・グラフィックデザイナー

愛知県出身。アートディレクターなどを経て2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、終活・介護など、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。著書に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社)がある。

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