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東京きらぼしFGが公的資金の完済にメド 業績が急拡大した理由とは

Finasee / 2024年8月29日 11時0分

東京きらぼしFGが公的資金の完済にメド 業績が急拡大した理由とは

Finasee(フィナシー)

東京きらぼしフィナンシャルグループは2024年3月、公的資金の完済計画を公表しました。東京都から出資を受けた400億円分の優先株について、2028年度までに償還する内容です。また三井住友信託銀行が出資した150億円分の優先株も、2029年度までの償還を目指します(出所:東京きらぼしFG ニュースリリース(2024年3月28日))

東京きらぼしFGの業績は足元で好調です。従来は100億円未満にとどまっていた経常利益は、2021年度以降は200億円~300億円を計上しています。「市場環境次第では前倒しの償還完了も検討」するとしており、計画より早く完済できるかもしれません。

今回は東京きらぼしFGに焦点を当ててみましょう。同社の概要と業績、また推進中の中期経営計画を紹介します。

東京地盤の地銀グループ きらぼし銀行は3行が合併して誕生

東京きらぼしFGは、きらぼし銀行を中核に持つ金融グループです。2014年に東京都民銀行と八千代銀行が統合して設立されました(当時は東京TYフィナンシャルグループ)。さらに2016年に新銀行東京を子会社化し、2018年に3行を合併して誕生したのがきらぼし銀行です。

冒頭の公的資金は、新銀行東京が受けたものです。新銀行東京は、東京都が旧BNPパリバ信託銀行の全株式を取得し2005年に開業しました。当初から赤字が続いていたところ、2008年に東京都が追加出資して救済した経緯があります。

その後、東京きらぼしFGはスマートフォン取引に特化したUI銀行を2022年に開業し、グループに2つの銀行を持つ2行体制となっています。

中核行のきらぼし銀行は東京都を地盤に持つ地方銀行です。本店を東京都に持つ地域金融機関としては最大級の規模を持つとみられています。全国では中堅的な位置付けで、総資産は地銀62行中24位、貸出金は同21位です。

【東京都に本店を置く地銀・第二地銀の総資産(単体、2024年3月期)】
・きらぼし銀行:7兆0792億円
・東京スター銀行:2兆3112億円
・東日本銀行:2兆1904億円

出所:各社の決算公告

【きらぼし銀行の概要(単体、2024年3月期)】
・総資産:7兆0792億円(地銀62行中24位)
・貸出金:4兆8331億円(同21位)
・有価証券:9227億円(同34位)
・預金:5兆4728億円(同29位)

出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算

利益が2021年度に急拡大、最終増益は3期連続 今期は減益の予想

次に業績を押さえましょう。

東京きらぼしFGは2022年3月期以降に利益が大きく増加しています。グループで不動産売却に関連する利益が続いていることに加え、粗利益が増加傾向にあること、与信費用が減少傾向にあることが背景にあります。 

出所:東京きらぼしFG 決算短信より著者作成

直近の2024年3月期も、資金利益を中心に粗利益が増加しました。資金利益は主に貸出金利息がけん引し、有価証券利息はほぼ横ばいとなっています。きらぼし銀行は有価証券の残高が停滞していますが、貸出金は順調に積み増しており、収益の改善につながったと考えられます。 

出所:東京きらぼしFG 会社説明会資料より著者作成

これらの影響で業務粗利益が増加し、さらに国債等債券損益および株式等関係損益も改善したことから、経常利益および純利益は増益となりました。経常利益の増加は4期連続、純利益の増加は3期連続です。

【東京きらぼしFGの業績(連結、2024年3月期)】
・経常収益:1383億円(+10.4%)
・経常利益:329億円(+7.1%)
・純利益:256億円(+21.2%)
※()は前期比
※参考(きらぼし銀行単体):コア業務粗利益919億円(+1.2%)、コア業務純益387億円(-3.7%)

出所:東京きらぼしFG 決算短信

ただし今期(2025年3月期)は減益を予想しています。継続していたグループの不動産売却に関連する利益の見込みがないこと、与信関係費用を保守的に見積もったこと、税効果会計による法人税の減少がはく落することが主な要因です。

【東京きらぼしFGの業績予想(連結、2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:321億円(-2.6%)
・純利益:245億円(-4.4%)
※()は前期比
※参考(きらぼし銀行単体):コア業務粗利益876億円(-4.6%)、コア業務純益346億円(-10.5%)

出所:東京きらぼしFG 決算短信

中核行以外で2026年度に利益50億円 UI銀行が中心的な存在に

東京きらぼしFGは、収益構造の転換を目指しています。その一つが、きらぼし銀行以外の利益の強化です。

地方銀行グループは、収益のほとんどを中核行に依存することが少なくありません。東京きらぼしFGも同様で、連結経常収益の8割超をきらぼし銀行が占めました(2024年3月期)

この打開を目指した東京きらぼしFGは2024年3月、公表した中期経営計画において、きらぼし銀行以外のグループ会社で利益50億円を目指す目標を明かしました。純利益の計画においては、グループ会社利益は最も大きな増益要因となっています。

【中期経営計画の主な財務目標(~2027年3月期)】
・純利益:300億円(256億円)
・きらぼし銀行除くグループ会社利益:50億円(-3億円)
・ROE:7%台後半(7.4%)
・きらぼし銀行単体コアOHR:50%台半ば(57.8%)
・自己資本比率:8.3%(8.2%)
※()は2024年3月期実績

出所:東京きらぼしFG 会社説明会資料

出所:東京きらぼしFG 会社説明会資料より著者作成

グループ会社利益で期待されるのがUI銀行です。UI銀行はデジタル戦略の中心的な存在で、グループのリテール金融サービスは今後UI銀行を軸に対応します。

その一環として、きらぼし銀行の個人ローンはUI銀行への移行を進めます。また法人向けも小規模なものはUI銀行で対応できる体制を目指します。

2024年8月にはUI銀行で住宅ローンの取り扱いを開始しました。残高は2027年3月期までに1025億円を目指します。同時に投資用不動産ローンでは1104億円、消費性・目的別ローンでも92億円まで積み上げます。

UI銀行は開業以来で黒字がありません。しかし今後はグループをけん引する存在となりそうです。

【UI銀行の純利益の推移(単体)】
・2022年3月期:-9億円
・2023年3月期:-18億円
・2024年3月期:-22億円

出所:東京きらぼしFG 決算短信

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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