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遺族年金が受け取れない⁉ 亡き夫の年金保険料を慌てて払った子持ち女性が意気消沈した「払い損の事実」

Finasee / 2024年8月21日 11時0分

遺族年金が受け取れない⁉ 亡き夫の年金保険料を慌てて払った子持ち女性が意気消沈した「払い損の事実」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

翔太さん・40歳は個人事業主で、パート勤めの妻の那月さん・38歳、息子の壮真さん・9歳と暮らしていました。数年間だけ会社員をしてから個人事業主となった翔太さんは、毎年のように年収は2000万円以上、所得も1000万円以上ありました。「これだけ稼げれば今も将来も安泰だろう」と考え、年金制度は信用できないという理由から、国民年金保険料を払っていませんでした。

ところが、翔太さんは心筋梗塞で亡くなってしまいます。那月さんはあまりに急な出来事で状況が飲み込めないながらも、何とか亡き夫の葬儀を済ませました。しかし、パート収入のみで息子もまだ幼いため、今後の生活に不安を感じ始めました。

その時ふと、遺族年金制度の存在を思い出します。「死亡した人の保険料を納付すれば遺族年金が支給される」という情報を聞きつけ、「今から払えば何とかなるかも」と、亡くなった翔太さんの国民年金保険料の納付書を見つけ、慌ててコンビニエンスストアで納付。その後年金事務所へ相談に行きました。

ところが職員からは、「保険料の未納が多いため、遺族年金は支給されません」と驚きの事実を突きつけられます。

●前編:【「年金?そんなん当てになるか。信用できない」年金保険料を払わない40代男性に訪れた残念すぎる結末】

亡くなった日以降に慌てて払いに行ってもダメだった

遺族年金が支給されるには、亡くなった人が保険料納付要件を満たす必要があります。日頃から保険料を納めていれば、あるいは収入が少なくて保険料を納められない場合にその免除申請もしていれば満たせますが、そうでない場合は納付要件を満たせず、支給されません。

その具体的な保険料納付要件については、死亡日の前日において、死亡日の前々月までの国民年金の被保険者期間のうち保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること(原則要件)、あるいは死亡日の前々月までの直近1年間に未納期間がないこと(特例要件)、いずれかを満たすことを指します(※)。原則要件も特例要件も「死亡日の前日時点」での納付状況で判定される点が大きなポイントです。
※特例要件は死亡日時点で65歳未満であること、2026年3月までの死亡の場合が対象

翔太さんは収入が多く、保険料免除の対象とはならなかったため、毎月ちゃんと保険料を納める必要がありました。しかし、翔太さんは生前ずっと保険料を納めていませんでした。

死亡日前日時点での翔太さんの納付状況を見ると未納が3分の1を超えて原則要件を満たさず、直近1年も未納だったため、特例要件も満たしていません。そして、その未納保険料を遺族が死亡当日あるいはそれ以降に払っても意味がありません。原則と特例、いずれの保険料納付要件を満たせないことになり、遺族年金は支給されないことになりました。

払った亡き夫の国民年金保険料は還付されない

那月さんは「ダメ元で慌てて払いに行っても仕方なかったんですね」と職員に言います。続けて「じゃあ、遺族年金も受けられないんだったら払った保険料は返してもらえますよね?」と職員に尋ねます。

しかし、職員は確認した上で、「払った翔太さんの保険料は還付されません」との回答をしました。どうやら遺族年金の支給の有無に関係なく、那月さんが慌てて払った保険料は戻ってこないことになりそうです。

「ちゃんとよく調べもせず夫の保険料を払ったから払い損になっちゃった……」と言い、遺族年金が支給されないこともあって意気消沈してしまいました。

万が一に備えて翔太さんが国民年金保険料を払っていれば…

翔太さんが日頃から国民年金保険料を払っていれば、息子の壮真さんが高校を卒業するまでの間、遺族基礎年金として年間100万円以上が支給されていたのに、それが支給されない結果になりました。

翔太さんの遺産はありましたが、遺族年金もないまま、那月さんのパート収入だけでは毎月の収支は赤字になります。今後の壮真さんの教育費などを考えると、那月さんは将来について不安を感じました。

結局、那月さんと壮真さんは、那月さんの両親と同居するようになり、両親に生活面で助けてもらうことになりました。「今後私がフルタイムで働いて稼ぐようになるためには壮真の面倒を両親にも見てもらうしかない。両親に頼るまいと思っていたけど、どうしようもないし仕方ないかな……」と申し訳ない気持ちになりながら新たな生活を始めました。

年金は老齢年金だけでなく、遺族年金もあります。遺族年金制度については改正や見直しの議論の対象となってはいますが、いざという時の保障になりますので、その点も踏まえて備えておくことが大切です。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。

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