金利上昇で住宅ローンが心配でも、安易な「繰り上げ返済」は逆にリスク?
Finasee / 2024年8月27日 8時0分
Finasee(フィナシー)
意外と「持ち家」の人は金利に関心
住宅ローン金利といえばこれからマイホームを買う人が注目していると思われますが、実態はどうなのでしょうか。調査は三井住友信託銀行株式会社の調査研究機関である三井住友トラスト・資産のミライ研究所が全国の18歳~69歳の1万948人に「今後の住宅ローン金利の動向に対する考え」を質問し、回答結果を居住形態別に集計。
結果、住宅ローン金利の動向に何らかの見解がある(=「現状よりも上がると思う」+「変わらないと思う」+「現状よりも下がると思う」)と回答した人は「持ち家」が53%と最多。逆にそもそも住宅ローン金利に「関心がない」と回答した人は「その他(実家に同居など)」が29.1%と最多でした。
実家に同居だと住宅ローンは親が返済している、あるいは既に完済済みというケースが多いでしょうから、「関心がない」人が多いという結果は予想どおりといったところ。一方で既に家を買ってしまっているのに「関心が高い」人が多いのは意外だと思う人もいるのでは。
出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)住宅ローン利用者の9割以上が金利に関心「持ち家」の人が住宅ローン金利に関心を持つ背景には何かありそうです。調査では、前問で住居形態が「持ち家」の人の回答結果を住宅ローン利用有無別に集計。
結果、住宅ローンを「利用している(返済中)」人の71.3%が住宅ローン金利の動向に何らかの見解があると回答。住宅ローンを「利用していた(返済完了)」「利用していない」「その他(相続・譲渡などで持ち家を保有)」)に比べて断トツに高い割合です。
逆に住宅ローン金利の動向にそもそも「関心がない」という回答は、住宅ローンを「利用している(返済中)」人がわずか2.9%に対し、「利用していない」「その他(相続・譲渡などで持ち家を保有)」ではそれぞれ27.3%、26.4%に達しました。
同じ「持ち家」でも、住宅ローン利用者のほうが住宅ローン金利に関心があるという結果に。既に住宅ローンを契約しているのになぜなのでしょうか。
出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)金利上昇で一部繰り上げ返済する人が半数近くに
実は日本の住宅ローン利用者の多くは住宅ローン金利が変動するタイプ(変動金利)を選択するのが一般的。低金利が続いていたころは他の金利タイプに比べて低い金利で借りられたからです。
しかし今回の金利上昇によって変動金利のリスクが現実のものに。そこで対応策の1つとして挙がるのが繰り上げ返済。毎月の返済に加えて、住宅ローン残高を予定より早く返済することで、住宅ローン残高が減り、毎月の支払利息も減るため、金利上昇による支払利息の増加を軽減できます。
住宅ローン利用者は金利上昇に対して何か対応を検討しているのでしょうか。調査結果では、「検討する」と回答した人が67.2%に。具体的な対応策としては、「一部繰上返済をする」と回答した人が45.0%と最多で他の選択肢を圧倒。
確かに繰り上げ返済には支払利息の節約効果がありますが、一方で手元の資金が減ってしまうため、急にまとまった出費が発生した場合に資金不足の恐れが。不足分をまかなうために再びお金を借りては元も子もありません。子どもがいて出費がかさむ世代などは特に注意が必要です。
また住宅ローン利用者は障害や死亡などで返済ができなくなった場合に住宅ローン残高がゼロになる団体信用生命保険に加入することが一般的ですが、繰り上げ返済で住宅ローン残高が減ってしまうと、保険の効果が薄れてしまうことも。
次いで多いのは「金利上昇によって返済にどの程度の差が出るか自分で確認する」「借入金融機関へ返済計画見直しの相談をする」と回答した人でそれぞれ20.1%、19.9%。いきなり行動に移すのではなく、まずは対応を検討してみたり、専門家に相談したり、できることから始める人も一定数いるようです。
出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)住宅ローン利用者が本当に欲しいアドバイスナンバーワンは
人によってさまざまな考慮が必要な金利上昇時の住宅ローンへの対応。唯一の正解がないだけに結論が出せない人もいるのでは。そんな時に頼りになるのが外部の専門家です。
調査では住宅ローン利用者に「金融リテラシーセミナーへの参加希望の有無」と「金融機関やファイナンシャルアドバイザーからのアドバイス希望の有無」を質問。結果、いずれも住宅ローン返済の変更を検討する人のほうが希望者も多い結果に。
出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)専門家に対して具体的にどんなアドバイスが求められているのでしょうか。調査結果では「マネープラン全体」と回答した人が62.5%と最多。次いで「老後資金」が48.2%と続きます。住宅ローン単体で相談というよりは、金利上昇をきっかけに自分のライフプランを見直したいという人が多いようです。
また2024年1月から新NISAが開始したこともあって「NISA・iDeCoなど、貯蓄・投資に関する優遇制度」と回答した人が39.0%と3番目に多い結果となっています。
出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)調査概要
調査主体:三井住友信託銀行株式会社 三井住友トラスト・資産のミライ研究所
調査名:住まいと資産形成に関する意識と実態調査(2024年)
調査対象:全国の18歳~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
調査方法:WEBアンケート調査
調査時期:2024年1月
サンプルサイズ:10,948人
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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