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山口FG、15年ぶり最終赤字からV字回復! 増配と自社株買いで今期は70%還元見込み

Finasee / 2024年8月22日 11時0分

山口FG、15年ぶり最終赤字からV字回復! 増配と自社株買いで今期は70%還元見込み

Finasee(フィナシー)

山口フィナンシャルグループは今期(2025年3月期)、純利益ベースで過去最高益を計画しています。達成すれば最高益の更新は7期ぶりとなり、15年ぶりの最終赤字だった2022年3月期からV字回復を果たす格好です。

出所:山口FG 統合報告書より著者作成

山口FGは今期計画を「チャレンジングな目標」としつつも、資本コストの観点からより高い利益率が必要との認識を示しています。PBRが1倍を下回る同社ですが、利益率が高まるなら株価の見直しが進むかもしれません(出所:山口FG 会社説明会資料 主な質疑応答(2024年3月期))

今回は山口FGに焦点を当ててみましょう。同社の概要と業績を紹介します。また山口FGは株主還元を積極化させていますが、その理由も探ってみましょう。

中国・四国で最大級の金融グループ 3県にまたがる広い地盤が特徴

山口FGは3つの銀行を持つ金融グループです。山口銀行を中核に、もみじ銀行と北九州銀行を傘下に持ちます。

もみじ銀行は広島県の第二地方銀行で、山口銀行と共同で2006年に山口FGを設立しました。北九州銀行は、山口FGが設立し2011年に開業した地方銀行です。地方銀行の新規開業は27年ぶりでした。なお、銀行業以外の子会社にはリース会社や証券会社などを持ちます。

【山口FG傘下行の総資産(単体、2024年3月期)】
・山口銀行:7兆2058億円
・もみじ銀行:3兆7430億円
・北九州銀行:1兆6694億円

出所:山口FG 統合報告書

3行体制のもと、山口FGは山口・広島・福岡の3県を主要に展開しています。いずれも製造業が盛んな地域で、県内総生産はそれぞれ全国25位、12位、9位です。広いエリアを地盤に持つ山口FGは中国・四国地方では最大級、全国でも有数の金融グループとなっています。

【山口FGの概要(連結、2024年3月期)】
・総資産:12兆5485億円(地銀グループ23社中9位)
・貸出金:8兆5899億円(同9位)
・預金:10兆0579億円(同9位)
・経常利益:372億円(同8位)
・純利益:252億円(同10位)

出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算

今期も大幅な増益を計画 最高益の達成は運用がカギ

次に足元の業績を紹介します。

山口FGは直近の2024年3月期を増収増益で終えました。増収の大部分は資金運用収益がけん引しており、貸出金および有価証券の利息・配当金の改善が確認できました。銀行本来の業務による利益が伸びたこと、さらに与信費用が減少したことを主因に、経常利益と純利益はいずれも4割を超える大幅な増益となっています。

【山口FGの業績(連結、2024年3月期)】
・経常収益:1847億円(+17.4%)
・経常利益:372億円(+45.1%)
・純利益:252億円(+40.9%)
※()は前期比
※参考(連結):コア業務粗利益1136億円(+12.8%)、コア業務純益501億円(+27.2%)

出所:山口FG 決算短信

有価証券の運用は好調でした。純投資部門の実現損益は150億円(前期42億円)に増加、その他有価証券の評価損益も300億円(同-129億円)に改善しています。期末時点の時価残高は3行合算で前期比5300億円増加の2兆500億円に達しました。

今期(2025年3月期)は、有価証券の運用が特に重要な年となりそうです。経常利益の増益の多くを有価証券運用収益が担う計画のためです。貸出収益および役務関連収益は伸び悩む予想となっています。

【予想経常利益の増減要因(連結、2025年3月期)】
・邦貨貸出収益:+14億円
・外貨貸出収益:-20億円
・役務関連収益:-8億円
・有価証券運用収益:+127億円
・経費:-41億円
・与信費用:+49億円
・その他:-17億円
※予想経常利益:475億円(前期:372億円)

出所:山口FG 会社説明会資料(2024年3月期)

山口FGは中期経営計画の推進中で、今期はその最終年度にあたります。中計で目指した経常利益と純利益の目標は今期の予想と一致しています。先述の通り、計画達成なら純利益は過去最高となる見込みです。最高益の達成は、有価証券の運用にかかっているといえるでしょう。

【山口FGの業績予想(連結、2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:475億円(+27.4%)
・純利益:330億円(+30.9%)
※()は前期比
※参考(連結):コア業務粗利益1095億円(-3.6%)、コア業務純益419億円(-16.1%)

出所:山口FG 決算短信

第1四半期の決算は2024年8月に公表されました。経常利益と純利益はそれぞれ160億円と115億円となっています。計画に対する進捗はともに26%と、足元ではおおむね順調に推移しているようです。

山口FGは、計画通り過去最高益を更新できるのでしょうか。市場の関心が集まります。

配当と自社株買いで利益の7割を還元 積極的な株主還元の理由

最後に株主還元に触れておきましょう。山口FGは近年、株主還元に積極的です。

山口FGは先述の中期経営計画において、配当性向の目標を40%程度に設定しました。さらに自社株買いも「柔軟かつ機動的」に行うとしています。中計の初年度(2023年3月期)は配当性向が40%、自社株買いも加味した総還元性向は96%に達しました。2024年3月期は配当性向が38%、総還元性向が77%となっています。

今期(2025年3月期)の1株あたり配当金は17円増配の60円を予想しています。配当性向は39.4%となる見込みです。自社株買いは100億円を上限として公表しており、うち25億円を7月末までに取得しました。自社株買いが上限まで行われた場合、総還元性向は70%程度となる見込みです。

出所:山口FG 会社説明会資料(2024年3月期)

積極的な株主還元を実施する理由について、山口FGは低いPBRが背景にあると説明します。

山口FGのPBRは、多くの銀行株と同様に1倍を下回っています。山口FGは「地方銀行であるか否かは関係なく、東証プライム市場に上場しているとの責務がある」との認識から株主還元を実施していると回答しています(出所:山口FG 会社説明会資料 主な質疑応答(2024年3月期))

PBRの改善策の一つとして山口FGが取り組むのがROEの改善です。山口FGは資本コストを7%程度と認識していますが、足元のROEは7%を下回ります。株主が期待する利益を出せていないことが、株価が評価されない理由だと分析しています。

ROEは分子に純利益、分母に純資産を持つ指標です。そして株主還元は一般に純資産を減少させます。したがって、株主還元はROEを向上させる効果が期待されます。

山口FGは株主還元でROEの向上を図り、PBRの改善を目指します。

【山口FGのPBR】
・株価:1888円(2024年7月末)
・1株あたり純資産:3009円(2024年3月末)
・PBR:0.62倍
※(参考)実績ROE:4.0%(2024年3月期)、予想ROE:5.0%(2025年3月期)

出所:山口FG 決算短信

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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