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株式市場が暴落した時に確定拠出年金(DC)で「やってはいけないこと」

Finasee / 2024年8月30日 11時0分

株式市場が暴落した時に確定拠出年金(DC)で「やってはいけないこと」

Finasee(フィナシー)

2024年8月、株式市場が大きく動きました。

「史上最大、ブラックマンデーを超える下げ」などという見出しをみたら、確定拠出年金(DC)加入者や少額投資非課税制度(NISA)口座の利用者の方は、不安になるかもしれません。

株式市場が暴落した場合にやってはいけないこと

値段が上下動する運用商品を持っている場合、株式市場の暴落を目のあたりにすると、不安になることもあります。

8月初旬、野村證券確定拠出年金コールセンターにも「株価が暴落したから、投資信託を売ったほうがいいですか?」という問い合わせが入りました。

一般的には「下がった時には運用結果を見ずに放置」です。投資期間や投資金額、投資対象、ご自身の年齢によっても異なりますが、「何もしないこと」が第一です。運用結果を見てしまうと、不安が大きくなりますし、慌ててスイッチングをするとマイナスが確定することにつながりかねません。

こうしたときは、積立投資を続けていきます。積立投資は以下のような「ドルコスト平均法」という投資手法によって、価格変動リスクを小さくすることができます。定期的に定額で同じ銘柄に投資していく積立投資(ドルコスト平均法)では、値段が高い時には少ない量を、安い時には多くの量を購入します。仮に、下がった時に買わなければ、上がった時の利益が大きくなりにくいといえます。なお、以下この記事ではDCやNISAのつみたて投資枠での投資を考えます。

現状分析が大事

下がった時には、保有資産を慌てて売却するのではなく、現状の分析に取り組みましょう。具体的なケースにわけて対応例をみてみましょう。

【年齢が若く、投資期間も短い人】
積立投資を続けましょう。ただし、次の2点をもう一度、検討しておく必要があります。

①投資金額がご自身の収入や資産に対して適切かどうか

NISAや個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)への投資金額が大きくなりすぎていないか、生活費や緊急事態への備えのための資産が保全されているかどうかが判断ポイントです。

②ご自身のリスク許容度にあった運用商品かどうか

運用商品を選択する際はリスク(値段の上下動の幅)を考慮して選びます。リスクの大きい運用商品については若いうちは多めに保有しておくことが投資の一般的な考え方ですが、値下がりがどうしても気になってしまう場合は、バランス型投資信託の活用も検討してみましょう。バランス型は、株式だけではなく、債券も一定程度組み入れているため、株式だけの投資信託よりもリスクが抑制されています。

【投資期間が10年を超えている人】

基本は積立投資の継続ですが、運用見直しも検討します。

例えば、外国株式型インデックスファンド(※)を2013年1月から2024年7月まで、毎月1万円ずつ積立投資した場合、投資元本は139万円ですが、資産残高は360万円超になります。

急落した8月5日の株価を反映した基準価額で計算し直すと330万円程度に下がります。この“330万円程度”になったことをご自身がどう捉えるかによって、見直しの考え方は例えば以下のように異なります。

①60歳超など年代が上で、十分に投資成果を得ていると思える人

投資元本の倍以上の金額になっているので、全額を売却するのも一つの考え方です。

②今後も運用を続けたい人

運用収益分の200万円を売却して利益を確定する。DCの場合は、売却した金額を定期預金などの元本確保型に変更します。130万円分は元の投資信託に残っているので、運用は継続されます。この場合、200万円は変動しない資産なので、仮に投資している130万円がゼロになったとしても、200万円分の利益は確定されています。

※野村外国株式インデックスファンド MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)のデータを使用(購入は毎月25日で休業日の場合は後営業日)

過去を振り返ってみると

2024年8月初旬の株式市場の急落をデータで振り返りましょう。

【日経平均株価】
8月2日(金)…7月11日の史上最高値4万2224円から2216円(5.2%)下落

8月5日(月)…前営業日の8月2日からさらに下落。下落率は前週末比10%超、終値は4451円28銭(12.4%)安の3万1458円42銭。下げ幅だけをみると、米国株が大暴落した「ブラックマンデー」の翌日(1987年10月20日)を上回る史上最大

【NYダウ30種平均】…2024年7月の史上最高値から8月5日までの下落率は-6.1%

【ナスダック総合指数】…同7月の史上最高値から8月5日までの下落率は-13.1%

【S&P500種指数】…同7月の史上最高値から8月5日までの下落率は-8.5%

日経平均株価の下げ幅は、「1987年のブラックマンデーを超えた」と言われていますが、「下落率」で見ると、ブラックマンデーの14.9%に対して12.4%でした。そして翌日の6日は、前日とは打って変わり、一時3400円以上という過去最大の上昇幅を記録しました。

暴落の要因は、米国の経済統計から景気減速懸念が高まりつつあること、日銀が想定以上に早く利上げの時期を発表したことなどによる円高や、外国人投資家の売りなどといわれています。ドル円市場は、8月5日には141円台を記録して3営業日で12円もの円高となりました。

後から振り返れば、市場の動きには理由がありますが、渦中では冷静に捉えることができません。また、ニュースや報道は、金融市場の状況を相対的に語ったものに過ぎません。

ご自身の運用結果を判断するためには、平均取得単価を認識しておきましょう。平均取得単価は金融機関のWEBサイトや運用報告書で確認できます。

平均取得単価が時価単価を上回っていれば、運用結果はプラスと判断できます。時価単価のデータも取得できるため、平均取得単価が何カ月前のものと同じなのか、といった比較も可能です。

実際に売却を考えてみると、慌てても仕方がない

暴落を前にして慌てないほうがいい理由には、実は「慌てても仕方がない」という現実があります。

投資信託の売買は、株式のように即時の取引ができません。投信の値段である「基準価額」は、1日1回公表されますが、取引の値段が前もってはわかりません。つまり、いま見ている基準価額が安いから買いたい、と思っても、そのとおりの基準価額で買うことはできませんし、逆も同様です。

投資信託は、約定日の基準価額で注文が成立しますが、一般に、国内資産の場合は申込日が約定日、海外資産の場合は申込日の翌日が約定日です。

DC制度の場合は、より日数がかかります。例えば、外国株式型投資信託を売って、定期預金を購入するスイッチングを例に見てみます(※)。

〈外国株式型投資信託の売却〉
8月13日22時(申込)→8月14日(発注日)→8月15日(約定日)
〈定期預金の購入〉
8月20日(発注日)→8月21日(約定日)

発注から約定まで6営業日かかることになります。6営業日あると、予期せぬ高騰も想定されるため、購入の中止をする機能もあります。

次に、定期預金を売って、バランス型投資信託を購入するスイッチングの例ではどうでしょうか。

〈定期預金の売却〉
8月13日22時(申込)→8月14日(発注日)→8月15日(約定日)
〈バランス型投資信託の購入〉
8月16日(発注日)→8月19日(約定日)

このパターンでは必要な日数は4営業日に短縮されますが、それでも相当時間がかかっています。

※記録関連運営管理機関がJIS&Tの場合

NISAの利用者数は2024年3月末で2300万口座です。18歳以上の成人年齢人口は1億720万人(2022年10月)ですから、4人にひとりがNISA口座を保有していることになります。

DCの加入者・運用指図者を合わせた人数(企業型・個人型)は1211万人で、成人年齢人口の10人にひとりの割合です。

NISAもDCも長期・分散・積立投資が実践できる仕組みですが、長期投資の間には、市場の上げ下げが必ず発生します。NISAつみたて投資枠を始めて間もない投資家が、8月初旬の値動きを体験できたことは、長期投資における市場の上げ下げを早い段階で知ることができたという意味で、見方によっては幸運だったのかもしれません。

津田 弘美/野村證券株式会社 確定拠出年金部

社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。

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