「こんにちは」単身赴任帰りの夫のよそよそしさに妻あ然…20年ぶりに同居する夫婦が絆を取り戻した方法
Finasee / 2024年8月2日 11時30分
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Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
相談者の満子さん(仮名・53歳)は28年前に2歳年上の充彦さん(仮名)と結婚し、勤めていた会社を退職しました。結婚後は、充彦さんの転勤に伴い満子さんも各地を転々とする生活。最初こそ旅行気分で楽しめたものの、しばらくたつと「今日は何して過ごそう……」と朝からため息をつく日が増えました。
そこで考えたのが働くこと。しかし転勤族がゆえに就職活動が難航し、パート勤務で働き始めます。ただ、子どものいない満子さんはパート仲間の輪に入れず、ここでも強く孤独を感じるようになります。
家でも職場でも居場所を見つけられない満子さんでしたが、そんな状況が一変する出来事が起こります。満子さんの母親が脳梗塞で倒れたのです。これでようやく孤独から解放されると考えた満子さんは、母親の援助で京都の実家の近くに家を買い、治療とリハビリを支えることに決めました。
それと同時に、東北で勤務している充彦さんとは別居生活がスタート。だんだん疎遠になる夫婦関係でしたが、20年の月日がたち、役職定年を迎えた充彦さんが戻ってくることになりました。
●前編:【キャリア断絶、孤独、自己嫌悪…夫の転勤で “居場所”を作れなかった女性が見つけた「1つの希望」】
簡単に埋まらなかった夫婦の深い溝20年ぶりに転勤生活を終えた充彦さんが帰宅しました。待ちに待った帰宅のはずなのに、満子さんが「お帰り」と声をかけると、返事は「ただいま」ではなく、「こんにちは」。
まるで他人のようだと感じショックを受けた満子さんでしたが、すぐに以前の夫婦関係に戻れるはずだと信じることにしました。
ところが、再び一緒に暮らし始めて2カ月たっても充彦さんのよそよそしさは続きます。会話は次第に減り、重苦しい沈黙が日常となっていきました。
夜遅くまで帰らない夫。離婚が頭をよぎるそのうち夜遅くまで帰ってこなくなった充彦さん。休日も朝早くから出かけて行き、顔を合わせる時間は限られるように。ひとりで過ごす時間が増えた満子さんは、次第に夫婦の今後について深く考えるようになります。
「どこで間違えたんだろう……」
このままの状況が続くなら、一緒になんて暮らせない。「離婚するしかないかも。でも、ひとりで暮らせるお金の余裕はなさそう」と、筆者のもとを訪ねて来られました。
離婚後の生活を考えるとき、住まいの確保と経済的な自立が不可欠です。満子さんの場合、京都の自宅はローンもなく自分名義。現在パートで働いて得ている収入は月8万円。住まいは確保していますが、経済的には厳しい状況です。ただ、勤務先は65歳定年制で、延長雇用や正社員になる道も用意されています。正社員への転換ができれば、ひとりになっても生活は守れそうです。
ただ、満子さんはコミュニケーション不足を嘆いているだけで、充彦さんを嫌いになったわけではない様子。だとすると、離婚を考える前にすることがあるはずです。
これからの人生、ひとりで? それともふたりで?まずは満子さんの本音です。平均寿命で考えるとあと30年。これからの人生をひとりで自由気ままに過ごしたいのでしょうか。それとも充彦さんと一緒に生きていたいのでしょうか。
満子さんの想いは、「できれば、また仲良く暮らしたい」でした。「でも、私が転勤先から逃げ出しちゃったから、こんな状況になってしまったのも仕方ないわね」とあきらめ顔。であればと、筆者から2つの提案をしました。
まずは、充彦さんと向き合って心の内を聞くこと。「お帰り」の返事が「ただいま」ではなく、「こんにちは」だった理由が分かれば、解決の糸口が見つかるかもしれません。もう1つは、話をするきっかけを作ること。たとえば、一緒にできる趣味を持ったり、動物を飼って一緒に世話をしたりすることで、自然に会話ができるようになるかもしれません。
筆者自身も夫とのコミュニケーションは、もっぱらゴルフ。お互い仕事で忙しく普段はあまり話しませんが、一緒にゴルフに行ったりゴルフツアーを観戦したりしながら、夫婦の絆を細々とつないでいます。
しばらくして満子さんから、「離婚について考えることを、先延ばしにする」と連絡がありました。勇気を出して充彦さんと向き合った結果、誤解が解けたのだそうです。
充彦さんが「ただいま」ではなく、「こんにちは」と言ったのは、京都の家は満子さんの母の援助で建てた家で、自分の家だとは思えなかったからでした。また、役職定年後は関連会社に転籍になり、慣れない仕事でストレスが溜まっていたようです。それもあって毎日のように飲みに行っていたことが分かりました。充彦さんもまた、自分の居場所を見つけられず、孤独を感じていたのでした。
充彦さんとのコミュニケーションを経て、自分のことばかり考えて、夫の気持ちを理解してこなかったことを反省した満子さん。充彦さんが子どものころ犬を飼っていたと聞き、次の休みに一緒に保護犬を見に行くことに決めたそうです。
20年もの月日は簡単には取り戻せません。変に期待せず、少しずつ歩み寄ることで、再び心を通わせることができるのではないでしょうか。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
辻本 由香/つじもとFP事務所代表・一般社団法人WINK理事
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、相続手続カウンセラー、50代からのくらし(医・職・住)と資産を守るファイナンシャルプランナー。おひとりさま・おふたりさま×特有の課題・お金の問題の事例などが得意分野。企業の会計や大手金融機関での営業を経て、2015年に、保険や金融商品を販売しないFP事務所を開業。個別相談の他、企業・病院・大学などでの講演も行っている。
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