彼女なし、低収入で自信もない…就職氷河期の「自称・弱者男性」を襲った胸のザワめきとは!?
Finasee / 2024年8月14日 16時0分
Finasee(フィナシー)
市田洋介(43歳)は、SNSを眺めていて出会った「弱者男性」という言葉が、今の自分を全くよく表していると思った。非正規社員で収入が少なく、一人暮らしで彼女もいない。おそらくこのまま、独身として一生を終わるだろうという予感がしていた。自分に自信を持てるようなところはひとつもなく、社会の邪魔にならないように、ひっそりと暮らしていければよいとばかり思っていた。「弱者男性」という言葉を知って、自分のような男性が他にもたくさんいることが分かってほっとしたところがあった。
非正規で40代、親も結婚をあきらめた独身男性市田は、都内の私立大学を卒業したが、就職活動がうまく進まず、結果的に派遣会社に登録して都内の会社を転々として暮らしてきた。もはや、正社員として雇用されることよりも、決められた時間だけ決められた業務をこなしていればよい非正規での就業が自分には合っていると思うようになっていた。手取りの収入が20万円前後という状態では、現在暮らしているワンルームマンションを借りているのが精一杯であり、40代も半ばを迎えて結婚することも考えてはいなかった。
30代の間は、「いつ結婚するんだ」と、ことあるごとに言ってきた両親も、市田が40代に入ったら、「結婚」という言葉を言わなくなった。妹の清美(38歳)に2人目の子供が生まれたので、孫を抱く楽しみは十分にかなえられていた。市田は、このまま都会の片隅でひっそりと暮らしていけたらよいと思っていた。
40代の一人暮らしなどというと、不摂生な生活をしているように考えられるかもしれないが、市田は自分で料理もすれば、きれい好きで、いつも部屋は整っていた。週2回の洗濯の日は、部屋干しにするため部屋中が洗濯物に埋まってしまうのが市田も閉口してしまうのだが、乾燥機を使った洗濯物の仕上がりがどうにも気に入らないので、工夫してもっとも洗濯物が乾きやすい干し方を見つけ出していたほどだ。料理の腕前もちょっとしたもので、妹の清美と比べても決して引けを取らないと思っていた。
読書を楽しみにひっそり暮らしてきた彼を変えたのは?市田の楽しみは、小説を読むことだった。近所にある古本ショップにいけば、1冊あたり100円~300円でさまざまな文庫本を購入することができた。外国作家のホラー小説にはまり、キングから、マキャモン、バーカーなど、気になる作家の本を探すのも楽しみだった。近所の古本ショップは1店舗しかなかったが、会社まで行く電車の路線には系列店が3店舗あり、それぞれの店舗の品ぞろえが違っているので、いくつかの店舗を回って本を探すこともまた面白かった。小説の数は限りなく、1カ月に10冊くらいの本を購入しても2000円にもならない出費ですんでいた。最近、時代小説も読み始めると、ホラー小説にはない面白さがあった。
月曜日から金曜日は仕事に行って、いつものスーパーで買い物をして帰り、夕飯を作って食べ、シャワーを浴びて小説を読む。毎週同じことを繰り返し、土日は本屋に行くか、たまに映画館に行くような生活だった。毎食を自炊にすると、季節の変化も分かった。これといって病気をすることもなく、生活に困るようなこともなかった。淡々と何事もなく過ぎていく日々、これが何年も続くのだろうと思っていた。
そんな市田は、毎日穏やかな気持ちで暮らしていたのだが、最近、気持ちを騒がせるようなことが起きていた。決して悪いことではないのだが、気持ちが穏やかになるようなことではなかった。それは……。
●人生をあきらめたように過ごしていた市田。しかし、あることから、胸のざわめきを感じるようになり!? 後編【「S&P500」を5年間積み立てたら…「自称・弱者男性」が普通の幸せをあきらめずに済んだ「たった一つのこと」】にて詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
風間 浩/ライター/記者
かつて、兜倶楽部等の金融記者クラブに所属し、日本のバブルとバブルの崩壊、銀行窓販の開始(日本版金融ビッグバン)など金融市場と金融機関を取材してきた一介の記者。1980年代から現在に至るまで約40年にわたって金融市場の変化とともに国内金融機関や金融サービスの変化を取材し続けている。
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