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ネット証券で「オルカン」「S&P500」の優位は続くも、変化の激しい市場。米国景気後退をどこまで意識する?

Finasee / 2024年8月8日 7時0分

ネット証券で「オルカン」「S&P500」の優位は続くも、変化の激しい市場。米国景気後退をどこまで意識する?

Finasee(フィナシー)

ネット証券の投信売れ筋ランキングの2024年7月のトップ6は変動がなかった。前月と同様に同率で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がトップで、「iFreeNEXT FANG+インデックス」、「楽天・S&P500インデックス・ファンド」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」が続いた。これら銘柄は、「インデックスファンドによる長期・積立投資」の対象に設定されていると考えられ、市況変動の影響をほとんど受けにくい。前月に新たにトップ10入りした「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は第6位から第9位に後退、「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」は第8位からトップ10圏外に落ちた。その中で、トップ10圏外から「SBI 日本株4.3ブル」が第6位に躍進し、「楽天日本株4.3倍ブル」が第9位から第8位に順位を上げた。

※SBI証券と楽天証券の公開情報に基づき筆者作成


ランキングは、投信の販売額で群を抜いているSBI証券と楽天証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、2社のランキング10位までのファンドの点数を集計し、点数の多い順に並べた。

◆ブル・ベア型が活躍する相場だが、アップダウンに注意

「SBI 日本株4.3ブル」や「楽天日本株4.3倍ブル」は、7月に日本株が上昇し、終値で7月11日に日経平均株価が4万2224円、TOPIX(東証株価指数)で2929ポイントと史上最高値を記録。その後、7営業日連続安などもあって7月26日には日経平均株価は3万7667円、TOPIXは2699ポイントに下落するなど、アップダウンの激しい相場になった。高いレバレッジをかけているブル・ベア型のファンドでは、株価のボトムで買い、ピークで売るという動きができれば最高に良い結果が得られるのだが、そのタイミングを外すと大きな損失になってしまう。

たとえば、「SBI 日本株4.3ブル」の基準価額は、2024年6月末の2万8181円が、7月11日には3万7518円に上昇。ところが、7月26日には2万2183円に下落している。6月末時点で同ファンドを購入した場合、7月11日には投資資金に対して30%を超える収益をあげられたが、そこで売却(解約)せずに保有をし続けていた場合、7月26日時点では一転して20%超の損失になってしまったことになる。

そして、そのまま8月まで持ち越した場合、7月末に日銀が利上げの決定を行ったことなどに反応し、8月1日に日経平均株価が975円安、翌2日には一時2000円を超える下落となった。日本の今後の景気は2024年5月(7月8日発表)まで26カ月連続でマイナスが続いている実質賃金がプラスに転じるかどうかが決め手といわれており、日銀は賃金などの経済統計を見極めるとして政策金利をゼロ%に据え置いてきたにもかかわらず、実質賃金のプラス転換を待たずに利上げを実施してしまった。このような一貫性のない態度は金融市場に動揺を与えるものだ。市場の上げ下げに応じて投資チャンスを迎えるブル・ベア型ファンドは、今後も注目を集める投資手段になりそうだが、市場のボラティリティ(価格変動率)が大きくなりがちなだけに、無理な投資をしないことが肝要だ。

◆米リセッション懸念で「世界半導体株投資」の人気は?

「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、半導体株の象徴的な存在であるエヌビディアの株価が6月20日に付けた140ドルの高値から下落し、7月末は117ドルで終わるなど、株価上昇の勢いが衰えていることから、今後の展望が見えづらくなっている。これは、7月はトップ10圏外となった「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」にもいえることで、2023年から2024年6月まで市場をけん引してきた「マグニフィセント・セブン(M7)」といわれた米国ハイテク大型株の株高が全般的に一服感がある。

「M7」の株高は、予想を上回る業績を背景に最高値更新を続けてきた。たとえば、5月29日に発表されたエヌビディアの2024年4月期(3カ月)決算は、売上高が前期比3.6倍、営業利益が同7.9倍という大幅な増収増益決算となったこともあって同社株価の6月の上昇につながった。ただ、大幅に業績が拡大すると、そこからさらに業績が大きく伸びるのは発射台の水準が高いだけに難しくなる。米国企業の業績予想によると、S&P500採用銘柄で「M7」と「M7以外」の銘柄で比較すると、2024年の上半期までは「M7」の増益率が際立っているものの、2024年下半期以降は「M7」と「M7以外」の増益率が拮抗する予想になっている。決して、「M7」の成長が止まったわけではないが、際立って成長するという存在ではなくなってきているのだ。

◆景気後退はコントロールされた減速?

加えて、米国で9月にも利下げに転じるという見通しが強まるほどに、米国経済の減速が経済統計に表れるようになってきている。8月1日に発表された新規失業保険申請件数は24.9万件と予想の23.6万件を上回り、継続失業保険受給総数は187.7万件と2021年11月以来の悪化となった。また、7月ISM製造業PMIも46.8と前月の48.5や予想の48.8を下回る悪化となり、これらの数値によって「米国の景気後退(リセッション)懸念が高まった」と受け取られた。

米国はリセッションになっても利下げによって景気を刺激する手段は十分に持ち合わせている。むしろ、5%を超える高い政策金利を維持することによって、景気を沈静化させようというのが、現在の米国中央銀行の金融政策なので、ここでの景気後退はコントロールされた減速ともいえる。ただ、景気が減速する中では、企業が業績を一段と伸ばしていくことは難しくなるため、「M7」の株価、ひいては、「S&P500」などの米国株価指数も、これまでのように勢いよく上昇を続けることもまた難しくなるだろう。今後の株価動向とともに、ネット証券の売れ筋の変化に注目していきたい。

執筆/ライター・記者 徳永 浩

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。

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