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「健康経営銘柄」開始から唯一10年連続で選出、SCSKが取り組む「ファイナンシャル・ウェルビーイング」とは?

Finasee / 2024年9月13日 8時0分

「健康経営銘柄」開始から唯一10年連続で選出、SCSKが取り組む「ファイナンシャル・ウェルビーイング」とは?

Finasee(フィナシー)

人的資本経営で改めて注目される「健康経営」

「健康経営銘柄」とは、社員の健康管理を経営的な視点から考えて、戦略的にその向上に取り組んでいる企業のこと。2015年から経済産業省と東京証券取引所が共同で全上場会社の中から毎年選出している。SCSKは2013年から業界に先駆けて「働き方改革」に取り組んできた。そうした先進的な試みが評価され、第1回目から「健康経営銘柄」に選定された。

2015年には「健康経営」の理念を制定し、経営戦略の根幹としている同社。以降さらに一歩進めて、社員が仕事を通じて働きがいや心の豊かさを感じられる「Well-Being経営」を掲げている。そうした数々の施策の結果、SCSKは10回目となる24年まで連続で「健康経営銘柄」に選ばれている。これは国内企業では1社だけだ(2024年8月末時点)。

2023年3月期決算から上場企業を対象に人的資本の情報開示が義務化されるなど近年、人的資本経営への関心が強まっている。伴って「健康経営」についても改めてその先駆的な側面への注目度が高まっている。そうした中、SCSKではファイナンシャル・ウェルビーイングに対する取り組みも始まっている。同社金融事業グループ・事業推進部の嶋野友也氏に聞いた。

当初の目的は社内での金融教育の効果を新規事業に活かすこと

「ファイナンシャル・ウェルビーイングを、現在から将来にわたる金銭的・経済的な不安を解消し、人生を楽しむための生き方ができる状態だとすれば、それを実現するための取り組みはかなり幅広いものになります。すでに福利厚生としてある、退職金制度や積立貯蓄、財形貯蓄、従業員持株会といったものも含まれると思います」(嶋野氏、以下同)。

SCSK株式会社 金融事業グループ 金融事業グループ統轄本部 事業推進部 第一課 課長 嶋野友也氏

だが、今回の取り組みはそうした従来から提供していた福利厚生とは異なるもので、明確なきっかけがあったという。

「当社はこれまで金融領域で独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)向けの金融仲介プラットフォームや、職域向けの資産形成プラットフォームなどを提供してきました。さらに、金融教育関連で新規事業ができないかと検討したところ、社内で社員向けの金融教育を実施し、そこで得られたノウハウや知見などを活かすことができるのでは、と考えたのです。また、人事部主導ではなく、まずは従業員に金融教育の必要性を感じてもらい、社内の機運を盛り上げていきたいという狙いもありました」

社員の仕事のスタイルを考慮した教育プログラム

実践に向けSCSKが導入したのはブロードマインド社の「ブロっこり」という金融教育プログラム。1回目は23年1月から3月まで、2回目は23年11月から24年2月まで実施した。試験的な運用ということもあり、全社員を対象にしたわけではない。受講したい人に応募をしてもらい、そこから選抜した。1回目は約100人の応募から30人を選び、2回目は500人を対象として募集し、応募のあった約100人から30人を選んだ。1回目でベテラン層の関心が高いことが判明したため、2回目はベテラン社員を中心に募集をしたという。

講座の教材は動画がメインで、1講座10~15分の動画を受講者が視聴する形式。1回目は26本、2回目は24本を週2回配信した。テーマは、セカンドライフ、社会保障制度、保険、住宅ローン、介護・相続、年金(公的年金・確定拠出年金)、さらに資産運用全般、NISA(少額投資非課税制度、ニーサ)やiDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)など、社会人に必要な金融テーマを網羅し、専属のファイナンシャルプランナーがチャットを通じて伴走する作りになっている。

「動画形式の講座にしたのは、仕事のスタイルを考えてのことです。契約先の企業で仕事をする社員が多く、それぞれのペースで受講してもらうことを優先しました。週2回の配信ですが、通勤中にスマホで視聴したり、週末にまとめて見ることも可能です。それが功を奏したのか、受講者の7割が全部視聴してくれました」

動画にも工夫がされていた。内容について質問がある人は、チャット形式でFPに質問をすることができる。返答はリアルタイムではないものの次の配信時までには送られてくるので、それを確認することが次の講座を視聴するモチベーションにもなった。

「そうした離脱しにくい仕組みになっていたので、最後まで視聴した人が多かったと思います。チャットは全受講者のうち半数程度が利用し、利用者は期間中平均4~5回やりとりをしていたようです。チャットでやり取りをして、さらに質問がある人は個別にFPに電話相談ができるサービスもあり、こちらは受講者の1割程度が使っていました」

講座の効果には手応え

受講者の反応は上々だったという。

「講座終了後にアンケートをとってみると、漠然としたお金の不安があったけど不安が取り除かれたとか、投資が怖くなくなった、ライフプランの重要性が分かったなどの声が寄せられました。個人的には、ファイナンシャル・ウェルビーイングに少しは近づいたかなと手応えを感じています」

また、テーマとして最も関心が高かったのは年金だった。企業年金については、どの企業でも社員向けの説明会やセミナーを開催しているはずだが、「理解したつもりになっていただけで、重要なところは忘れていたという人が多かったようです。また、税金に関わることも含まれていたので、具体的に参考になったという声も多く、これまでの説明会やセミナーではカバーできなかった部分が把握できました」

ファイナンシャル・ウェルビーイング普及への新たな課題

「反響は良かったので、これからも推進をしていきたいと考えていますが、いくつかの課題も出てきました。例えば、金融リテラシーのある人に対してはどういうアプローチをすべきか、また、講座の事前告知のやり方はどうすべきかといったことです」

社員向けにセミナーなどの情報発信をするサイトはあるが、必ずしもすべての社員に情報が共有されているとは言い難い状況にあるという。そうした社内の情報格差を埋める手法が必要になってくる。

より本質的な問題としては、会社がどこまで社員の金銭的・経済的な部分にコミットしていいのか、そのコンセンサスの形成という点があるだろう。会社側が一方的に推進していると受け止められると抵抗感を覚える人もいるかもしれない。「この点に関しては企業や社員という関係性だけで捉える問題ではなく、社会全体の機運みたいなものも影響してくるのではないでしょうか。ファイナンシャル・ウェルビーイングが一定程度、普及することが重要になるのかもしれません。今後はこうした問題にも配慮することが求められると考えています」

SCSKの「健康経営」は、今でこそ社員に共有され、社会的な評価も受けている。しかし、トップダウンで経営理念となってから現在に至るまでに10年近くを要した。理念や言葉だけが先行しても、肝心の社員がついて来られないのではエンゲージメントの向上に資することはない。

「金融リテラシー研修は、1年で終わるものではなく、5年とか10年とか長期的視点で実施していくことで、初めて効果が出てくるものといえます。そういう意味で、ファイナンシャル・ウェルビーイングは、最初のステージに入ったばかりではないでしょうか。社員への情報発信をよりスムーズにし、地道な金融教育を積み上げていくことで、ファイナンシャル・ウェルビーイングを一歩一歩、ステップアップしていけたらと思います」

ファイナンシャル・ウェルビーイングにつながる道のりは緒に就いたばかり。人的資本経営に不可欠の重要な要素となる日を目指してSCSKの取り組みは続いていく。

ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメント編集部

「ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメント」は、事業会社の経営企画・人事部門向けの専門誌です。職場領域(職域)を通じた従業員への金融知識普及を目的とした、ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメントに関する情報をお伝えします。人事部門で「福利厚生・報酬・企業年金」等の実務に携わる方々の声を元に、従業員エンゲージメントの向上につながる「実用性の高い記事」を作成、掲載。人的資本経営への高度化に資する情報を届けています。

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