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「毎月10万円は推し活に」男子バレーにハマりすぎた女性が“推し最優先の生活”と引き換えに失ったもの

Finasee / 2024年8月16日 11時0分

「毎月10万円は推し活に」男子バレーにハマりすぎた女性が“推し最優先の生活”と引き換えに失ったもの

Finasee(フィナシー)

社会人5年目となる今井瑠衣さん(仮名)は、就活生の頃から日本の男子バレーに熱を上げていました。実家暮らしなのをいいことに、毎月10万~20万円を遠征費用や“推し”グッズの購入に費やしてきました。今井さんにとって仕事は推し活の資金稼ぎに過ぎず、自己研鑽やキャリアアップへのモチベーションはほとんどなかったそうです。

そんな時、今井さんは同期の中里華菜さんと5年ぶりの再会を果たします。入社時は「何をやらせても不器用でもっさりした子」という印象だった中里さんが、なんと今井さんの上司となって現れたのです。中里さんから食事に誘われ、意外な打ち明け話をされた今井さん。それを機に、今井さんは「推し活で満ち足りた自分」に疑問を抱くようになります。

〈今井瑠衣さんプロフィール〉

東京都在住
28歳
女性
会社員
シングル、実家で両親と同居
金融資産8万円

***
 

6年ほど前から、男子バレーに沼っていました。就活生の頃に仲の良かった友達から日本代表の試合に誘われたのがきっかけです。

3年前からは“推し”もできて、ファンクラブに入会して動画やSNSは欠かさずチェックし、限定グッズもオール買い。パリ五輪のツアーは抽選に外れてしまいましたが、その前に行われたネーションズリーグは北九州とマニララウンドに応援に行きました。

仕事へのモチベーションが低下する中で知った驚きの事実

自宅通勤をいいことに、毎月10万~20万円は推し活に費やしています。

推しの魅力はなんと言ってもビジュの強さです。そこらの俳優やアイドルを蹴散らす神ルックスに190cm近い長身。それで性格や頭も良さそう、加えてバレーもうまいのですから、一体、天からいくつ授かりものをしたんだよ、と思います。

推し活と出会って人生が変わり、特にここ3年間は推しが最優先。その次が友達で、ぐんと下がって仕事という順番です。仕事には「推し活の費用を稼ぐ手段」程度のモチベーションしか持てなくなっていました。

ですから、SNSに職場の後輩からこんなメッセージが届いた時は驚きました。

「中里華菜さんって、先輩の同期ですよね? 7月からうちのマネージャーで来るらしいですよ」

え? 中里華菜って、あの華菜のこと?

推しでいっぱいになった頭の片隅からどうにか引っ張り出した入社直後の記憶では、華菜は決して感じは悪くないのだけれど、何をさせても要領が悪い愚鈍な女という印象でした。その後、華菜は営業部に、私はマーケティング部にと配属が分かれ、それなりに大きな会社だったこともあって、ほとんど接点がなかったのです。

慌てて営業部にいる別の同期に問い合わせると、「知らなかったの? 華菜は今、うちのエースだよ」と言うではありませんか。

何でも、一昨年あたりから立て続けに大型商談を成約に導き、新社長の有能な若手や女性をどんどん抜擢(ばってき)するという方針に沿って主任をスキップしてマネージャーに昇進したのだとか。そして、「人材と経費の無駄遣い」と陰口を叩かれるマーケティング部に改革の旗手として送り込まれてくるらしいのです。

なんだか、悪い冗談を聞かされているような気持ちになりました。5年前の入社時には見下していた同期がマネージャー、片や私は平社員のままですから、華菜の部下になるわけです。

入社時とは完全に逆転してしまった立場

確かにこの5年間は推し活命で、仕事で大した実績は上げていません。むしろ、就業中も暇さえあれば推しの動画をチェックし、観戦ツアーで有休を取りまくるなど、上司や同僚に決していい印象は与えていないでしょう。

そんなダメダメ社員の私が、マネージャーの華菜に鉄槌(てっつい)を下される。想像しただけでもぞっとします。

5年前の入社時には、むしろ私の方が期待の星でした。

学生時代に結構大きなサークルのマネージャーを務めていた関係で、エクセル使いには自信がありました。ITリテラシー低めのおじさんが多いマーケティング部ではそれが重宝され、データ分析などの仕事を全面的に任されていたのです。

しかし、私はそうしたスキルの上にあぐらをかき、例えばデータの分析に新しい視点を加えるといった努力は一切せず、言われたことだけをさっさと片付けてそれでよしとしてきました。だって、推し活の方が断然楽しいのだから仕方ありません。

だからといって、「こんな会社辞めてやる!」と開き直ることもできません。ネーションズリーグの遠征費などの引き落としで夏のボーナスも一瞬にして消え、口座残高は10万円を切っています。

転職したくても積み上げたキャリアが何もないのですから、いくら売り手市場とはいえ、待遇面で足元を見られるのは必至です。今の給料でさえ足りないくらいなのに、これ以上収入が減ってしまったら推し活に支障をきたします。

そんなこんなで何とも中途半端な気持ちのまま、華菜マネージャーが就任する日を迎えてしまったのです。

●その後2人は食事に行くことになり、中里さんから意外な話を打ち明けられました。後編【「本当に感謝してる」“推し活命”の女性がキラキラ上司になった同期に打ち明けられた「意外な話」】で詳説します

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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