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インデックスだけで大丈夫? 地銀投資家は下落前に「アクティブ」や「債券」を“バランス買い”していた!?

Finasee / 2024年8月22日 7時0分

インデックスだけで大丈夫? 地銀投資家は下落前に「アクティブ」や「債券」を“バランス買い”していた!?

Finasee(フィナシー)

地方銀行の7月の売れ筋は6月から大きな変化はなかった。北洋銀行、千葉銀行、広島銀行、福岡銀行の4行では売れ筋トップの銘柄は6月と同じだった。目立った動きとしては、北洋銀行で「のむラップ・ファンド(積極型)」が第2位に浮上。千葉銀行で第3位に「ダイワ・US・REITオープン(年1回決算型)為替ヘッジなし」がトップ5圏外から入り、福岡銀行で前月の第4位から第3位に「HSBCインド・インフラ株式オープン」が順位を上げた。広島銀行では売れ筋トップ5が前月と同じだった。

 

一方、ネット販売では各行で株式インデックスファンドが引き続き売れ筋の中心になっているが、福岡銀行で「日経225ノーロードオープン」がトップに立ち、千葉銀行で「アムンディ・日経平均オープン」が第4位にランクインするなど、日経平均株価に連動するインデックスファンドが順位を上げた。また、広島銀行では国内株式市場の値動きの2倍で動くブル型の「日本トレンド・セレクト(ハイパー・ウェイブ)」がトップになり、国内株価と反対方向に動くベア型の「日本トレンド・セレクト(リバース・トレンド・オープン)」が第3位に入った。

◆ラップファンドでリスク回避、割安放置の米国REITも浮上

北洋銀行の売れ筋である「のむラップ・ファンド」は、投資家のリスク許容度に合わせて「保守型」「やや保守型」「普通型」「やや積極型」「積極型」の5段階でリスク水準を調整したコースがある。具体的には、「国内株式」「外国株式」「世界REIT(不動産投信)」というリスク性資産の配分割合について、「保守型」は50%以内、「やや保守型」は60%以内、「普通型」は75%以内、「やや積極型」は85%以内、「積極型」は無制限という範囲で組み入れる。ただ、最終的な組み入れ比率は、その時々の経済環境等を考えて投資助言会社である野村證券が独自に開発したモデルを使って分析した結果の投資判断に従う。7月末時点では、「積極型」でもリスク性資産への投資割合は80%程度であり、「国内株式」と「外国株式」が割高な水準にあるという判断で、組み入れ比率を通常よりも低くしている。結果的に、8月に日米の株価が急落するという事態を経験したため、この投資判断は効果的だったといえる。

千葉銀行で新たに売れ筋第3位にランクインした「ダイワ・US・REIT・オープン(年1回決算型)為替ヘッジなし」は、割高感があると指摘される米国株式に対して割安に放置されているといわれる米国REITを投資対象にしたファンドだ。ファンドを運用する大和アセットマネジメントが7月31日に発行したファンドレターで、米国REITと米国株式のバリュエーション格差を見ると、2005年1月末以来で現在は米国REITが株式に対して最も割安な水準になっている。また、過去の推移から米国の金利低下局面ではREITのパフォーマンスが改善する傾向が強いことが分かっており、9月にも米国が利下げに転じるという見通しもあり、「今の投資環境は、米国REITにとって好機」とレポートしている。

◆タイミングを計って投資する手法は難しい状況

広島銀行でネット販売の売れ筋トップになった「日本トレンド・セレクト」は、株式市場全体の値動きの2倍相当で動くブル型の「ハイバー・トレンド」と、市場の動きと反対に動くベア型の「リバース・トレンド・オープン」、そして、資金を一時的に置いておく「マネーポートフォリオ」の3つのコースがあるファンドで、投資家の相場観によって「株価が上昇しそう」と思った場合は「ハイパー・トレンド」、反対に「株価が下落しそう」と思った場合は「リバース・トレンド・オープン」、また、「どっちに動くのかよくわからないので様子を見たい」という場合は「マネーポートフォリオ」を購入するという使い方が想定されている。

7月は、国内株価は11日まで史上最高値を更新する上昇相場で、その後、株価が調整して下落していたため、株価の再上昇を狙った「押し目買い」が優勢となり「ハイパー・トレンド」の方に人気が高い状況だったのだろう。ただ、8月になると国内株価は大幅な下落となった。7月末時点に対し、8月5日時点では「ハイパー・トレンド」はマイナス38%、「リバース・トレンド・オープン」はプラス21.82%だった。その後は、株価が切り返したため、「ハイパー・トレンド」が急上昇し、「リバース・トレンド・オープン」は急落するという逆転が起こった。株価のボラティリティ(変動率)が大きくなっているだけに、株価の先行きを見越してタイミングを計って投資する投資手法は、非常に難しくなっている。

◆市場の波乱で期待される店頭のアドバイス力

地方銀行の投信販売実績で、ネット販売では株式インデックスファンドが売れ筋の上位を占め、店頭販売ではバランス型やアクティブファンドが売れ筋上位に入ってくるのは、健全なすみ分けがあるように感じられる。ある程度の投資経験があり、自己判断で低コストの投資がしたいと考える投資家は、インターネットチャネルを使って自分の好きな投資対象を選ぶ。中には、ブル型やベア型といったリスク水準の高い商品にもトライする場合もあるだろう。

一方、投資初心者など投資に慣れていない投資家は、店頭で販売員のアドバイスを聞きながら投資を進めるということが多いだろう。店頭ではバランス型やREITファンド、あるいは、債券ファンドなども売れ筋上位に入ってくる。この場合、バランス型などは単独で販売されているのだろうが、REITファンドや債券ファンドは株式ファンドなどとの組み合わせで提案されるケースも少なくないと考えられる。店頭の相談員に求められるのは、投資家に過度なリスクをとらないようにアドバイスする力だろう。「投資に踏み切る」という場合、「大きなリターンを得たい」という誘惑が強くなるが、「大きなリターン」には「大きなリスク」がついてくることをしっかり説明し理解を得ることが大事だ。

そして、リスクを抑える「分散投資」の考え方を伝えることも、店頭販売員の重要な役割と言える。地方銀行の販売額順位で、さまざまな資産クラスの商品がランキング上位にあがっているのは、そのような分散投資のアドバイスが行き届いている結果とみえる。特に、8月になって世界的に株式市場が不安定となっており、銀行の窓口への相談も増えることだろう。「長期投資」と「分散投資」のアドバイスがていねいに行われることが期待される。

執筆/ライター・記者 徳永 浩

 

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。

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