信託報酬ってなんですか?投資信託の購入時、チェックすべきでしょうか?
Finasee / 2024年8月7日 12時0分
Finasee(フィナシー)
投資信託には信託報酬(運用管理費用)が設定されています。私たちの利益にも関わってくる大切なポイントです。
「実は信託報酬のこと、あまり知らない…」という人も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、信託報酬とはなんなのか、少し掘り下げて紹介します。信託報酬を誰に支払っているのか、どうやって調べればよいのか、押さえていきましょう。
信託報酬は運用コスト、投資家の利益にも関わる信託報酬は投資信託の運用コストの一つです。一定の料率で、投資信託の財産から日々差し引かれています。投資信託の財産は投資家に帰結するものですから、信託報酬は実質的に投資家が負担しています。
例えば信託報酬が年率1.0%の投資信託で100万円を1年間運用する時、投資家は概算で1万円を負担することとなります。
この仕組みから、投資家が手にできる利益は信託報酬を含む手数料を支払った残りとなります。運用成績が同じなら、信託報酬が高いほど利益が残りにくくなり、投資家にとって不利となります。
自身の利益に関わるため、信託報酬は購入前に確認することが望ましいのです。
信託報酬は誰に支払っているのか?次に、信託報酬を誰に支払っているか押さえましょう。
信託報酬の支払先は、運用会社(委託会社)と受託会社、販売会社です。投資信託はこの3者で構成されています(出所:投資信託協会 投資信託の仕組み)。
運用会社は、いわゆる投信会社です。野村アセットマネジメントや三菱UFJアセットマネジメントなどが代表的です。運用会社は、投資信託を立ち上げ、どのように運用するか指示を出しています。
受託会社は、運用を直接的に担う機関です。運用会社から運用の指示を受け、実際の売買を行います。また財産の保管も受託会社が行います。受託会社は、基本的に信託銀行が担っています。
販売会社の役割は、いわゆる窓口業務です。投資家から申し込みや解約を受け付けたり、分配金や償還金の支払いを行ったりします。販売会社は銀行や証券会社などが務めています。
このように、投資信託は上記の3者がそれぞれの役割を果たすことで運営されています。このことから、信託報酬は各社の役割に対する報酬という性格を持っています。
なおETF(上場投資信託)の場合、信託報酬に販売会社へ支払う部分はありません(※)(出所:投資信託協会 ETFのメリットは?)。
※ETFの方が非上場の投資信託より信託報酬が低くなるとは限らない
信託報酬は目論見書で確認できる次に、信託報酬を確認する方法を紹介します。
信託報酬は目論見書(もくろみしょ)に記載されています。目論見書とは、投資信託の説明書に相当する書面です。信託報酬を確認するなら、目論見書を確認しましょう。目論見書は運用会社のウェブサイトなどで公開されています。
なお目論見書には、交付目論見書と請求目論見書の2つがあります。交付目論見書は、新規購入時に金融機関から必ず交付されます。請求目論見書は、私たちが請求したときのみ交付されるもので、追加的な情報が記載されています(出所:投資信託協会 目論見書)。
信託報酬は、一般的に交付目論見書の「手続・手数料等」欄に記載されます。手続・手数料等欄は、交付目論見書の後半に記載される傾向にあります。
信託報酬は年率で示されます。例えばオルカン(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー))の場合、交付目論見書には「日々の純資産総額に対して、年率0.05775%(税抜 年率0.0525%)以内をかけた額」と表記されています。
「以内」となっているのは、オルカンは純資産総額に応じて料率が異なるためです。交付目論見書から抜粋すると、信託報酬は以下のような設定となっています。
【オルカンの信託報酬の内訳(2024年7月30日現在)】
出所:三菱USJアセットマネジメント eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 交付目論見書(使用開始日:2024年7月25日)「総経費率」も一緒にチェック最後に、信託報酬に関連して「総経費率」も押さえておきましょう。
総経費率とは、一般的に「信託報酬(運用管理費用)+その他の費用」で構成される指標です。近年は交付目論見書に総経費率も表記されるようになりました。
投資信託の運用コストは信託報酬だけではありません。また信託報酬に含める費用は各社で異なっているとの指摘もあります。したがって、信託報酬だけでは平等な比較が難しいという課題があります。
その点、費用の範囲が広い総経費率なら、より実際の運用コストを反映していると考えられます。信託報酬だけでなく、総経費率もあわせてチェックしておきましょう。
ただし、総経費率は直近の決算期における実績値です。あくまで過去の結果であり、将来を保証するものではありません。またファンドによって決算期は異なるため、総経費率の単純な比較は適切でないケースにも留意しておきましょう。
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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