分散投資をした方が良いと聞き、eMAXIS Slimの「オルカン」と「S&P500」に投資しようと思います。分散効果は十分ですか?
Finasee / 2024年7月31日 20時0分
Finasee(フィナシー)
三菱UFJアセットマネジメントのeMAXIS Slimシリーズの二枚看板、いわゆる「オルカン(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー))」と「S&P500(eMAXIS Slim米国株式(S&P500))」は人気の高い投資信託です。純資産総額はそれぞれ3兆9696億円と5兆1953億円に上り、国内で2位と1位にランクインしています(2024年7月24日時点。ETFと公社債投信を除く公募投信)。
とても人気のある銘柄ですから、この2本を組み合わせて運用している人もいるかもしれません。しかし、分散投資の効果は限定的なものになるでしょう。
なぜオルカンとS&P500を組み合わせても分散投資の効果が小さいのか、わかりやすく理由を解説します。
※S&P500は株価指数の名称ですが、この記事ではeMAXIS Slim米国株式(S&P500)のことを指します。
オルカンも大部分は米国株 銘柄ベースでも重複大きいオルカンとS&P500を組み合わせても分散投資の効果が小さい理由は、投資対象の重複が大きいためです。
S&P500は、原則として米国株式100%で運用される投資信託です。一方、オルカンは全世界の株式で運用されます。
ただし、オルカンの投資対象の6割はアメリカ株式です。2024年6月末時点では63.5%をアメリカ株式が占めています。
つまり、オルカンとS&P500はどちらもアメリカ株式の比重が大きい投資信託といえます。両者を組み合わせても、実際の投資対象のほとんどはアメリカ株式が占めることとなります。
銘柄ベースでも重複は多い傾向にあります。2024年6月末時点で、オルカンとS&P500は組入上位10銘柄のうち9銘柄が共通しています。さらに上位7位までは順位も全く同じです。
【組入上位10銘柄(2024年6月末時点)】
※オルカン:eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)、S&P500:eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 出所:三菱アセットマネジメント eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 月報 、三菱アセットマネジメント eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 月報実際の分散効果も確認!ゼロじゃないが低い実際、分散投資の効果は小さいのでしょうか?確認してみましょう。設定はオルカンの方が若いため、オルカンが運用を開始した2018年10月末からチェックします。
オルカンとS&P500、そして両ファンドを50%ずつ所有したときの値動きは以下の通りです。50%ずつ所有は、両ファンドの中間に位置するとはいえ、値動きに違いはほとんどありません。やはり分散投資の効果は小さかったといえそうです。
出所:三菱アセットマネジメント eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 設定来データおよび三菱アセットマネジメント eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 設定来データより著者作成両ファンドへの投資で分散投資の効果が十分に得られない理由は、オルカンとS&P500の値動きがほぼ同じだからです。
分散投資でリスクを下げるには、値動きの違う銘柄を組み入れることが重要です。例えば株式型と債券型といった投資対象が違う銘柄を組み合わせることなどによって、各銘柄のプラスとマイナスが打ち消し合い、全体のリスクが小さくなるのです。値動きが同じ銘柄を組み入れても、分散投資の効果は得られません。
そして、先述したとおり投資対象の重複が大きいオルカンとS&P500は、値動きが非常に似ています。月次で見ると、リターンの正負が反転したのは68回中3回のみでした。基本的にはオルカンが上がる(下がる)なら、S&P500も上がる(下がる)傾向が読み取れ、分散効果は薄いことがわかります。
出所:三菱アセットマネジメント eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 設定来データおよび三菱アセットマネジメント eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 設定来データより著者作成組み合わせるなら米国株式以外を 「資産の分散」も効果的これまでの解説を踏まえると、分散投資をしたいならオルカンとS&P500を組み合わせるよりも、「オルカンまたはS&P500」に「米国株式以外に投資する投資信託」を組み合わせることをおすすめします。
例えば、国内株式型やヨーロッパ株式型、新興国株式型などを組み合わせると「地域の分散」が働き、分散投資の効果が生じやすくなります。
また、資産ベースで分散投資を行う「資産の分散」も効果的です。オルカンとS&P500は株式のみで運用されるため、資産を分散させるのであれば株式以外が選択肢となります。株式以外の資産では先述した債券のほか、REIT(不動産投信)、金などが代表的です。
地域と資産の分散に注意して投資先を選ぶことで、分散投資の効果はより大きくなるでしょう。
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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