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【米大統領選】トランプ氏、ハリス氏どちらが勝っても、円高になっても…S&P500への投資は「一喜一憂せず続ける」が正解の理由

Finasee / 2024年7月30日 21時0分

【米大統領選】トランプ氏、ハリス氏どちらが勝っても、円高になっても…S&P500への投資は「一喜一憂せず続ける」が正解の理由

Finasee(フィナシー)

トランプ氏銃撃事件、バイデン氏撤退…波乱の続くアメリカ大統領選挙

トランプ大統領候補に対する銃撃事件で、「もしトラがほぼトラになった」という声が、方々から聞こえてきました。いささか不謹慎な見方かもしれませんが、トランプ候補が銃撃された後、自分の無事をアピールするかのように高く右手のこぶしを突き上げた写真は、「何者にも負けない強いアメリカ」を具現するものでした。

この暗殺未遂事件が起こったのは7月13日(日本時間14日)のこと。それから8日を経た同月21日、バイデン大統領は11月に行われる大統領選挙から撤退することを発表し、自分に代わる大統領候補として、カマラ・ハリス副大統領の支持を表明しました。

現時点において、ハリス副大統領の実力は未知数ですが、立候補を表明した7月21日から1週間足らずで、2億ドルもの献金を集め、かつモーニング・コンサルタントの全米世論調査によると、支持率がトランプ候補の47%に対して45%と僅差に迫っています。実際にどうなるのかは11月の選挙を迎えないと分かりませんが、選挙戦の行方を巡って、マーケットも落ち着かない展開が続きそうです。

現時点において、ハリス候補がどのような経済政策を打ち出すのかは未知数です。ハリス候補は、バイデン大統領が選挙戦を撤退することを表明した後、「バイデン大統領の過去3年間の業績は、比類ないものだ。私たちは彼が国に尽くしてくれたことに深く、感謝している」と述べているので、バイデン大統領がこれまで行ってきた政策を、180度変えることにはならないと思われます。

ただ、ハリス候補が過去、経済政策についてどのような発言をしたのかを、第一生命経済研究所がまとめています。それを引用してみましょう。

【税制】
・トランプ減税の代替策として、所得10万ドル以下の世帯に対する最大500ドル/月の税額控除を提案(2018年)。
・21%の法人税率を35%へ引き上げ(2019年)。現状、バイデン大統領は28%への引き上げ、トランプ候補は15%か20%への引き下げを主張。

【通商】
・自身は「保護貿易主義者ではない」と言及(2019年)。
・トランプ候補の掲げる全輸入品への10%一律関税を「生活コストの上昇を招く」と批判(2024年)。

【環境】
・「完全なクリーン経済(100percent clean economy)」の実現を掲げ、2035年までにすべての新車販売をゼロエミッション車とすることや、2045年までにカーボンニュートラルを実現することを提案(2019年)。
・気候変動対策のために今後10年で官民総額10兆ドルの環境投資が必要としたうえで、炭素税導入を提案(2019年)。

こうしたハリス候補の発言内容を見る限りにおいて、バイデン大統領がこれまで行ってきた政策から大きく乖離(かいり)するものは見当たりません。バイデン大統領が任期中に行ってきたのは、国内においては低所得者層や中間層を底上げすることで経済の活性化を目指し、気候変動に配慮し、対日的には日本との関係性を重視する、というものでした。

また、通商政策としては中国製EVの関税を現在の25%から100%に引き上げることや、電気自動車用リチウムイオン電池や半導体などの関税も引き上げることを発表し、中国向け半導体の輸出規制を強化する措置も打ち出してきました。

これらの政策は、ハリス候補が大統領になったとしても、恐らくは踏襲されていくでしょう。

もしトラが現実化したら…日本企業は阿鼻叫喚!?

問題は、「もしトラ」が現実化した時です。

たとえば税制ひとつを取っても、トランプ候補を擁する共和党は、小さな政府を“是”とする政党なので、規制緩和と共に減税を実施するでしょう。実際、ニュージャージー州ワイルドウッドで5月に開かれた集会の場で、トランプ候補は「バイデン増税の代わりに中所得層、高所得層、低所得層、ビジネスを対象とするトランプ大減税を提供する」と語っています。6月13日には、自身が大統領に就任した時は、法人税率を20%に引き下げることを、米財界首脳らとの非公開会合で発言したというニュースも流れました。

財政赤字で日本が米国のことをとやかく言えた義理ではありませんが、米国も巨額の財政赤字を抱えています。そのなかで大減税が可能なのかどうか定かでありませんが、財政赤字が深刻化するとの見方が広まれば、米国の長期金利には上昇圧力が加わる反面、米ドルへの信認低下から、米ドル売りが進むことも考えられます。

米ドル売りという点では、トランプ候補の保護主義的なスタンスに合致してきます。トランプ候補は通商政策において、日本を含む外国から輸入される製品を対象に、原則として10%の関税をかける方針を打ち出しています。理由は、米国の貿易赤字を削減するためです。

当然、10%の関税をかけることになれば、日本から米国への輸出に影響が及ぶでしょう。それに加えて懸念されるのが、為替の動きです。7月には1ドル=161円台まで進んだ米ドル高・円安ですが、7月25日の時点で1ドル=151円95銭まで米ドル安・円高が進みました。これまでの米ドル高が、米国の産業界にとってネガティブだと判断されれば、ここから先、米ドル高・円安が大きく進む余地は、かなり限定されると考えられます。

ちなみに帝国データバンクが行った「企業の想定為替レートに関する動向調査(2024年度)」によると、平均の想定為替レートは1ドル=140円88銭でした。現時点において、米ドル/円は1ドル=154円台なので(7月30日時点)、まだ10円以上の円高が進まない限り、日本企業の業績悪化要因にはなりませんが、7月中のわずか1カ月間で10円幅の円高が進んだことを考えれば、1ドル=140円を割り込むケースは、十分に想定されます。仮にそこまで米ドル安・円高が進めば、日本の輸出企業を中心にして業績悪化懸念が強まり、株安に転じることも十分に考えられます。

ただ、より個別の動きについて言うならば、株式市場全体の値下がり圧力が強まったとしても、防衛関連企業にとって、トランプ大統領の誕生はポジティブな材料かもしれません。中国との緊張関係が今以上に強まる可能性があるからです。

加えてトランプ候補は、同盟諸国に対し、さらなる防衛関連の資金負担を求めてくる可能性もあります。中国との緊張関係に加え、防衛関連費が増加するとなれば、防衛関連企業の株価は堅調に推移するでしょう。

ここからの注目点は、ハリス候補がどのような経済政策を打ち出してくるのか、それが元バイデン政権のそれと、どのくらいの違いがあるのか、加えてトランプ候補がどの程度、保護主義的な経済政策を考えているのか、といったことでしょう。

S&P500等のインデックスファンド積立派は大統領選の展開に一喜一憂する必要ナシ

そして、ハリス候補とトランプ候補のどちらが優勢かによって、マーケットは波乱含みの展開もありそうですが、長期的に見れば、この手の話は一時的なマーケットのかく乱要因です。

このところの米ドル安・円高で、オール・カントリーやS&P500のファンドに投資している人は、為替差損によって若干の値下がりを余儀なくされていると思いますが、S&P500のチャートを過去50年くらいで見れば、1987年のブラックマンデーも、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、いずれもほんのわずかなへこみに過ぎません。

長期的な米国経済の成長ポテンシャルからすれば、円高が進んだとしても、それを補って余りある株式の値上がり益を享受できる可能性もあります。

目先の相場の動きに一喜一憂せず、値下がりしたところは少し多めに買っておくくらいのスタンスで臨むのが良いでしょう。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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