「オルカン」「S&P500」は価格反落も流入は継続。株安局面で注意したい動きは? 7月投信概況
Finasee / 2024年8月16日 7時0分
Finasee(フィナシー)
三菱アセット・ブレインズがまとめた2024年7月の公募ファンドの純資産残高は99兆9706億円で前月比3兆2066億円減少した。9カ月ぶりの純資産残高減になった。資金流出入額は、月間で約1兆6240億円の資金純流入(前月の流入額は1兆2710億円)だったが、価格下落によって純資産額がマイナスになった。
資産別残高は「外国株式型」が52兆3784億円で残高が前月末比4.71%減少した他、「エマージング債券型」が前月末比6.60%減少、「ハイイールド債券」が同3.78%減少するなど、すべての資産クラスで残高が減少した。資金流出入では資産別にみると資金流入額で「外国株式型」が最大で約1兆2270億円(前月は約1兆470億円)、ついで、「エマージング株式型」の約1990億円(前月は2560億円)、「国内株式型」が約1490億円(前月は約170億円の資金流出)の流入だった。一方、資金流出は「不動産投信型」が約590億円(前月は約530億円の資金流出)で最大だった。
◆資金流入額トップ3ファンドの収益が揃ってマイナスに反転個別ファンドの資金流入額でトップは、「外国株式型」の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の約2240億円(前月は約1962億円)、そして「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の約2000億円(同約1682億円)、「アライアンスB・米国成長株投信D」の約1680億円(同約1299億円)の順で前月と変わらなかった。ただ、これら人気銘柄の基準価額の推移をみると、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は6月末から7月11日に3.18%上昇した後、7月末には6月末比5.35%安と反落。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は6月末比で7月11日に3.22%高に上昇した後、7月末には6月末比6.10%安に反落した。「アライアンスB・米国成長株投信D」も7月11日に6月末比2.26%上昇した後、7月末には6月末比13.37%安という水準まで下落した。
これまで主力ファンドとして多くの投資家の強い支持を集めた3ファンドが、そろって7月中旬にピークを付け、7月末にかけて価格が下落するという動きになっている。加えて、8月に入ると、日銀の利上げを受けた日本株式の急落の影響もあって、一段と下落幅を大きくしてしまった。7月が当面の価格のピークだったとすると、最高値近辺で大量の買い注文が入ったことになる。いわゆる高値に「しこり※」が残った格好になった。
※同価格で多くの買いが入った状態で株価下落が起きてしまい、身動きがとれない状況のこと
月間収益率では、「マニュライフ・米国銀行株式ファンド(資産成長型)」の14.86%がトップで、「マニュライフ・米国銀行株式ファンド」の14.76%、「GSビッグデータ・ストラテジー(米国小型株)A(為替ヘッジあり)」の10.93%、「米国小型バリュー株ファンドA(為替ヘッジあり)」の10.47%などと続く。銀行株や為替ヘッジ付き、あるいは、小型株など、従来とは異なる種類のファンドのパフォーマンスが向上しており、「外国株式型」の中心を占める米国株式市場の物色の流れに変化が起こっていないか、今後の動向を注目したい。
◆エマージング株式の動向にも変調、新設ファンドはアジア半導体資金流入額の大きさで「外国株式型」に次ぐ資金を集めている「エマージング株式型」は、流入額の大きさではカテゴリーのトップに「HSBC インド・インフラ株式オープン」の約536億円、「ダイワ・ダイナミックインド株ファンド」の約191億円がトップ2でインド株ファンドの人気が継続している。第3位に新設ファンドの「アジア半導体関連フォーカスファンド」の約185億円が入った。
ただ、月間収益率は「DWSロシア株式ファンド」の6.35%がカテゴリーのトップで、第2位が「(ノムラ・アジアS)ノムラ・フィリピン・フォーカス」の2.48%、第3位が「(ノムラ・アジアS)ノムラ・アセアン・フォーカス」の2.18%など、パフォーマンスの水準が低く、月間でプラスのリターンを上げられたファンドは同カテゴリーで10本しかなかった。
◆大型ハイテク株に一服感? 今後を注視一方、資金流出額の大きなファンドは、「ピクテ・グローバル・インカム株式F(毎月分配型)」(流出額:179億円)、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(ヘッジなし)」(同117億円)という残高が1兆円前後の大型ファンドだった。この2ファンドは継続的に資金流出となり、「ピクテ・グローバル・インカム株式F(毎月分配型)」は7月末の残高が9044億円と9000億円に接近した。そして、流出額の上位には、第5位に「GSフューチャー・テクノロジー・リーダーズ B」、第7位に「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」、第11位に「グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド」などハイテク株を主たる投資対象にしているファンドが目立っている。これまで市場をけん引してきた大型ハイテク株の上昇に一服感が強まっていることが人気離散の要因と考えられる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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