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「私の方が年が近い」結婚したい“13歳年上彼女”に立ちはだかるモンスター義母の「エグすぎる態度」

Finasee / 2024年8月9日 17時0分

「私の方が年が近い」結婚したい“13歳年上彼女”に立ちはだかるモンスター義母の「エグすぎる態度」

Finasee(フィナシー)

結婚してください、と恋人の憲也が差し出した指輪に、茉莉は言葉を失っていた。今日は、憲也と付き合いだして、半年の記念日。同棲している2LDKのリビングでささやかなパーティーをするはずだった。

「本気なの?」

「冗談で、カルティエのリングなんて買わないよ?」

憲也は真剣な表情で言った。

彼と知り合ったのはマッチングアプリ。顔が好みだったからメッセージを送り、デートをした。お互いが暇をしているときに飲みに行こうなんて気軽に声を掛け合っているうちに、なんとなく一緒にいる時間が増え、気がつくと憲也が転がり込んでくるかたちで一緒に暮らすようになっていた。

半年たってのプロポーズ。それが早いか遅いかは分からないが、茉莉はとにかく困惑していた。

「いいの? 私なんてこんなオバさんだよ……?」

茉莉は39歳。来年には40歳になる。一方の憲也は27歳。一回りも下だ。

付き合うことにあまり抵抗はなかった。そもそも意気投合していたので、年齢差を感じることだって普段からほとんどない。しかし結婚となれば話は別だった。老いるのはどう考えても茉莉のほうが早いし、出産適齢期を考えれば茉莉は年を取りすぎている。

茉莉の戸惑いを見ても憲也は一切ブレた様子を見せず、いつものように眉根を下げる。

「関係ないよ。俺は茉莉のことが好きなんだ。年齢なんて単なる記号だよ。ずっと一緒にいたいんだ」

その気持ちはもちろんうれしい。しかし感情論だけでは収まらないのが結婚だ。

「でもさ、もう私は40だし、もしかしたら、子供も産めないかもしれないよ……?」

「もちろん、子供が欲しくないわけじゃないよ。でもさ、茉莉と2人でのんびり楽しく暮らすっていうのも悪くないかな、って思うんだ。茉莉は違う?」

「ううん、わ、私だってそうだけど。でも、私が先におばあちゃんになるし、もしかしたら、憲也が介護をしなくちゃいけなくなるかもしれないし……」

「そんなのはタラレバだよ。年を取ったら俺のほうが先に身体を悪くするかもしれない。……どうかな? やっぱり俺と結婚するのは不安?」

茉莉は首を横に振った。

「そんなわけ、ないでしょ」

「じゃあ俺と結婚してください」

茉莉がうなずくと、憲也は手を取って左手の薬指に指輪をはめてくれた。シンプルなシルバーに品の良いダイヤが煌(きら)めく指輪は、これまで結婚なんて考えてもみなかった茉莉にとっても、幸せの結晶のように思えた。

初めて会う義母に緊張

セレクトショップで店長を務めている茉莉は、夏のセールの合間を縫って、憲也と休みを合わせた日曜日の朝を緊張とともに迎えた。

寝室の鏡の前で入念に服装を確認する。この日のために購入したインディゴカラーのワンピースは、染め直したばかりの金髪ときれいなコントラストを作っている。ピアスは……派手ではないほうがいいだろう。ゴージャスな印象のあるフープピアスを手に取りかけて、シンプルなティアドロップに変更する。

「ほら、いつまでやってるの。早く行くよ」

開けた扉から憲也が顔を出す。いつもはラフな服装が多い憲也も、今日は白いTシャツの上に紺色のジャケットを羽織っている。

「でも今日はちゃんとしないと。お義母(かあ)さんと初めて会うんだし」

「そこまで気にする必要ないって。もっと気楽でいいよ」

「そう言われると余計緊張する。あー、心臓が口から出てきそう」

茉莉はそこで気を落ちつかせようと大きく息を吐き出した。

何でも最初の印象がとにかく大事だ。快く認めてもらうためにも粗相がないようにしないと。茉莉はそう言い聞かせて、憲也の運転で義実家へと向かった。

最悪の初対面

高速を使って1時間走ったところに憲也の義実家がある。こぢんまりとした一軒家で、それなりに年季の入った見た目をしているが、昭和の風情が感じられるたたずまいで、レトロブームに騒いでいた店の若い子たちが見たら喜びそうだ。

関係のないことを考えながら気を紛らわせている茉莉をよそに、憲也がインターホンを押す。やがてゆっくりとドアが開き、中から憲也の母・」美也子が顔を出した。

「久しぶり、母さん」

茉莉はすぐに頭を下げた。

「は、初めまして、霧崎茉莉といいます」

「……初めまして」

言葉少なに美也子は2人を家のなかへと招く。

憲也が先に上がってと手で示したので、茉莉はパンプスを脱ぎかける。

「随分と派手な格好だね」

ぼそりと呟(つぶや)かれた美也子の言葉にははっきりとした棘があった。それでも茉莉は表情を崩さずに堪える。

「すいません。一応、洋服は選んだつもりだったんですけど」

「母さん、言っただろ。茉莉はセレクトショップの店長なんだって。こういうのが今のおしゃれなんだよ」

憲也もすかさずフォローを入れてくれたが、美也子の厳しい表情が揺らぐことはなかった。

玄関がやけに高く感じた。少し足を上げれば上がれるはずのそこには、見えない壁が厳然と存在しているようだった。

「別に普段はどんな格好してようと勝手だとは思うけどね。婚約者の親にあいさつするっていうのに、身なり1つ整えられないんじゃ心配よね。子供じゃないんだし。育ちを疑っちゃうわよ」

「母さん、いい加減に――」

「冗談よ。早く上がりなさい。手、ちゃんと洗ってきてね」

憲也のフォローを遮って美也子は一方的に言った。汚いものでも見るような冷たい目を茉莉からそらし、身体の向きを変え、奥の部屋へ向かっていった。

茉莉は小さくため息を吐く。先が思いやられる最悪の滑り出しに、茉莉の気持ちは早くも折れかけていた。

玄関の姿見には、このわずかな時間のあいだに引き裂かれ、やつれてしまった自分の姿が小さく映り込んでいた。

●どう考えても茉莉が気に入らない様子の憲也の母。打ち解けることはできるのだろうか……? 後編<!--td {border: 1px solid #cccccc;}br {mso-data-placement:same-cell;}-->「元気な赤ちゃん産めるのかしら」アラフォー女性との結婚に反対する義母を懐柔した「まさかの方法」にて、詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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