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認証不正に物流2024年問題…課題山積の自動車業界にあって強気な業績予想の陸送サービス企業とは?

Finasee / 2024年8月2日 7時0分

認証不正に物流2024年問題…課題山積の自動車業界にあって強気な業績予想の陸送サービス企業とは?

Finasee(フィナシー)

 

自動車販売会社向けの車両輸送や中古車オークションの運営などを手掛けるゼロ(証券コード:9028)について、今期および来期に渡る業績予想を紹介する。同社は1961年に日産の完成車輸送を請け負う子会社「日産陸送」として設立され、2001年にMBO(マネジメント・バイアウト)により日産グループから独立し、2005年に東証2部(現スタンダード市場)に上場している。国内自動車関連事業、ヒューマンリソース事業、一般貨物事業、海外関連事業の4事業を展開しており、主力の国内自動車関連事業が売上高全体の約44%、ヒューマンリソース事業が約15%、一般貨物事業が約5%、海外関連事業が約36%を占める。

国内自動車関連事業では、法人顧客向けに新車・中古車の納品前車両整備や車両陸送を行っている。先述の通り日産の子会社として設立されたが、現在は他社メーカーの車両輸送も請け負っている。乗用車の販売はコロナショックや半導体不足により一時的に落ち込んだものの、今では回復傾向にあり、2019年の水準まで持ち直す見込みがある。また中古車の輸送単価(約2万円と推定)は新車(約1万円と推定)の2倍であるが利益率は同じため、中古車需要の増加が国内自動車関連事業の利益率改善に寄与する可能性がある。さらに同社は2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限規制がかかるいわゆる「2024年問題」に対し、2024年1月1日受注分から運賃の平均20%値上げを発表している。価格改定の浸透には半年から1年かかると予想されるため、車両輸送需要の回復とともに2025年6月期に成長が見込まれる事業である。

ヒューマンリソース事業は、法人顧客向けに送迎用ドライバー等の派遣を行う人材派遣事業を展開している。コロナ禍の収束により、ドライバー人材の需要が回復したことで増収増益となっており、新規契約の締結も進んでいるため、さらなる成長が見込まれる。もっとも、労務費の増大で利益率が悪化する懸念もある。

一般貨物事業は、北九州地区に点在する倉庫群と苅田港(福岡県京都郡苅田町)を中心に、原材料の輸入・保管・納入や製品の引き取り・保管・出荷配送など法人顧客向けに多様なサービスを提供している。決算短信に記載されている不採算顧客からの失注は単一の顧客からのものであり、一般貨物事業の売上高に大きな影響を与える確率は低いと考えられる。

海外関連事業は、マレーシア向けに日本全国から仕入れた中古車やそれらに関連するパーツを輸出する中古車輸出事業が売上の約9割に上り、残りは完成車を解体して輸出するCKD事業のほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内や中国での車両輸送事業が占めている。2022年6月期から顧客満足度向上による市場占有率上昇に円安や半導体不足が重なったことで、マレーシア向け中古車輸出の特需が起き、輸出台数が大幅に増加している。

直近の決算は5月に開示された2024年6月期3Q決算である、国内自動車関連事業、海外関連事業を中心に成長し増収増益で着地した。

下記が今回行った業績予想である。

 

国内自動車関連事業の8割を占める国内輸送事業の売上高を予測するため、輸送台数と輸送平均単価を下記のように算出した。

まず2023年6月期に新車・中古車と合わせて約360万台の輸送を受注していること、2023年6月期1-3Qと2024年6月期1-3Qまでの自動車輸送台数を比べると3.8%増加していることから年間の輸送台数を予測した。次に日本自動車販売協会連合会の新車・中古車の登録台数に関する統計データから各四半期の輸送台数を割り当て、その輸送台数と国内事業の売上高を割ることで平均輸送単価を算出した。20%の価格改定を半年から1年かけて織り込むと仮定し、2025年4Qで平均輸送単価を1.7万円と置いた。同社によると2024年問題で約8%労働時間が削減されるため、その分輸送台数の減少が予想されるが、デジタル化や分業化による業務効率上昇を考慮して2025年6月期の輸送台数を2024年6月期と同水準に見積もった。

ヒューマンリソース事業はコロナ収束による人材需要の回復が一巡した後も約5%の成長を継続しているため、その傾向を基に前年比の成長率を決定した。しかし2025年度はさらなる人件費高騰が予期されるため、営業利益率は3.5%とした。

一般貨物事業は、不採算顧客から撤退したが売上高や営業利益に問題はなく、2024年6月期1-3Qと同水準とした。また川崎複合物流センターの火災による特別損失が保険で補填されるため、その金額を2025年1Qに計上した。

海外関連事業の9割を占める中古車輸出事業売上高も、国内輸送事業売上高と同様のプロセスで予測した。マレーシアでの中古車需要は半導体不足が解消した現在も衰えておらず、2024年6月期の輸出台数は前年比で約10%伸びている。また2024年6月期3Qは日本からの新車輸出が旺盛になったことに伴い、自動車運搬専用船の船枠が限られたことで中古車輸出台数が制限されたが、円安の後押しを受け引き続き輸出台数は増加すると予想し、2025年6月期上半期までは前年比+8%、下半期は同+5%のモデルを作成した。

以上の予想と会社予想、四季報予想との比較を以下に示す。

 

handsの予想では2024年6月期の売上高、経常利益ともに会社予想、四季報予想を上回っており強気となった。

会社予想がhandsの見通しを下回っている背景としては、ダイハツの不正行為問題による出荷停止の影響や中古車業界の動向、2024年問題に伴うドライバーの労働時間短縮が輸送台数を減少させる懸念などが挙げられる。投資判断を下す際にはこのような点も考慮したい。

hands

オルタナティブデータのプロバイダー。購買情報や位置情報といった様々なデータを株式投資に役立つ指標として加工し、Webサービス「PERAGARU」を通じて機関投資家や個人投資家に提供している。
 

橋本 達也/株式会社hands アナリスト

機関投資家向けの日本株リサーチサービス「PERAGARU」の運営メンバーでアナリスト。主に小売と食品を主要領域とし、オルタナティブデータを用いた分析が得意。

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